表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
番外編 (アフターストーリー/ほか)
74/85

アフターストーリー06 「ドン引く」

 例のキーホルダーだらけの運動会を終えると、季節はすっかり冬を迎え、若者達の一大イベントである、クリスマスが間近に迫るのでした。


 そんな頃、私はちょっとした会社への貢献が表彰され、暮れも近い時期に、思わぬ臨時収入を「金一封」という形で手に入れます。


 「おっしゃ!!! 三万も入ってんぞ!!!」


 「すっげえ!!! 俺らにもちょっと還元しろよ!!!」


 「バッカお前! ちょっとなんてケチ臭せえ事言ってんなよ!!! これで今度のクリスマスはパーッとやんぞ!!! 大草、当日は車出せや!!! 鶏買いに行くぞ!!!」


 「とっ鶏!?」


 「クリスマスって言ったら、鶏に決まってんだろ! チキンだよ、チキン! このチキン野郎!!!」


 「なんだか良くわからねえし、ムカツクけど、分かった!!! よっ!大蔵大臣!!!」


 「よっしゃ! みんなにも言っておけよ!!! クリスマス・イブは、俺の部屋でチキン・パーティーだってよ!!!」



 そんな具合に、思わぬ臨時収入に浮かれに浮かれていた私でしたが。

 クリスマスという時期が、どういう大事な時間かと言うことを、しばらく一人で過ごしていた私は、すっかりと忘れていたのでした・・・。

 そして、その夜の事・・・。


 「いや~・・・。その場の勢いって、怖いよな~!」


 「何が?」


 「いや、それがね、ユリちゃん。今度のイブなんですけどね・・・。」


 「えっ? 何処か連れてってくれるの!?」


 「ええ、その~・・・。 まあ、盛大にやる事が決まりまして・・・。」


 「凄い! どこでどこで!? ねえユキ、もしかしてお泊まり!?」


 「いや・・・、その・・・。 ここで・・・(ボソボソ)」


 「え?・・・。 ああ、でも良いよ~、別に! それでも嬉しいよ!」


 「そっそうか!? だっだよな~! やっぱりパーティーは大勢の方が楽しいよな!」


 「え?・・・。 大勢って・・・。」


 「いや、だからみんなで賑やかに・・・・。」


 「ええ~!!!! なんで!? どうしてそうなるの!!?? イブなんだよ!!!」


 「いえ・・・、まあ・・・その・・・。 なんか、勢いと言いますか・・・。」


 「知らない!!! ユキのバカ!!!」


 「でっ、ですよねー。(ホント・・・俺のバカ・・・・。)」


 そんなわけで、私は当時の彼女のユリさんから多いに怒られ、しばらく口もきいてもらえないのでした・・・。




 そんなこんなで時は過ぎ、イブ当日・・・。


 「ちっくしょう・・・。 ここも売り切れだとよ!」


 「う~ん・・・。 やっぱり予約無しでチキンを買うのは無謀だったか・・・。 仕方ねえ・・・。白い爺さんの店はあきらめて、別の所で買うか。」


 「まあ、何でも良いと思うけどな。 腹一杯食えれば。」


 「そういや、ハンバーガー屋でもフライドチキンが出たよな? アレにするべ。」


 という具合に、フライドチキン専門店で購入出来なかった私たちは、某ハンバーガーショップで出しているチキンを思い出し、何とか苦労するもチキンを購入。

 ちなみに、この時の買い物は、チキンが五十ピース、それと特大クリスマスケーキ、その他、ワインやらお菓子、ジュースなどで、しめて三万円也・・・という具合に、大入りは全て、今回のパーティーでぶっ飛んでしまうのでした・・・。


 「悪いね~、私達までお呼ばれしちゃって~!」


 「いや~、いつもお世話になってますから~。(っていうか、間宵さん・・・。 アッサリ来た所を見ると、まだ彼氏出来ねえのか。可哀想に・・・。)」


 「そうそう、間宵さん、今日はお願いしますよ・・・。 楽しい夜なんで、幽霊がいるとか、そう言うのは無しで!」


 「あはは。 分かってるよ、私だって。 あれ~? ところで、ユリちゃんどうしたの!?」


 「あ、いや・・・それがその・・・。 まあ、色々ありまして・・・。」


 「ふ~ん・・・。 ・・・・。 なるほどね・・・。 ユキちゃん、バカだねえ・・・。」


 「え!? あ、いや・・・。 面目ないっす・・・。 まっまあ、とりあえず、今日はパーッといきましょう! 酒とチキンは腐る程あるっすから!!!」


 その場で誰からどの様にして聞いたのか、私が一言も告げずに、間宵さんは全て察してしまうのでした・・・。



 そんな訳で、いろいろと問題はあったのですが、そういうのは全部棚上げして、私達はワインと鶏肉を頬ばりながら、イブを楽しむのでした。

 しかし、しばらく経ってからふと気がつくと・・・。


 「あれ? 間宵さんは?」


 「そう言えば、いねえな、いつの間にか?」


 などと話しておりますと、コンコンとガラスを叩く音がしまして、「あれ? また飛び入りかな?」などと考えながら、普段、通用口になっている大窓を開けますと、そこに立っていたのは、ニコニコと微笑む間宵さんでした。


 「あっあれ? 間宵さん、どこ行ってたんですか!」


 「そんなこといいから! ほら、ユキちゃん、ちょっとこっち来なさいよ。」


 「はっはあ・・・。」


 「はい、お姉さんからの、クリスマスプレゼント!」


 そう言うと、間宵さんは暗闇から一人の女の子を私の前に挿しだし・・・。


 「あっ・・・ユリ!」


 そこには気まずそうにうつむくユリの姿がありました。

 どうやら間宵さんは、私たちを仲直りさせるべく、わざわざユリを寮までなだめに行ってくれたようです。


 「何か言う事は?」


 「いっいや・・・、ホントごめん! この埋め合わせは、次の休みに必ずするから!」


 「だって。 ユリちゃんも、もう許してあげな。」


 「はい・・・。」


 「ホントすまん! とりあえず、ここは寒いから、二人とも中入って、食って飲んで! ほらユリ、今日は大草の彼女も来てるからさ!」


 「ほら、いこ! ユリちゃん!」


 「あの・・・。 ホントありがとうございます、間宵さん・・・。(コソコソ)」


 「気に入ってくれた? プレゼント。」


 「そっそりゃあもう・・・。」


 「あはは!」


 間宵さんの気遣いにより、私の大チョンボは、何とか大怪我にならずに済み・・・。

 宴は深夜まで楽しく続くのでした。


 そして、みんなの腹も満足した頃の事・・・。

 食い尽くされたチキンの骨を眺めていた間宵さんが、突然・・・。


 「へえ~・・・。」


 「どうしたんすか?」


 「見て見て、このチキンの骨。 ほら、みんな同じ形でしょ?」


 「ホントだ。 そう言えば、これって食いやすいっすよね。 骨が極端に少ないし。」


 「そうね~・・・。 でもさ~、これだけの量のチキンだとさ、何羽の鶏が犠牲になってるのかね? 残酷で罪深いね~、私達って。 あははは!」


 「・・・・。(えーっ・・・。)」


 楽しそうに笑う間宵さんの言葉を聞いた私達は、逆に楽しかった空気を一気に凍り付かせ・・・・。すこし吐き気にも似た重たい空気を漂わせるのでした・・・。


 『なぜ・・・・、この人は!・・・・。 こりゃ、来年も男は無理だ。絶対無理だ!・・・』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