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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
番外編 (アフターストーリー/ほか)
82/85

アフターストーリー14 「食べる」  エピローグ「紡ぐ」

 人間には、「三大欲求」と呼ばれるものが存在します。即ち、食欲、睡眠欲、そして性欲の三つ。

 食欲と睡眠欲は、満たされている時には意外と気がつかないもので、中学とか高校ぐらいの時は、親のスネをかじって何不自由なく暮らしているものですから、その頃特有の思春期的なものも相まって、ついつい「性欲」ばっかりが目立ってしまうものですが、実はこの中で一番強い欲求は、やっぱり「食欲」では無いだろうか・・・と、私は思う訳であります。

 もっとも・・・・、この三つの欲求は、非常~に密接に絡んでおり、意外と独立して考えるのは、難しかったりするのですが・・・。


 ともあれ、今回は、そんな人間の「食欲」に対する飽くなき執着心を感じさせるエピソードをいくつか、お話ししたいと思います・・・。






 その一、「無制限にも限度がある話」


 その日、私達は思わぬ臨時収入を手にしまして、普段お世話になっている方に恩返しをしようと、ある御方をご招待し、ユリと大草を連れて、食事へ来ておりました。


 「へ~・・・。 キミがおごってくれるなんて、ちょっと気持ち悪いね?」


 「なっ、何言ってんすか、間宵さん! 普段お世話になってるから、たまには恩返しをと思っただけですって、やだなあ・・・。」


 「間宵さん、今回は大丈夫ですよ~。 ホントにお世話になってるからって言ってましたから。 あはは・・・。」


 「そっ、そう? ユリちゃんがそう言うなら、じゃ、遠慮無くご馳走になろうかな。」


 「俺って、そんなに信用無かったんすか・・・。」


 「まあ、お前の普段の行いだろうな、やっぱり。」


 「って、お前には一番言われたかねえよ! っていうか、お前は自腹だからな!」


 「なんだよ、このケチ!」



 そんな訳で、私達は普段お世話になっている間宵さんを招いて、いつも利用する焼き肉のチェーン店へとやってきたのでした。


 「いらっしゃいませ~」


 「あれ? すいません、お水、ひとつ多いですよ?」


 「あっ、あれ!? もっ、申し訳ありません!」


 「いえいえ~、あはは。」


 「ああ、それ、仕方ないのよ、ユリちゃん。 だってユキちゃんの・・・」


 「だああああ!!! 何だろうな! 勘違いしちゃったんだ、きっと!!!! そっそうだ! 大草がデカイから、二人分持ってきたくなっちゃったんだよ、きっと!!! 」


 「えっ!? そうなのか!? って、水ばっかりそんなにいらねえぞ。」


 「あっ、そか・・・。 ごめん、ユキちゃん・・・(コソコソ)」


 ちなみに、この不思議な現象は最近こそありませんが、ある時期より結構頻繁に起こるのでした・・・。


