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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
第二章
32/85

58 「勉強はお二人で・・・」

 兼末エイキチこと「エーちゃん」と私は、それこそ小学生の頃からずっと一緒で、恥ずかしい言い方をすれば、「無二の親友」となっておりましたが、そんな私達と同じぐらい仲の良い男子に「犬飼ユウゾウ」という男子がおりました。

 この犬飼も、どうも腐れ縁なのか、やたらと同じクラスになる事が多く、オマケに頭の程度も私達と同じという境遇でした。

 結局、「類は友を呼ぶ」という諺は偉大なものだと、身を以て体感する事が出来た訳ですが・・・。


 それはまだ中学一年の頃のある日、私たちは、まだ違うクラスだった犬飼の部屋に集まっておりました。


 「お前さあ・・・・、結構、成海とか石崎とか言うのと仲良いよな~・・・。」


 「あん? まあ、良いっちゃあ良いけど・・・。 何となく弄ばれてる感というか、こき使われてる感がどうもな・・・。」


 「まあ、俺らからみても、お前、なんだか成海って女の召使いみたいだもんなあ・・・。」


 「いや、自覚はあるんだが・・・・。 何だか改めてお前に言われると腹立つな。」


 「良いじゃねえか~。俺なんて羨ましいよ~。 成海って女はちょっとアレだけど、あの石崎って子、めちゃくちゃ可愛いし、優しそうだし!」


 「それもそうだな・・・。 そう言われてみれば、これは凄くラッキーな事なのかも知れない。」


 「まあ、成海って女も性格はともかく、顔は相当可愛いからな~・・・。アイツ、なんか日本人離れしてるし。」


 「そうか? そう言われてみれば・・・・何となく綺麗過ぎる気はしていたんだけども・・・。でも、髪も黒いから、日本人だろ? 名前もエリだし。」


 「それもそうか。」



 ― それから数日後の事・・・・


 「なあ、エリ。」


 「なによ?」


 「お前、良く外人っぽいって言われないか?」


 「そりゃそうよ。 私、クォーターだもの。」


 「クォーター? 何それ、美味しいの?」


 「・・・。 お馬鹿なあんたに説明するだけ無駄だわ・・・。」


 「あー、あれだ! わかった、ジュースだろ! ほら、最近話題になった新しいやつ!」


 「・・・。 馬鹿が移るから近寄らないで・・・。」



 ― それから更に数日後・・・・


 「エーちゃん、クォーターって知ってっか?・・・」


 「何それ? 美味いの? お菓子?」


 「いや・・・、もういいや・・・。」



 ― それからそれから更に数日後・・・・・


 「そういえば、犬飼。 この間の話だけどな。 やっぱり、エリには外人の血が混じってるらしいぞ。 たしか「クォーター」とか言ってた。」


 「へえ・・・・。 渡辺、俺もずっと内緒にしてたんだけどさ、実は俺もクォーターなんだよ。 ロシア人の血が交じってんだ。」


 「えっ!!!!」


 私の驚きは二つでした。

 どう見てもコテコテの日本人顔であるコイツに、外人の血が混じっているという事がひとつ。そして、私とエーちゃんが「食える・・・、飲めるもの」と思った「クォーター」という言葉を一発で理解した事のふたつ・・・。


 「お前がロシア人!? すまん・・・、まったく想像が出来ん・・・。」


 「ははは、無理もないだろう。 まっ、クォーターの事はクォーターにしか分からねえからなあ!」


 そう言いながら、犬飼は訳も分からず、いきなりコサックダンスを踊り始めるのでした・・・。


 『なんだ、コイツのこの無意味な自信は!・・・。あれ・・・、なんか、コイツが俺の知らないエリとの接点を持っている事に、無性に腹が立つぞ・・・。 なんでだ!?』


 それからしばらくして、私は犬飼のうちに遊びに行った時のこと。


 「いーぬーかーいくん、あそびーましょー。」


 「あら、渡辺くん、いらっしゃい! 二階にどうぞ!」


 「あ、どうも、お邪魔します。(それにしても、このおばさんがロシア系なのか!?・・・。 おじさんは確実に日本人にしか見えないしなあ・・・。)」


 ところで、この犬飼には年の離れた妹がいます。

 名前を「ヤスコちゃん」と言いまして、この子にどういう訳か、やたらと気に入られた私は、何故かこの家に遊びに行きますと、しばらくはこの「ヤスコちゃん」の人形遊びに付き合わされるという事が日課になっていました・・・。


