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ネジ飛び姫  作者: もぐもぐお
第一章
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14 「肝試し大会」

 思えば、あの「スプーンまげ」の一件で、姫様の「不思議好き」な心が刺激されてしまったのが、すべてのキッカケだったのかも知れません・・・。


 「今日、肝試し大会やるから! うちに来て!」


 夏休みのとある日、元気良く唐突に「ネジ飛び姫」様のお声が響きます・・・。


 『このアホ、全然懲りてねえ・・・。』


 呼び出しに伴って、私達は昼過ぎ頃からエリの家に急行します。


 『それにしても、お前らホント暇だな・・・。俺も人の事は言えねえけど・・・。』


 みんなが集まったところで、エリから今回の計画について説明を受けます。

 なんでも、例の○○霊園(外周道路に事故が絶えなかったり、園内で霊を見たなどの情報が続発している、あの墓地です・・・。)には、医大で使われた献体を供養する碑があって、その辺りにはかなりの頻度で不思議現象が目撃されるのだとか・・・。


 『それにしても、毎度毎度不思議なのだが、コイツは一体、どこからこういう「いかがわしい情報」を仕入れてくるのかね・・・。』


 「おまえ・・・、前回の件で懲りたんじゃないのか?」


 「はあ? 何の事? さっぱりよ。」


 「・・・・。あのなエリ、そんな世間様のお役にたった方々を鎮魂するような、神聖な所にだな。お前みたいな頭のネジが飛んだアフォーなヤツがふざけ半分で近づいたら、ホントに祟られちまうぞ。悪い事は言わないから、やめとけやめとけ。」


 「誰の頭のネジが飛んでんのよ、この馬鹿! 私は真面目だって言ってんでしょ!」


 「どこの世の中に、真面目に肝試しをするヤツが居る・・・。」


 「とにかく! 日が暮れたらみんなで行くわよ! だいたいね、人間は死んだらみんな幽霊になるわけでしょ? と言う事は、幽霊と同じ能力を人間は持っている訳よ! それなら身体があるぶんだけ、私達が幽霊に負ける訳無いじゃないの! こんなものビビった方が負けなのよ! 気合よ、気合!」


 「なんだそのおもしろ理論・・・。(あ~あ、コイツに何言っても無駄なのは分かっていたけど・・・、いっそのこと、神様も軽くバチあてちまえば良いんだよ、このアホに。せいぜい、俺たちにとばっちりが来ない程度に!)」


 そんなこんなで、結局、私達はいつも通りエリに押し切られ、日の落ちたデンジャラスゾーンに向かうのでした・・・。



 この時向かったのは、例の霊園内区画の確か12区画と呼ばれる場所だったと思います。

 私達は幾つかある入り口から園内に入り、エリ持参の地図に懐中電灯をあてながら目的地に向かいます。

 そして、この「ネジ飛び姫」様から、またトンでもない提案が飛び出します・・・。


 「このままじゃ能率悪いから、何組かに別れて行動しましょう。 兼末とタカコ、シズカがあっち、それとリョウコと藤本はこっち、私と渡辺で向こうね」


 「まてまてまて!!! またそれか!!! お前は好きだな、その組み合わせが!!! だけど今度はそうはいかないぞ!!!」


 私は切々と、こんな暗闇で人数を分散する事が如何に危険かを諭します。その際、過去にこんな事件があった的な話をでっち上げたのは言うまでもありません。それを聞いて流石にひいたのか、エリは私の事をまるで犯人であるかの如く、汚物でも見るような目で見ていましたが、それ以前にリョウコと金子が脅えきってしまい・・・、


 「ねえエリ、流石にここでバラバラになるのは危ないよ。一緒に固まって行動しよう? ね?」


 と、珍しくリョウコに優しく優しく諭され、渋々言う事を聞くのでした。


 『アブねえアブねえ・・・。リョウコと藤本をこの真っ暗闇の中で二人っきりにするなんて死んでもさせんし、何より俺はもう、お前と仲良く二人で心霊体験するなんてマッピラごめんだ! 一人で幽霊と踊ってろ!』


