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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
番外編 (アフターストーリー/ほか)
69/85

アフターストーリー01 「出会う」

※ 本編は完結しておりますが、もう少しだけ、駄文にお付き合いいただければ幸いです。

 また、アフターストーリー終了後は、本編で掲載しなかったお話を数話掲載予定です。

 お墓参りの後、正直ユキヒコさんのお宅へお邪魔する理由を失ってしまったのだけど、こんなことで引き下がっては女が廃る。

 というわけで、私は特に理由もなく、ユキヒコさんのお宅へ上がり込んでいるわけなんだけど・・・。


 「いえ、私の方は構いませんよ。ひとり身で孤独な中年の私としては、あなたみたいな綺麗で若い女性が話し相手になってくれる事は、うれしい限りですよ。 ははは。」


 嘘つけ。

 どうせ私の事なんて、子供ぐらいにしか見てないくせに。


 「あはは、そう言っていただけると。 じっ実は、まだ気になっていることもあるんですよ。」


 「ほう、何でしょう? 彼女に関しては、もうすでに粗方お話したと思うのですが・・・。」


 さて、どうしよう・・・。

 気になってる事はあるのだけど、それは聞くような事じゃない。

 なんかないかしら・・・。

 あっ、そうだ!


 「あの、ユキヒコさんが社会に出てからのお話を聞かせてもらえませんか!?」


 「えっ!? いやっ、そんな話を聞いても仕方ないと思うんですけど・・・。」


 「いっいや、そんなことないですよ! やっぱり、気になります、私!」


 「えっ・・・と、そうですか・・・。 いや、はい・・・。それじゃあ・・・。

 ああ、そうだ! そういえば、昔の話ですが、私が出会った不思議な女性の話でもしましょうか。」


 は?女性?

 なんだこれ、嫌な予感しかしないぞ。

 まあ、私はどちらかというと、昔の女とか気にしないタイプだけどね。


 「不思議なですか? それじゃあ、ぜひ!」


 「ちょっとオカルト的な話ですけどね。 まあ信じる信じないは、サヤカさんにお任せしますよ、ははは。」


 あれ、なんだこれ。思ったよりも面白そうだぞ!?


 「それでは早速。 あれはそうですね、私が初めて務めた会社での事なのですが・・・。」


 

 その昔、私がとある会社に勤めていた時の話です。

 その会社は、私が社会に出て初めて勤めた会社でして、所謂サービス業を生業としておりました。


 何故、私がこの会社を選んだかと申しますと、私は中学時代のある体験が原因で、人とは少し違う生き方を選んでみたいという欲求が強くなりました。それはいわば、私の中に発生した「短い人生しか送れなかった人の代わりに、有意義な人生を送るため」の義務感の様なものであり・・・。その願いを叶えるため、私は少し特殊な、この会社に入る事を希望した訳です。

 もう一つの理由は、その「中学時代のある体験」から、とにかく逃れたいという思いに駆られていました。そのため、一刻も早く地元を離れるべく、地元とはまったく違うこの土地で新しいスタートを切ろうという、強い思いがありました。。


 以上の様な理由から、私はこの会社を選び、また大変良い諸先輩方や上司に恵まれ、充実した時を過ごし・・・・、いつしか、私の中の荒んだ心も、平常心を少しずつ取り戻していきました。


 そんな、ある日の事・・・。


 「渡辺~。 そろそろ会社にも慣れてきた頃だろ? お前も遊びの一つもやらねえとな。」


 そう私に話しかけて来たのは、私と同じ寮の向かいの部屋に住む、先輩の「佐藤さん」でした。

 この会社は、男女共に従業員がほとんどが寮住まいとなっており、寮は古い順に第一寮から第四寮まであり、それぞれが男子、女子、家族寮と目的別に独立して建っていました。

 ただ、寮によって格差があり、一番古い寮は男子寮の第一で、最も新しい寮は女子の第四だったのですが、私の住んでいた第三寮も室内は大変綺麗で立派なものでした。

 対して、同じ独身男子寮でも一番古い第一は年数も結構経っており、第三がすべてフローリングでオシャレだったのに対し、第一は畳部屋で、しかも結構傷んでいましたので、順番通りの入居とはいえ「あんまりである」との声が、いつも何処からか響いておりました。


 「遊びっすか・・・。 遊びっても、この田舎じゃあ、パチンコぐらいしかやる事が無いんじゃないですかね~?」


 実際の話、この職場は山の中にありまして、山を下りたとしても特に遊び場などは周辺になく・・・。 一番近い最寄りの駅まで六キロ離れており、唯一のコンビニも、その駅まで行かなければない状態でした。 ちなみに、スーパーなんてものは、原チャリを飛ばしても二十分掛かる程遠く・・・・。 とにかく、物凄い不便な所なのでした・・・。