 「はい! じゃあユキちゃんは今日はこの子の役ね! この子はこっちの子の恋人だからね~!」


 「はい! わたくし、恋人をやらさせていただきます・・・。(毎度毎度の事なのに、助けろ、犬飼! それとも、お前! 無駄に妹思いなのか!?)」


 結局、この犬飼の「ロシア人のクォーター」説は、私が本人の母親にコッソリ伺った所・・・


 「は? あのタコ(この家では、息子の事をタコと呼ぶ)、またそんな事言ってるの!? なんかねえ、憧れてんのよ、ロシア人に。うちは先祖代々、混じりっけ無しの日本人なのにねえ・・・」


 という言葉で、単なる見栄だと分かるのでした。

 この時の私は、コイツとエリの間にあった、どうでも良い共通点が無くなった事に不思議な安堵感を感じ・・・、どうも自分の感情のおかしさに戸惑いを感じたものです。




 話はガラッと変わりますが、世の中「金で買えないものは無い」などと言う、ちょっと下品な言葉があります。

 これは若干極論過ぎとしても、やはり何かにつけて「お金」がついて回る事も事実でして、それは何もオトナだけの話ではなく、中学生でも高校生でも同じ事なのでした。

 高校生になれば、ちょっと学校にナイショでバイトをして小遣い稼ぎ・・・という手段がありますが、如何せん、中学生ぐらいではそうもいかず・・・。 と言って、「あれも欲しい、これも欲しい!」とか、「いやいや、友達と色々遊びたい!」とか、「やっぱりみんなで買い食いは必須でしょう!」とか、「やはり折角の時間を彼女と楽しく過ごしたい」等々・・・と思うものは、男女問わず多い訳でして、この辺りが、当時の私達の大きな課題となっていた訳です。

 そして、これはそんな「資金難」に喘いでいた、ある日の事・・・。



 「え~っ! それじゃ明日のデートはどうなんのよ!」


 「いっいやあ、そう言われても金が無えんだよ・・・。」


 その日、私は翌日予定していたデートのために、早朝から出掛ける準備と称して、前日から姫様の家へと、泊まり込みに来ておりました。


 「折角楽しみにしてたのに・・・。 ば~か!」


 「そう言われてもなあ・・・。 ギリギリまでアテにしてた調達先が駄目になっちまってよ・・・。」


 この当時、私は姫様との軍資金を稼ぐために、いくつかの調達先を確保しておりました。

 勿論、中学生の身では表立ったアルバイトなどは出来る訳も無いのですが・・・、いくつかの場所で「手伝い」と「小遣い」という名目で、労働をさせて貰うのでした。


 ひとつは、私の通っていた道場の先輩で、家具屋を営む「ゲンさん」の手伝いで、トラックに家具を積み込んだり降ろしたりする作業。これは結構な重労働でして、私の他に、エーちゃんと犬飼も参加しており、一日だいたい三千円ほどを「小遣い」として貰っていました。


 その他に、家具屋ではお客からご祝儀を頂く風習があるらしく、そのご祝儀が出た時は、更にお裾分けとして千円が上乗せされまして、ここは実に良い資金源となっていました。また、この時の重労働は、私の体格を立派にしてくれる基礎になった様に思います。


 もう一箇所は、私とエーちゃん、そして実は犬飼も通っていた「義村塾」のマドンナ的存在の女講師、スチュワーデス志望でナイスバディーの「大塚先生」を覚えておられるでしょうか。

 実はこの大塚先生、お宅が会社やらスーパーやら何やらを経営されている結構なお嬢様でして、そのスーパーはお母様が店長をされていたのですが、この店長さんに気に入られた私達は、ことある事に商品のラベル貼りやら何やらの軽作業を手伝わせてもらい、その度に「お小遣い」と称して、いくらかの現金と、賞味期限ギリギリの食料品などをいただいておりました。