 それからしばらく、みんなで地図を見ながらあちこちを探し回り・・・・、ついに、その「石碑」を発見するのでした・・・。

 石碑は丁度、横が2m程、縦が60~70cmあったでしょうか。それに「○○大学 ○○○ 慰霊碑」的な文字が書かれ・・・、その隣に、恐らくエライ学者さんでしょうか、髭の生えた老人の横顔が、立体のレリーフとして刻まれています。更にその横に、流暢な行書体で何やら説明書きが記されていましたが、当時の頭の悪い私には、それは読む事が出来ませんでした。

 その石碑の奥に慰霊塔が2mぐらいの高さで立っており、どうやらこの区間一帯で「慰霊碑」となっているようです。


 「どうだ、これで満足だろ?」


 「う~ん、なんかイメージと違うのよね・・・。まあ良いわ。 写真撮れば何か写るかも知れないし。」


 「お前が言うと冗談にならないんだよ。物騒な物言いは止めろ。」


 結局その日は、大した収穫もなく、写真だけを撮って解散となりました。



 それから数日後・・・・。


 その時の写真が出来上がったと、エリから嬉しそうに電話が掛かり、私達はエリの家に集合して、以前の新聞委員の時のように、それを全員で検証するのでした。

 もっとも、こんなもの早々撮れるものではなく、前回のだって本当に何億分の一の確立がたまたま来てしまった訳で、ある意味、車に轢かれるよりもレアな体験な訳ですから、私は結構安心をして写真を見ていました。


 『が、何だろう・・・、この違和感は・・・。』


 その写真は、明らかにオカシな所は無く、誰に見せても暗闇でフラッシュを焚いた、怪しいところなど微塵もない極々普通の(違う意味では充分怪しいのですが・・・)墓石の写真なのですが、私は何となく物足りない雰囲気を感じていました・・・。


 「あっ!!」


 最初にそれを見つけたのは、またもや鷲尾でした。


 「ない!!! あのお爺さんの彫刻が無い!!!」


 『・・・・・・・・。そうだ!!!! あの髭の生えたじいさんの横顔が石碑に無いんだ!!!!』


 そう、今回は七人が七人、全員で確認したはずの老人のレリーフが、何と写真には一枚も写っていなかったのです・・・。


 「私、確認してくる!」


 流石に気持ち悪いと思ったのか、エリは真面目な顔でそう言いながら、家を出ようとします。流石に一人で行かせる訳にもいかないので、私達も後を追います。

 流石に夜とはいえ、一度は彷徨った場所ですから、今回は昼間の事もあり、私達は特に苦労することなく、例の「12区画」に辿り着きました。

 早速石碑を確認すると・・・・、ありませんでした。あの時、全員で確認したはずの、あの老人のレリーフは、石碑から影も形も消えていました。それどころか、あの時は行書体で刻まれていた文字も・・・今は私でもしっかりと読める楷書体に変わっています・・・。

 余りに怖かったのか、金丸はその場で泣き出してしまい、それを必死に慰めるリョウコの顔も真っ青でした。エリは何やら難しげな表情で石碑を睨み付けています。男連中は全員、もう浮き足だって内心はバクバクでした。

 とりあえず、私はこの場に居るのは良くないと申し出て、まずは墓地を出てエリの家まで戻ります。流石に皆しばらく黙っていました。そりゃそうでしょう。前回に続いて二度目です。余りにも出来過ぎています。まるで誰かが「呼び寄せている」としか思えません・・・。


 流石にこの一件では、エリも「みんなを巻き込んでしまった」と後悔したのか、この後は心霊写真を撮ろうとか、肝試しに行こうとか、馬鹿な事は言い出さなくなりました。

 もっとも・・・・、本人の興味が、それで薄れた訳では無いようなのですが・・・・・。



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