 「バッカ! 遊びっていやあ、女に決まってんじゃねえか! どうせ渡辺、今彼女いねえんだろ? そう言う時こそ遊ばねえとさあ。」


 「はあ・・・。 女ですか・・・。 いや、俺、実は女の子が苦手で・・・。」


 「ええっ! そうなの!? だってお前、会社の女の子と普通に話してんじゃんか?」


 「いや、そう言うのは平気なんですけど・・・。 どうも、恋愛対象として見たりする事とか、遊んだりっていうのは、ちょっと・・・。」


 「へえ~・・・。 そんなヤツも居るんだ・・・。 変なヤツだなあ・・・。 まさか、今まで一回も女と付き合った事が無いなんて事はねえだろうに。」


 「いや・・・。まあ・・・。」


 「えっ・・・。 ホントにねえの?」


 「はあ・・・。」


 この当時の私は、この手の話になった時、必ず「女と付き合った事はない。」と答えていました。そうでなければ、古傷をほじくり返される事が多いので・・・。


 「え!? そっか・・・。 意外と渡辺も、暗い青春時代を送ってたんだな・・・。 大丈夫! そんなチェリーボーイも、俺らが応援するから!」


 「・・・。 いや、佐藤さん・・・。 俺、ホントそういうの良いっすから・・・。」


 「そう言うなよ。 別に女に興味がねえ訳じゃねえんだろ?」


 「いや・・・、まあ・・・。」


 「とりあえず、今度の休みに、女の子いっぱい呼んで飲み会やるから。 お前も来いよ! 俺の知り合いばっかりだから、気楽で良いぞ!」


 「はっはあ・・・。(やれやれ・・・。)」


 そんな具合に、私は佐藤さんの強引さに押し切られてしまいましたが・・・、内心、たまには、そうやって羽目を外すのも良いかもしれないと、久々の交流会に、ちょっとだけ興奮を覚えていました。



 そんな訳で、私は佐藤さんの飲み会に参加するべく、チャリンコで居酒屋に向かいます。結構な距離を走り、到着した居酒屋には、既にそこそこ人数が集まっていた様で・・・。


 「お~い! 渡辺! こっちこっち!」


 「あ、どうも。」


 「え~! 今日はずいぶん若い子がくるじゃない!」


 そこには、どういう訳か、短時間でもうある程度出来上がった女性が三人と、佐藤さん、そして寮で私の隣の部屋の住人であり、佐藤さんとは同期の「太田さん」も一緒でした。


 (ずいぶんと、大人のお姉さんが多いな・・・。 話合うんだろうか・・・。)


 そんな不安もありましたが、酒が入れば結構楽しめるもので、私は久々に華やかな席での会話を楽しみ、美味い酒を味わっていました。


 「う~ん、そろそろユキエも来る頃かな?」


 「おおっ! いよいよ主役の登場か!?」


 「ちょっと佐藤さん、それヒドくな~い!?」


 「うっはっはっは!」


 「先輩、ユキエさんというのは?」


 「ああ、間宵まよいさんって言うんだけど、綺麗で明るい人でなあ! お前も、会えば惚れちまうぞ!」


 「へえ~・・・。」


 そして、それからしばらくすると・・・。


 「ごめんごめん! 遅くなっちゃって!」


 「ああ! 間宵さん待ってましたよ!」


 「ユキエ~、遅いよ!」


 そこにやってきた女性は、私よりもいくらか年上の綺麗な人で、スラッと伸びた髪は、不思議な雰囲気と清楚さを、同時に醸し出していました。


 『なるほど・・・。 みんなが言うだけあるな。 綺麗な人だ。』


 「ねえねえ、渡辺くん! この子ねえ、占いやら何やら、不思議な事が得意なんだよ! 渡辺くんも見て貰えば!? 恋の行方とか~。 あははは!」


 「(どうも・・・。 俺はこういう変な人に縁があるんかな・・・。)

 へえ・・・。そうなんすか~。 でも、俺あんまりそういうの得意じゃないんですよ・・・。」


 私の、その言葉が気になったのか、早速到着したばかりの間宵さんは、駆けつけ三杯の言葉通り、テーブル前に届いたビールをあっと言う間に飲み干すと、私に向かって話しかけます。


 「へえ~。 あなた、幽霊とか、そういうの嫌い?」


 「いや、怖いの駄目なんで・・・。 それに、あんまり信じて無いんですよ。 幽霊だとか、妖怪だとか。」


 「へえ~・・・。 そうなんだ・・・。 意外。」


 『意外って・・・。 なんだ、俺の見た目は、幽霊好きそうって事か?・・・。』


 そんなやりとりがありましたが、その後も飲み会は適当な盛り上がりを見せ・・・。しかし私は、逆にこの間宵さんの登場のせいで、少し気持ちが冷めていました・・・。


 『幽霊か・・・。 そういや昔、心霊写真を撮っちゃったり、変な目にあったりした事があったな・・・。 アイツが生きていたら・・・、この間宵さんとも話が合ったろうに・・・。』


 「どうしたの? 考え事?」


 「あ・・・いえ、ちょっと古い事思い出してて・・・。 大した事じゃないんですよ。」


 「ふ~ん・・・。 ねえ、さっきの話なんだけどさ。あなた、本当に幽霊とかに興味ないの?」


 「え?・・・。 はあ・・・。 そんなに幽霊好きそうに見えます? 俺・・・。」


 「う~ん・・・、そう言う事じゃなくて・・・。 あのさ・・・。」


 そう言うと、間宵さんは私を手招きし、顔を寄せる様に指図します。


 「今日は酔っぱらっちゃったから・・・。 今度、二人で会える?(コソコソ)」


 「え?・・・。 いや、俺は・・・。」


 「ああ、大丈夫。 変な意味じゃないから。 どうしても、あなたに伝えないと行けないみたいだから。(コソコソ)」


 「はあ・・・。(何言ってんだろ・・・この人。)」


 「とにかく、一度会って話をさせて。 お願い。(コソコソ)」


 「分かりました・・・。 それじゃ、来週の休みに・・・、この近くのファミレスか喫茶店でどうですか?」


 「ありがとう。でも、あなたにとっても、マイナスになる事じゃないと思うわ。 今まで、辛かったんでしょ?」


 「え!?・・・・。」


 そう驚く私の顔を見た間宵さんは、まるで全てを見透かす様に・・・、私に優しい微笑みを向けてくれました。


 これが、私と「間宵ユキエ」さんとの、運命的な出会いとなります・・・。

 彼女との出会いは、この直後、私の運命の分岐点を、確実に切り替えてくれる事になるのです。


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