 これは結構助かりまして、親から弁当代として貰った金を、この食料で賄ってポッポに入れてしまうような事も出来ましたので、こちらも大きな資金源となっておりました。


 そんな具合で、私達は当時の中学生としては結構多めの軍資金を有しており、特に私のお相手であります姫様は、複雑な家庭の事情と寂しがり屋な性格ゆえ、また基本的には家が裕福なお嬢様という事もありまして、やたらと遊びに行きたがる事が多く・・・、この軍資金には大変助けられたものです。

 もっとも、この当時の想い出の数々は、この姫様の強引とも言える行動力によって作られた事は間違い無いのですが・・・。


 とは言え、この調達先も毎度毎度、都合良く機能するはずもなく・・・、しばらく収入が途絶え、たちまち資金難に陥る事も多々あった訳ですが・・・。

 今回も、そんな具合にオケラとなった事で、私達は楽しみにしていたデートの変更を余儀なくされてしまった訳です・・・。


 「ムスッ・・・。」


 「もういい加減、機嫌直せって・・・。 金がねえから、遊びには行けねえけど、明日一日ある訳だし。 折角今日から泊まりに来たんだ、何なら一晩中トランプでもやっか!?」



 「いい、もう寝る。 ば~か! お休み!」


 「・・・・。(やれやれ・・・。)」


 結局、その日は姫様の悪態を散々聞きながら・・・、私も何となく罪悪感を抱えつつ・・・、大人しく眠りに入るのでした・・・。



 そして、その翌日の事!


 「ねえ、ユキ! 早く起きてよ! ほら!」


 「ん~っ・・・。 何だよ、まだ五時じゃねえか・・・。」


 「何言ってんのよ! ほらっ! 早く行くわよ!」


 「行くって、どこにだよ・・・。 だから、俺、金無ねえんだって・・・。」


 「ホントに無いの!? もう一回、ちゃんと財布確かめてみたら!?」


 「確かめるったって・・・。 いきなり金が湧いてくる訳でもあるまいし・・・って、あれ!!! すごい増えてる!!!」


 「ほら、ちゃんとあるじゃない! ねっ、だから行こうよ!」


 「ちょっと待て、エリ! これ、お前の仕業だろ!?」


 「何が? 知らないわよ、そんなの。」


 「どんなトボケ方だ、アホ! 昨日の夜にスッカラカンだった財布が、俺とお前しか居ない家で増えたんだ。 お前しか居ねえだろうが!」


 「別にいいじゃない、なんだって・・・。 それで行けるんだから。」


 「全然良くないぞ! お前なあ、これだけの金稼ぐのに、俺がどんだけの家具運んだり、ラベル貼ったりしなきゃならねえと思ってんだ?

 前から気になってたんだけど、お前は金に頓着が無さ過ぎるぞ! 俺だって、女から金貰うなんて、何となくプライドが傷付くもんなんだぞ・・・。

 二度とこんな事すんなよ! 分かったか!?」


 「別にそんなつもりじゃないのに・・・。 分かったわよ・・・。」


 「エリ、別に良いじゃねえか。 金が無ければ、無いなりに楽しめば。 二人で一緒にいれば、何でも楽しいって、お前が言ってた事だろ? 俺たちはまだガキなんだからさ。身の丈にあった楽しみ方をするべよ。 な?」


 「うん・・・。 ごめんなさい・・・。」


 ある意味無邪気であり、世間知らずだった姫様は、ついつい自分本位に物事を考えがちな所がありました。

 出会った当初は、その性格に実に悩まされたものですが、この頃には、その性格も段々と穏やかになり・・・、そして何より、私自身が彼女のこの性格を、実に愛おしく感じる様になっていました。

 もっとも・・・、この時の彼女にとっては、金などよりも、その限られた時間の中で如何に「私達の想い出」をたくさん作れるか・・・、そちらの方がとても重要だったのでしょう。それを私が知ったのは、ずっと後の事になるのですが・・・。