 「まっ、まあ、それはさておき! さあさあ、遠慮しないでドンドン食って下さいよ!」


 「そっ、そう? それじゃ、遠慮無く、思いっきり食べちゃおうかな~! あっ、ユキちゃんもビール呑むでしょ?」


 「いやいや~、何言ってんすか、間宵さん! ここに来たらビールなんて呑むのは素人っすよ~! あっ、勿論、間宵さんはドンドン呑んで下さいよ! 」


 「素人って、何それ!? ユキちゃんがビール呑まないなんて、気持ち悪いね・・・。」


 「間宵さん・・・、その理由は直ぐに分かりますよ・・・。」


 「そっそうなの?」


 そう言うと、間宵さんは私の方をジッと見つめ・・・。


 「・・・・。 ふ~ん、今回は内緒なんだ・・・。全然分からない~。」


 「あの・・・、間宵さん。第三者の力で何か聞きだそうとかしてません? まっまあ、とにかく、盛大に行きましょう、盛大に!!! 」


 ― それから二十分程のちの事・・・。


 「・・・・。」


 「・・・・。」


 「あっ、お姉さん! ご飯お代わりね!」


 「あっ、こっちも!」


 「・・・・。 ねっねえ、ユリちゃん・・・。 この子達、いつもこうなの?・・・。」


 「そうなんです・・・。 今日は間宵さんが一緒だから、まだ良いですよ・・・。 私一人だと、恥ずかしくて・・・。」


 「聞こえてるぞ、ユリ! 何が恥ずかしいんだよ~! ちゃんと書いてあるだろ? 「ごはん、おかわり無料」って! 」


 「いくら無料って言っても、キミ、それで七杯目だよ?・・・。 ものには限度ってものが・・・。」


 「あっ、お姉ちゃん、もういっぱいね!」


 「おおっ!? やるな大草! こっちも、もういっぱい!」


 「・・・。 あっ、あっ~! ごっ、ごめ~ん! 私、用事思い出しちゃった! 今日はこれでかえ・・・」


 そう言いながら、慌てて立ち上がる間宵さんの腕を、白い細指がその見た目では考えられないような力でガシッとつかみ・・・。


 「間宵さん・・・、私一人にしないで下さい・・・。」


 「うっ・・・。 やっぱり、来るんじゃなかった・・・。」



 ちなみに、この私達の大食いが原因だったのか分かりませんが、この三ヶ月後、焼き肉屋はひっそりと閉店してしまいました・・・・。





二、「度が過ぎる霜降りの話」


 それは、私が間宵さんと出会い、その不思議な力で・・・中略・・・とにかく気分が晴れ晴れとした直後ぐらいの事・・・。 まだユリちゃんと出会う前の事でした。


 「お前、その臨時収入どうすんだ?」


 「う~ん、俺だけじゃなくて、お前の協力もでかかったからなあ・・・。 つっても、分ける程でもねえし、二人で飯でも食うってので、どうよ?」


 「独り占めしたら、殴ろうと思ってたんだ。 よし、食いに行こう!」


 「サラッと恐ろしい事言うな・・・。 これっぱかりの金で殴られてたまるか!」


 そんな訳で、私達は臨時収入でご馳走を食おうとなった訳ですが、外に食いに行くのもマンネリなので、たまには部屋でご馳走を作ろうという事になり、近くの高級食材を扱うスーパーまで、大草の車で移動しました。


