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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
番外編 (アフターストーリー/ほか)
75/85

アフターストーリー07 「生える」

 それは、ある日の事・・・。

 私達いつものメンバーが、いつもの居酒屋で呑んでいると・・・。


 「ねえねえ、渡辺くん・・・。 今日さ、間宵さんと一緒に帰るんだけど・・・。 送ってくれないかな?・・・。」


 「え? そりゃ構わないですけど、送るっても、俺足が無いですし、呑んでますから、駅まで一緒に帰るぐらいっすけど・・・、良いですか?」


 「うんうん! 充分充分! 駅からはたくさん人が居るから!」


 「どうしたんすか、急に。 珍しいっすね?」


 「いっ、いや別に・・・。 ただ、夜道を間宵さんと二人っきりで帰るのが、なんとなく・・・。」


 「はあ・・・。 なんかあったんすか? まさか間宵さんと?」


 こう私に願い出て来たのは、間宵さんと同じ会社の後輩で、関本さんという女性でした。普段から間宵さんと仲が良いと聞いており、また実際にもその様に見えましたので、この願いには、若干いぶかしく思っておりました。


 「ええ!? いえ、そういうんじゃ無いのよ! なんて言うか、ほら!もう真っ暗でしょ!?」


 「ああ、なるほど。 まあ確かに、夜道に女性だけじゃ、何かと不安ですもんね。」


 「そっ、そうそう! うん、そうなのよ!」


 「なにが!?」


 「きゃっ!」


 「ああ、間宵さん。 いや、いま関本さんから、今日は駅まで間宵さんと自分を送って欲しいって頼まれたんすよ。」


 「へ~? そうなの? どうしたの、関本。 珍しいじゃん。」


 「えっ!? いや~・・・。 だって、また何かあったら・・・。」


 「なによ~? ハッキリ言いなさいよ。」


 「だって~! また間宵さんと一緒に帰って変なもの見たら、私、今度こそ耐えられないですよ~!」


 そう涙目になりながら、関本さんは必死に、間宵さんに訴えるのでした・・・。


 『あー、何かあったな、こりゃ・・・。』


 「ああっ! この間のアレ!? まだ気にしてんの~!? あははは! あんた、可愛いねえ!」


 間宵さんは、関本さんをそう言って笑い飛ばした後、その「この間のアレ」とやらを話してくれました・・・。


      ・

      ・

      ・


 その日、間宵さんと関本さんは、共に残業を抱え、帰りがかなり遅くなったそうです。


 「う~ん、関本、そっちどう?」


 「ようやく終わりました~・・・。 もうお腹空いた~・・・。」


 「こっちも終わったから、帰りに腹ごしらえでもしようか?」


 「賛成です~・・・。」


 そう言いながら、二人は和気藹々と、会社を出て食事に出向き、適当なファミレスで空腹を満たしたのだとか。

 そして、そこはそれ、所謂話し好きな女性の事ですから、食後もファミレスを喫茶店代わりに、結構な時間まで長話を続けた様で・・・。


 「あっ! いっけない! 調子に乗って喋り過ぎたよ! そろそろ帰らないと!」


 「ホントだ! 駄目ですね~、私達も。 あははは!」


 そんな訳で、急いでいた事もあり、二人はファミレスから駅までの道を、いつも通る大通りを避け、近道出来る脇道を黙々と歩いていたのだとか。

 そして、その時・・・。


 「あっ・・・。」


 「へっ? どうしたんです? 間宵さん。」


 「ん・・・。 アレ、見える?」


 「えっ? えっ? どれです!?」


 「ほら、あそこのお家の庭。 垣根の隙間から、庭石が見えるでしょ?」


 「ああ、はいはい。 見えます見えます。 ・・・。えっ!・・・。」


 その時、関本さんの心臓は凍り付いたのだとか・・・。


 「まっ、間宵さん・・・。 あのお婆さん、何やってるんですかね? こんな時間に・・・。 庭石の後ろに隠れて・・・、気のせいか、こっち見て・・・睨んでます!?」


 「あの人、この世の人じゃないねー。 つい最近亡くなったみたい。この家の人なんだって。」


 「・・・。 えっ?」


 「良く見てみなよ。 ほら、顔の半分。 崩れてるでしょ?」


 「・・・。 えっ!? ええ~~!!!!!!!!」


 それを見た関本さんは、その場で卒倒しそうになるのを、何とか間宵さんに支えられ・・・。 駅に着くまで、恐怖で泣き続けたそうで・・・。

 その上、後にコッソリ伺った間宵さんの話では、オシッコまでちびっちゃったのだとか・・・。


       ・

       ・

       ・


 「もう絶対嫌ですよ~! あの時だって、間宵さんが何も言わなければ、私、気がつかなかったのに~!!! うわあああん!!!」


 そう言いながら、関本さんはその時の恐怖を思い出したのか・・・、しくしくと泣き出してしまうのでした・・・。


 「あはは! ゴメンゴメン! だって、アレが見えるなんて珍しい事でしょ~。 関本が見えるの分かったから、ついつい教えたくてさ~! ゴメンよ~。 よしよし!」


 「・・・。(関本さん・・・、哀れな・・・。 鬼だな、間宵さん・・・。)」


 しかし、間宵さんの鬼っぷりは、これだけでは済まなかったのです・・・。


 「でもさ~。 ホントはあの時、関本があんまり怖がるから内緒にしてた事があるんだよね~。」


 「なっなんですかそれ! 何か私の身にあるんですか!?」


 「違う違う、そんな事じゃないから安心して。」


 「もうっ!」


 「あはは、ごめんごめん! 実はあの時さ。 あのお婆さんね、ホントは庭石の後ろに隠れてたんじゃ無いのよ。」


 「えっ?・・・・。」


 「アレね。 ホントは、庭石から『生えてた』の。 お婆さんの、首から上だけ・・・・。」


 「!!!!!! もう嫌だ~!!! うええええぇぇん!!!」


 そう言って、更に泣き出す関本さんを、間宵さんは、からかう様にケラケラと笑い出すのでした・・・。


 『こわっ!!!!!  っていうか、間宵さんが一番こわっ!!!!!』

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