 ところで、この頃に稼いだ軍資金は、何も姫様とのデートのみに使われる訳ではありませんでした。

 勿論、姫様へのプレゼントの資金として使われる事もありましたが、正直な話、プレゼントに関してはそれ程あげた記憶が無く・・・。誕生日にあげたブローチの材料費やバレンタインのお返しにあげた、しっぽがチャック式の小物入れになっているアライグマのヌイグルミ、それに動物園で珍しく欲しがったパンダのヌイグルミ、更に例の紛失して大騒ぎとなった指輪・・・等々、その他にもいくつか細かいものはありましたが、それでも年相応と申しましょうか、それなりに相応しいものを、お互いが許容できる程度に贈り合うのみに止まっておりました。


 では、それ以外で何に使われたかと申しますと、勿論、姫様以外の友人達との交際費として使われる事もありましたし、たまには自分の欲しいものを買ったりする事もありました。

 その中でも、友人達の交際費でもあり、あるいは自分の欲しいものでもあり、更には社会勉強の教材にもなってしまうという、素晴らしい「買い物」がありまして・・・。


 「おい、渡辺! お前の言ってた場所、凄かったぞ!」


 「だろ!? 俺もチラッと通っただけで中までは見て無かったんだけどよ! この辺の無人販売所じゃ、ピカ一だべ!」


 「凄いぞ、ホント! エロ本の販売機だけで五台、他にもビデオの販売機まで置いてあった! 夜にコッソリ抜け出して買ってきたんだけどよ! 隔離されて見えないようになってるから、かえって買いやすかったぞ!」


 「うわっ! お前もう早速買ってきたのかよ! 流石、犬飼だな・・・。」


 そう、この頃のお年頃の男子中学生であれば、皆さんが誰でもそうであろうと思うのですが、いわゆる「エロ本の回し読み」というものがありまして、毎回、各自持ち回りでエロ本を調達し、それを決まった順番で回し読む訳です。最終的にこのエロ本は、私達のグループを一周した後、調子の良い「ハイエナ」達が、そのオコボレをあずかる様に持ち去ってしまうのですが、その辺がまた・・・、上手くできている訳です。


 ところで、この「エロい回覧」は、なにもエロ本だけの話ではなく、また~に「ビデオ」でも行われる事がありました。といって、当時は今の様にそれ程ビデオデッキが普及している訳ではなく、私の家にも、この当時はまだビデオデッキが無かったものですから、当然の様にデッキのある家に「鑑賞会」と称して集まり、皆で勉強をする訳ですが・・・


 「よっよし、それじゃ始めるぞ!(コソコソ)」


 「犬飼、ボリュームに気をつけろよ・・・。(コソコソ)」


 「おう、ガッテンだ・・・。(コソコソ)」


 ~ ただいま観賞中 ~


 「すっ凄えな・・・。」


 「エーちゃん、ヨダレ、ヨダレ・・・。」


 ― ドンドンドン!!!!