 「外で食ったら、そんなに豪華には出来ないからなあ・・・。 それなら、良い材料をここで買って、豪勢にやるべ。」


 「そうだな。 俺、料理出来ねえから、お前に任せる。」


 「俺も作るの面倒なんだけどな・・・。 それにしても、ここの食料品売場は、相変わらず高くて豪華だなあ・・・。」


 「ホントだな・・・。滅多に来ねえけど・・・っていうか、これじゃ来れねえよ。」


 「まあな・・・。 ん? おおっ! 良い事思いついた! 大草、これどうだ!? 」


 「おおっ!!! すげえ大トロのサクだな!!! って、凄げえ高けえじゃねえか!!! この刺身ひとつで終わりじゃ、寂しすぎるだろ、いくら何でも・・・。」


 「いやいやいや大草くん! ダラダラと安いもの色々食うよりもよ、こんな凄い大トロ食った方が良いだろうよ! 」


 「つっても、これじゃ腹一杯にならねえぞ・・・。」


 「そこはちゃんと考えてあんだよ! この大トロで「鉄火丼」作るってどうよ!? 」


 「なんだその鉄火丼!!! 聞いた事ねえぞ、そんな罰当たりな食い物!!!!」


 「食いたいだろ~!? 」


 「くっ食いたい!!!」


 「よっしゃ! これで行くべ!!! 」


 そんな訳で、私達は臨時収入をほとんど使って、この見た事の無い様な豪華な大トロと、生のワサビを一本購入して、家路につくのでした。


 早速家に帰った私達は、まず大トロを切り分けたものを醤油につけ、三十分ほど「ヅケ」にしました。


 「おっ、おい! 見てみろよ!!! ヅケにしただけで、醤油に脂がこんなに溶け出して来たぞ!!! 」


 「おおっ!!! ホントだ!!! この醤油だけで、飯が何杯も食えるな!!!」


 「今回は贅沢に、この醤油をタレとして飯にかけよう!」


 「やべえ、頭がクラクラしてきた・・・。 早く食うべよ!!!」


 「あわてんなって! そら、出来たぞ!!!」


 そして、その「味の宝石箱」とも言える鉄火丼を、心ゆくまで頬ばるのでした・・・。


 「うっ美味すぎる!・・・。 刺身が多いから、二段にして正解だったな・・・。 中の大トロは、ご飯の熱で更に脂が溶け出して、舌に乗せたら無くなるな!」


 「ああ、俺こんなの食った事ねえよ・・・。 お前最高だよ! ナイス判断だよ! もう俺、死んでも良いわ・・・。」


 「大袈裟だな・・・。 いや、しかし美味いなあ。無くなるのが悲しいぐらいだ・・・。」


 結局、私達はその余韻に浸りつつも、ついに一杯の「大トロ鉄火丼」に、身も心も満たされるのでした・・・。



 そして、その夜中の事・・・・。


 「うっ・・・。 うっっぷ・・・・。 ううっ・・・・。 だっ駄目だ・・・、気持ち悪りい・・・。 うゲロゲロゲロゲロゲロロロロ~っ!・・・・。」


 そう、実はこの大トロ鉄火丼には大きな落とし穴があったのでした・・・。

 なまじ見た事がないほど立派な大トロの脂は、一切れ中にも相当な量が含まれており・・・、それを大量に摂取したために、見事に胸焼けをおこし、夜中に吐きまくってしまうのでした・・・。

 しかも、これは私だけではなく、一緒に食った大草も同様で、翌日の私達は、大トロ酔いにより、二日酔いの様なヨレヨレの状態での出社でした・・・。


 「大トロは、一切れだから美味い・・・。」


 私はこの事を、身をもって知る事になるのでした・・・。






三、「故郷のきりたんぽの話」


 その日、私達はいつものメンバーで、いつもの様に呑み会を開いていたのですが、今回は、ちょっと一風変わった居酒屋に来ておりました。


 「へ~、色んな土地の郷土料理が食べられるんだ~。 面白いね。」


 「そんじゃ、取り合えず色々適当に頼んでみるか。 すいませ~ん!」


 「あ~っ! あたし、きりたんぽ食べたい! 食べた事無いんだよね~!」


 「きりたんぽ・・・。」


 「どうした? ユリ。 ああ、そういや、お前は秋田の出だからな。 きりたんぽ、懐かしいだろ?」


 「うん、懐かしい・・・。 こっちに来てから、一回も食べてないもん。」


 そんな訳で、テーブルの上には、北は北海道から南は沖縄までの、様々な郷土料理が並んだ訳ですが・・・。


 「へ~、きりたんぽって、面白い食感だね~。 私も初めて食べたよ。」


 「間宵さんもっすか? 実は俺も初めてなんすよ。 餅でも無いし、なんだろ? おはぎの中身に近い感じっすかね? どうだ、ユリ、懐かしいだろ? 」


 「・・・。」


 「ん? どうした? 」


 「こんなの、本物のぎりたんぼじゃねぇ!」


 「えっ?・・・。 ゆっ、ユリさん!?」


 「ごんなんで、本物のぎりたんぼなんて、思われだくねぇ! 私が今度、本物のぎりたんぼさ、作るがら!」


 と、秋田訛り全開になってしまったユリさんは、どうやらこの居酒屋の「きりたんぽモドキ」にご立腹の様でして・・・。

 ついには、自家製のきりたんぽ鍋を! という話になるのでした・・・。


 『しかし、大丈夫かいな、ユリさん・・・。 お前さん、料理が凄く苦手じゃないのかい?』




 それから数日後・・・。


 「じゃあ、今日はみんなに作るきりたんぽ鍋の予行練習ね!」


 「そうだね・・・。絶対に一回は作っておいた方が良いよ・・・。」


 「ムッ! とにかく、驚かないでよ! 私だって秋田出身なんだからね!」


 「・・・。 (あれだよ、別に秋田出身だから料理が上手い訳でも無いんだよ? ユリちゃん、気が付いてるかなー、そこ。)


