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悪役令嬢の中身

修羅場中の悪役令嬢の中身は4歳です

作者: 茶トラ

ある日、目が覚めたら、お姉様になっていた。


とってもお月様が綺麗な夜。

大好きなお姉様と2人で庭をお散歩した後に。

お姉様のベッドに潜り込んで、ギュッとしてもらった。

そのまま、柔らかくていい匂いに包まれながら、眠ったけど。


何故か朝起きたら、お姉様と私の中身が入れ替わっていた。



「ごめんね、セレネ。ごめんね。こんな事になってしまってどうしましょう。」


オロオロしながら、必死に謝るお姉様。

でも、これはお姉様のせいじゃないと思うの。

きっと、精霊様のイタズラじゃないのかな?

よくわからないけど、多分、すぐに戻れると思うし。

だから。ね。


「おねえさま。セレネは、だいじょうぶ、です。だいすきな、おねえさまになれて、うれしいですよ。」


そう言って、小さい私になっている、お姉様に抱きついた。

なんか、変な感じ。

自分より小さいお姉様。可愛い。

外見は自分だけど、中身はお姉様だから、ギュッとすると、安心する。


そうやって、大好きなお姉様をギューギュー抱きしめてたら、侍女が呼びに来た。

お姉様に、お客様がきたらしい。


慌てて、お姉様が動いたけど、侍女に止められて、私に支度をするよう促された。

あぁ、そっか。今、私がお姉様だ。


「まって、セレネ!」


焦った声でお姉様が私を呼び止めるけど、大丈夫だよ。私、お姉様のマネうまくできると思うの。

だって、大好きなお姉様のこと、いつも見てるから。

だから、安心してね。お姉様。


※※※



「やぁ、朝早くから、すまないね。エアリス嬢。」


侍女に着替えを手伝ってもらい、お客様の元へと急いでみたら。

そこには、お姉様の婚約者様がいた。

いつも、私に柔らかく笑って遊んでくれるのに。

なんだか、今日はちょっと怖い顔。


「いえ、だいじょうぶ、です。」


「ちょっと、今度の卒業パーティーの件で、急いで話したいことがあってね。…ここでは、ちょっと。庭に出ても良いだろうか?」


婚約者様の視線が、私の後ろに流れたので、私も視線の先を辿ったら、そこには私の姿をしたお姉様がいた。

なんだろう?私に聞かせたくないお話なの?


私の返事を聞くまでもなく、婚約者様は私をエスコートして、そのまま我が家の庭へと進む。

色とりどりの花壇を眺めながら、昨日お姉様とお月見をした場所へとたどり着いた。


…お姉様は追っては、こなかった。



「おはなしとは、なんでしょう?」


「…君は、わかってるはずだと思ってるが。」


卒業パーティーは、君をエスコートしない。

そして、そのまま、婚約破棄したい。


そんな言葉を、怖い顔のまま、吐き捨てるように突きつけてきた。


……え?



何を言ってるの?


だって、だって、この人は、お姉様の大事な人で。

お姉様は、この人のことが、大好きで。

私にいっぱい、この人のことをお話してくれてるのに。

この人は何を言ってるんだろう?

お姉様はあんなに、卒業パーティーを楽しみにしてるのに。


「…なんで?なんで、そんなこと、いうの?」



ボロボロと溢れる涙。

あぁ、綺麗なお姉様は、こんな泣き方しないのに。

ごめんなさい。お姉様。

でも、涙の止め方わかんないよ。


「なんで、そんなひどいこと、いうの?」


婚約者様がギョッとした顔をしたけど、まだ怖い顔のまま。


「やだ、こわいかお、しないで。…すきなのに。」


お姉様、あなたのこと、好きなのに。


「…何を今更。冷たい態度しか見せなかったくせに。好きでもない男でも、ほかの女にいかれるのが惜しいのか?」


また、冷たい言葉を浴びせてくる。

なんで、また、そんなひどいこと。


お姉様は、とっても優しくて。

お姉様は、とっても綺麗で。

いつでも、私のことをギュッて抱きしめて安心させてくれて。


「おねがい、ギュッて、して。」



なんで、怒っているの?

なんで、優しくしてくれないの?


こわくて、悲しくて、不安で。

涙が止まらなくて。


怒ってるこの人をどうしていいのか、わからなくて。

泣き顔のまま。

ギュッてしがみついた。


「おこっちゃ、やだ。やさしく、して。ギュッてして。」



いつも、お姉様にしているみたいに、胸にぐりぐり顔を押し付けて、大泣きした。

お姉様のこと、怒っちゃやだ。

お姉様のこと、泣かせないで。

今は、私だから、大丈夫だけど。

…本当は、大丈夫じゃないけど。

お姉様の体にちゃんとお姉様が戻ったら。

また、同じことしないで。

ひどい言葉、突きつけないで。


お願い。

お姉様は、婚約者様のこと。

本当に。


「…すきなの。」



綺麗なお姉様の顔を、涙でぐちゃぐちゃにしたままだったけど。

お姉様の気持ちを知ってもらいたくて。

その言葉だけ、告げて。


泣きすぎて、疲れて。

お姉様の婚約者様にしがみついたまま。

寝た。



※※※



朝、目が覚めたら。

いつもの私に戻ってた。


お姉様が、ありがとうって。

いっぱい、いっぱい褒めてくれたから。


なんか、よくからないけど。

お姉様が笑ってるから。

私も、うれしい。


「おねえさま、いっぱいギュッてして。」





お姉様はツンデレ。

婚約者様は幼女に弱い。


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― 新着の感想 ―
[一言] いつも作品拝見しております。 お姉さまバージョンを拝見し、ひさしぶりにこちらを読み返したくて来てしまいました! いや、幼女万歳!妹ちゃんいい仕事した!そして、新作ではお姉さまGJと(笑) し…
[良い点] 4歳幼女の破壊力 [気になる点] 婚約者の心の変化! [一言] 楽しく拝読させて頂きました! 婚約者の視点どんなだったのでしょうか 中身4歳幼女と知らずキュンしてしまったに違いない、心の硬…
[一言]  婚約者・・・デロデロに甘やかしたいタイプか 頼られたいタイプなんでしょうね(^_^;) で、泣いて縋られたら落ちて・・・あとは溺愛?!(笑)
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