 「うぎゃ!!!」


 「お兄ちゃん、何やってるの~! ヤスコも入れてよ~! ねえ、ユキちゃんも来てるんでしょ!? ユキちゃ~ん! 遊んでよ~!」


 「やっヤスコ! お兄ちゃん達は今忙しいから、あっち行ってなさい!」


 「なんでヤスコを仲間はずれにするの~!? ねえ、お母さん! お兄ちゃんが意地悪するよ~! それにお部屋から変な声がする~!」


 「わあ~!!!!!! バカバカバカ!!!!! まっ待った!!! ヤスコぉ~!!!! 良し分かった!!! 今、ユキちゃんが遊んでくれるってから!!!!」


    ・

    ・

    ・


 「じゃ、そう言う事だから・・・。 後は頼んだぞ! 渡辺!」


 ― バタンッ!・・・・。


 『・・・・・。』


 「じゃあ、ユキちゃん、今日はヤスコの旦那さんの役ね~。」


 『・・・・。 あっあれ??? なんで???・・・。』



 と言う様な事はしょっちゅうでして、如何せんこれはタイミングが難しく、また資金的な問題もありまして、それ程多くは実現しませんでした・・・。


 「え~っと・・・、今回の順番は、渡辺で良いんだっけ?」


 「俺だ、俺だ!」


 「おい、渡辺! 次は俺なんだから、見つからない様にしろよな!」


 「安心しろ、エーちゃん! こうやって鞄の底板に隠しときゃ、誰にもわかんね~よ! うっひっひっひ・・・。」


 「うっひっひっひ・・・。」


 とこで、人間は何事も、経験が浅い事に対しては必要以上に注意を払う事がままあります。それ故に余計な緊張を生んで失敗する事も多い訳ですが、同時に・・・、慣れたものに対しては、その警戒心や注意力が薄れてしまうものなのでした・・・。


 「ねえ、ユキ。 今日の宿題、うちで一緒にやろうよ。」


 「ああ、良いよ。 でも、俺たちだけで大丈夫かなあ・・・。 リョウコか鷲尾を呼ぶか?」


 「いいわよ! 人にばっかり頼らないで、たまには私達二人で頑張らないと!」


 「へえ~・・・。 お前がそういう事言うと、なんとなく嘘臭く聞こえるんだよな・・・。」


 「殺すわよ。」


 「いえ、何でもありません・・・。」


 思えば、これが油断の始まりでした・・・。

 そう、私はその時、爆弾を身にまとっている事を、すっかりと忘れていたのでした・・・。


 そんなこんなで、私達は早速、エリの部屋にて勉強会を始めた訳ですが・・・。


 「ねえ、そう言えばこの問題、前にユキがノートにまとめてた所に書いてなかったっけ?」


 「そうだっけ? 良く覚えてるな、お前。 書いた本人が忘れてんのに。」


 「あんたがいい加減なのよ・・・。 で、ユキのノートは?」


 「ああ、俺のカバンの中だから、勝手にとって良いぞ。」


 「はいな。 え~っと・・・。」


 『あれ?・・・。 俺、なんか重要な事忘れてねえかな? カバン・・・カバン・・・。 ・・・。 あっ!!!』


 「まっ待った!!! エリ!!!!」


 と、気がついた時には、すでに後の祭りでして、私のカバンから「それ」を見つけ出した姫様は、私の顔を凝視しておりました・・・。


 「何これ? どういう事?」


 「あっ、いや・・・。 そっそう、それは犬飼のヤツがさ!」


 「ふ~ん・・・。 人のせいにするんだ・・・。」


 「あっ、いや・・・。(くそっ、すっかり忘れてた・・・。油断した・・・。)」


 「なんでユキがこんなもの持ってるの? と言うより、なんで見る必要があるの? これってつまり、私に不満があるって事?」


 「いっいや、そんな滅相もない! そっそういう事じゃなくてだな!・・・。 つまり・・・その・・・あれだ・・・なんだ?」


 「・・・・。」


 「そっその・・・。 そっそう! あれだ! つまりこれは、勉強のためにだな! そっそう、色々と勉強をしようと思って! ほっほら、こういう事は人に聞けねえし、何より自分の力で解決しねえと駄目だろ!?(なっ何言ってんだ、俺は・・・。 もう頭ぐちゃぐちゃ・・・。)」


 「・・・・。 ふ~ん・・・。 そうなんだ・・・。」


 「(あっあれ!? 何か知らんけど、納得してる!!! ラッキー!!!)そっそうなんだよ! いっいやあ、俺も苦労するよ、ホント! うははは!」


 「じゃあ、今見ましょうよ。」


 「えっ!? 

 ・・・・・。

 えええええっ!!! 今!? こっここでですか!?」


 「そうよ? 当たり前じゃない。」


 「いっいや・・・、しかしここでは・・・。」


 「何言ってんのよ。 こんな事、あんた一人で勉強しても仕方無いでしょ? 私も勉強したいから、一緒に見て二人で勉強しましょうよ。 ほら、早く。」


 「いっいや・・・。ごっごめんなさい。 そっそれだけは勘弁して下さい!・・・。」



 この時、私は「女に下手な嘘は逆効果・・・」という真実を、若くして知る事になるのでした・・・。


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