 結局、例の一件で意地になったユリさんは、どうやら実家に電話してレシピを聞いたようで、見るからに慣れない手つきで、せっせと「きりたんぽ鍋」を作っていくのでした・・・。


 それから二時間後・・・。


 「さあ、出来たよ~!」


 「おお~っ、どれどれ・・・。 あ・・・れ?・・・。」


 「さあ、どんどん食べてね! 鶏ガラ風味のおじや!」


 「おっ、おじやって、ズコーーーッ! 」


 「えへっ、失敗しちゃった~。 えへへ~。」


 結局、私達はユリさん作の、なんだか得体の知れない「おじや」らしき物体を、一日半ほどかけて、必死の思いで始末するのでした・・・。


 「うん、ユリさん。 今度お料理を試す時は、少量で作ってみようか。」


 ちなみに、この気合が空回りした「ユリさん特製きりたんぽ鍋」は、このしばらく後、いくつもの鶏ガラ風おじやを乗り越えて、完成されたのでした・・・。

 もちろん、その頃には、もう「きりたんぽ」の名前を聞いただけで吐き気をもよおした事は、言うまでもありません・・・。




エピローグ 「紡ぐ」


 その日、私はクリスマスをユキヒコさんと過ごしていた。

 だからと言って、二人の仲に進展があった訳では無いところが辛いのだけど・・・、少なくても、クリスマスに二人でケーキを食べるぐらいの親密?な関係にはなったんだろう。


 そして、そのクリスマスのご馳走とケーキを食べながら聞いていたのが、ユキヒコさんの昔のお話だった。


 「まあ、私が話せる間宵さんの話は、これぐらいですかねえ。 彼女は本当に面白い人でしたよ。私が出会った人間の中でも、非常に特殊な方でしたからね。

 ははは、今思い出しても、少し笑ってしまいます。異性とかそう言うのは関係なく、実に魅力的な人間でした。」


 「お話を聞いていても分かりますよ。なんだか、私も会ってみたくなりました。」


 「ははは、そうですね。残念ながら、彼女とは私がその会社を退社してその土地を離れてしまってからは付き合いが途絶えてしまいましたが、まあ彼女なら、いつでもどこでも、変わらずに元気に暮らしているんでしょうね。」


 そう言いながら、とても楽しそうに語る彼を見ていると、この間宵さんという人の思い出は、余程楽しい思い出なんだろうと良く分かる。

 ただ、同時に気になることもある・・・。


 「あの・・・。聞いていいのか迷いますけど、気になっちゃったので、お聞きしても良いですか?」


 「え? なんでしょう?」


 「その・・・。当時お付き合いされていたユリさんとは、その後どうなったのでしょう?」


 「ああ・・・、そうですね・・・。 彼女とは、その後に別れてしまいました。私の責任なのですけどね。 あれは、私が退職して寮を出る時の事ですが・・・。」







 「ごめん、ユキ。私はやっぱり一緒には行けない。このまま実家に帰ろうと思う。」


 「えっ? どうしてまた急に・・・。」


 「ずっと気になってたんだ。 私はきっと、ユキの中では二番目の存在なんでしょ?」


 「えっ・・・。 それはどういう意味だ?」


 「私も確証があるわけじゃないの・・・。 ただ、ユキには誰かもう一人いる気がする・・・。いるのか・・・いたのか・・・。

 それがずっと引っかかってた・・・。真剣に考えたよ? でも、一生を共に生きるのに、この引っかかりを持ったままはいられない。

 ごめん、やっぱり私には無理・・・。」


 「そうか・・・。 それがユリの出した結論なら、仕方ない・・・。」


 「やっぱり・・・、否定はしないんだね・・・。」





 「本当は彼女も私と一緒に新しい土地で新生活を始めることを決めていたのですが、最後の最後まで、悩ませてしまったんでしょうね・・・。彼女を悩ませたのは、私に原因があったのでしょう。

