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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
第一章
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02 「学級委員」

 あの衝撃的な出会いからしばらくして、クラスでは、いわゆる「学級委員」を決める時間が設けられていました。

 もっとも、この学級員というヤツは、大抵は何が楽しいのか、自分から立候補をする様な物好きが、クラスには一人か二人はいるもので、そいつらが勝手にやるのが「毎度」の常道でした。 正直、ごく普通の私などには関係ない他人事とタカを括っていました。


 ただ・・・・

 今回がいつもの「毎度」と違っていたのは・・・

 たまたま立候補を名乗り出るものが一人もいなかった事。

 そして・・・

 私の隣に居る「お人形さんの様な顔をしたお嬢さん」が、一番の問題だった訳ですが・・・・。



 早速、先生の説明で始まった学級会議で、まず自ら志願する立候補者を募った訳ですが・・・。 どうも、このクラスには「物好き」は存在しなかったようで、それでは誰か推薦を・・・という事になりました。

 あくまで生徒の自主性でとの事でしたが、まだ知り合って間もない生徒同士で、良く知りもしないのに無責任に推薦するようなお調子者はいる訳が無く・・・。となりますと、最後は若干無責任が許される「匿名票」による候補の擁立という段階になる訳です。

 そうなれば恐らく、現時点で(たぶんイメージで)そういう役職に相応しそうな、いわゆる「嫌でも目立つ」方々に白羽の矢が立つ事になり、「つまり、俺には関係のない話だなあ・・・」などと、呑気に構えていたものです。


 そこで思い出されるのは、始業式でエリが行った、あの衝撃的な「私の紹介スピーチ」ですが、アレのお陰で変な知名度の上がった私が、まかり間違って候補に推されてしまう・・・・なんて事は、微塵も考えず、完全に傍観者気分で参加しておりました。



 ところで話は変わりますが、エリには、無二の親友と呼べる存在がいました。とにかく常に一緒にいるので、姉妹と思うほどの仲良しでした。


 彼女の名は「石崎リョウコ」。

 性格はエリとは全く逆で、おしとやかで器量よし、普段は大人しく、あまり自分から目立とうとはしませんが、性格は明るく、とにかく人に対する気遣いが出来る子で、誰からも好かれる女子でした。そしてエリに違わぬ美人さんでもありました。エリがお人形さんの様な綺麗さなのに対し、リョウコはどちらかというと「色っぽい系」とでも申しましょうか。またその性格と相まって、可愛らしい容姿が何倍にも見えたものです。


 そして、ちょうど私がリョウコと初めて話をしましたのも、この学級会議の少し前の事になります。

 例によって、エリが人の都合も考えず、無理矢理のように引っ張ってきた可愛らしい少女がリョウコでした。

 エリはその少女を私の前に挿しだし・・・・


 「これ、リョウコ! 私の妹みたいなものだから、仲良くしてね!」


 とのたまうのでした・・・。


 (いやいやいや、どう見ても逆だろ・・・。お前が妹で、こちらの方が姉の間違いじゃないのか?・・・。仲良くする事には、まったく依存はございません。むしろこちらからお願いします!)


 ・・・などという事を、心の中に刹那で考えていると、


 「何だか改めて変だけど・・・、石崎リョウコです。 私もエリと同じで、リョウコで良いから、これからも宜しくね。」


 と、まるで透き通るような明瞭な声で、私に挨拶をしてくれます。その声は実に魅力的で、私は瞬く間に魅了されたものです。

 しかし、エリの事を「エリ」と名前で呼び捨てる事には、何の抵抗も感じなかった私ですが、正直、この方の場合は気恥ずかしさが優ってか、しばらくは違和感があったものです。正直「リョウコさん」ぐらいで丁度良いぐらいの気品と風格がありました。


 余談ですが、この二人の事を「名前」で呼ぶ男子は、私を含めて二人おりました。

 くだらない事ですが、この頃の微妙なお年頃の私達には、こういう小さな事が案外大きかったりしたもので、私達のように「よう、リョウコ!」なんて、気楽に名前で呼んでみたいという憧れを抱いた男子は、恐らく少なくなかった事でしょう。まあ、これは後々分かる事なのですが・・・。




 さて、時間を戻しまして、学級会議の件ですが・・・。

 既に立候補者の名乗りもなく、今また推薦者も出ないと言う事で、時間ばかりが無駄に過ぎていく矢先の事、それは突然起こりました。その時まで傍観者だった私は、隣から響く「悪魔の声」により、まさに「当事者」として引きずり出されてしまったのです・・・。


 「先生!」


 いきなりのハイテンションボイスにビックリした私が隣を見ると、元気一杯に挙手をする彼女の姿が目に入り・・・、しかも何やらニヤニヤとこちらに目線を向けています・・・。 正直、私の危険測定器の針は振り切れ寸前でした・・・。


 (どうか余計な事は仰らないでください!・・・ どうか余計な事は仰らないでください!・・・)


 そんな私の願いも虚しく、それは無常に響くのでした・・・


 「学級委員には渡辺くんが良いと思います! 本人もやりたそうですし!」


 (ああ・・・・エリさん、なんて事を仰るんですが・・・。)


 私は正直、頭の中が真っ白になってしまい、慌てて否定しようとするも虚しく、先生の鶴の一言で、めでたく「学級委員」に就いてしまうのでした・・・。


 要するにコイツは、ダラダラと無駄に流れるこの時間に我慢が出来なくなったのでしょう。なので、誰でも良いからそれを押しつけて、さっさとこの場を撤収させたかったのだと思います。その証拠に、今のコイツは実に満足げに、優越感に浸った笑みを顔一面に咲かせています。


 (くそ、いまいましい・・・。)


 私は憎々しいその顔を眺めながら、復讐心で一杯になっていました。そこで、この憎たらしい少女に一矢報いるために、私は先生にとある提案を持ち出します。


 「先生、俺が学級委員になるのは諦めますから、女子の推薦をさせてもらえませんか?」


 そういいながら、私がエリに顔を向けますと、既に私の考えを察したのか、エリは、あのお人形さんの様な愛らしい顔で、私をキッと睨み付けます。


 と言う訳で、私達はめでたくも、仲良く「学級委員」という大職に就くのでした。


 しかし私はここで、大きな後悔をする事になります・・・。


 (何で相方にリョウコを指名しなかったんだ・・・そうすりゃ俺の学園ライフはバラ色だったって言うのに! よりによって、コイツと過ごす時間を自分で増やすなんて!)


 と、私は一時の復讐心でおこなう衝動的行動は、後悔以外何も生み出さないと勉強しつつ、一歩ずつ大人の階段を登っていくのでした・・・。


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