 彼女とは、それっきりになってしまいましたね・・・。」


 やっぱり・・・、そうだったのか。

 少なくても話を聞いてる雰囲気では、二人は一緒になってもおかしくないとも感じられた。ただ、やっぱりどこか歪な感じを受けるのだ。

 私もユキヒコさんの話・・・、というより、その間宵さんの話した内容を全部信じられるかというと、やはり無理な部分はたくさんある。

 ただ、それを差し引いても、叔母のエリちゃんを常に意識している彼が、まともな恋愛なんて出来るわけがない。

 きっと、ユリさんも日々一緒に暮らす中で、それを強く感じていた事だろう・・・。その心情をおもんばかると、とても胸が痛い・・・。


 やっぱり、これもエリちゃんの呪いだろうね・・・。


 「ああ、すいません、余計な話をして雰囲気を暗くしてしまいましたね。」


 「いっ、いえ、そんな事! そもそも、私が聞いた事ですし!」


 失敗した。余計な気を使わせてしまった。


 「もう一杯、シャンパンは如何ですか?」


 「いただきます・・・。」


 彼は私の返事を聞くと、グラスにシャンパンを注ぎながら、話を続けてくれた。


 「結局、私はどこか欠陥のある人間なんじゃないかと、ずっと思ってきました。

 その後も何度か、お付き合いもしましたが、結局、最後は皆さんに捨てられましてね。ははは。ご覧の通り、未だにひとり身ですよ。まあ、この年までそうだと、それも気楽で良いものですけどね。ははは。」


 どこか吹っ切れたように、楽しそうに語る彼の様子は、ちょっと達観したような雰囲気がある。

 あるいは、望んでそうなったんじゃないかと。


 いやいや、ダメでしょう!

 それじゃ、私が困るのよ!


 「あの・・・。私はどこにも行きませんよ。私は居ます、ずっと。」


 何言ってんの、私! シャンパンのせい!?


 「え? それは・・・。」


 「私は・・・。 私は、これからもユキヒコさんのお友達でいさせてください。こんな小娘が失礼ですけど。」


 うまく誤魔化せましたよ。こんな所で気まずくなってる場合じゃない。

 私には、やらなくてはいけない事があるのだから。


 「ええ、こちらこそ、お願いします。」


 そう、優しい笑顔で答えてくれた彼に、私はそっと胸をなでおろす。


 「どうやら、私はあなたという特別な話し相手を得て、失いたくないばかりに、卑怯なことをしているのかもしれませんね・・・。」


 彼のつぶやきに、思わず驚いてしまった私の顔を見て、慌てて何でもないと謝る。

 そんな彼を見て、私は少しだけ、救われた気持ちになった。


 そう、今はこれで良い。この気持ちは、そんなに軽いものじゃない。

 全部を解った上で・・・、エリちゃんの事も彼の事も受け止めた上で・・・、私は、あなたの呪いを解く。すべてはそこから・・・。


 エリちゃんが彼にかけた呪いの時間だけ、私も同じ時間をかけよう。

 エリちゃんの魂と想いは、私が紡ごう。それすらも、きっと幸せに違いない。


 そう、私は生きてるのだから。

 苦しみも悲しみも、生を感じる幸せの一部なのだから。

 だから、私はもう間違えない。

 私がかけた、あなたの呪いは、私が解く。

 約束のためにも、私が自ら解くわ。

 そのために、私はここに居るのだから。


 気のせいか、私の心の奥底で、誰かがそう呟いた気がした・・・。

 そう、私はそのためにここに居るのだから。



 アフターストーリー おわり


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