表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

山分けです

 バオムのおっさん達が賊の身ぐるみを剥ぎ、セラフィがベッドでお昼寝中の間、私とジョナサンはフェルゼン爺さんから色々な事を聞きだしております。

 

「さずがはフェルゼンさん! 勉強になるわ」

「私の知識が徐々に積み重なっていくのがわかります。フェルゼンさん」

「そうかいそうかい。それじゃあこんな話は知っているかの?」


 物識りなのは便利だけど、一度喋り出すと止まらないねこの爺さんは……。


「待たせたね。終わったよ」

 爺さんの、突然明後日(あさって)の方向に飛んでいくお喋りに多少辟易してきたところに、バオムさん達が再登場してくださいました。


「死体は血抜きして袋にしまっといたからな。奴ら、結構持っていたぜ」


 続いて作業員さん達が戦利品を屋外テーブルに並べていく。

 セラフィ、そろそろ起きなさいな。

 

 目を擦りながら起き出してきたセラフィに、テーブルに着くように背中を押してあげてから、私もテーブルの上に注目したの。

 ちなみに今は薪を大量に積んでいるから『収縮コントラクト』は使えません。

 厳密には使えるのだけれど、同時に積荷が溢れかえってしまうからやらないのよ。


 まずは武器。 

「剣が5本、槌が1本、弓が3本だな。まあ中古品だ。血まみれの衣類が欲しけりゃ別にしてあるけれどな」


 次に貨幣。

「金貨が二十枚に銀貨が五十枚、銅貨と鉄貨がまとめて一袋だ。銅貨と鉄貨は面倒だから数えてないぞ」


 最後に宝石

「頭目らしいのが高位万元素結晶を一つ持っていたぜ。他にも緑色万元素結晶が五つほど。こいつはウッドゴーレムの核用かもな」

 

「それじゃあ山分けとするかの。セラフィ、欲しいものはあるか?」

 余裕のフェルゼン爺さんに対し、いきなり色々と並べられたセラフィは眠気が飛んで行った様子で、目をぱちくりとしている。


「えーっとね……」


 あーあ。セラフィったら硬直しちゃったよ。それはそうだよね。

 それじゃあ口を挟もうっと。

 

「武器と血まみれの衣服は持っていても仕方がないので、私達は放棄します。その代わり貨幣と宝石を応分で分けていただけませんか? 私達は三分割ではなくて作業員さん達を含めた人数割でも構いませんから」


「いいのかい?」


 バオムさんは私の『人数割』という提案に見事に釣られました。ふっふっふ。

 実はさっき、ジョナサンと対応については打ち合わせ済みだったのよ。

 私達はこれから初めて街に行く立場だから、処分が必要な品物を分けてもらっても当面は困るだけ。

 

 それからもう一つ。

 フェルゼン爺さんが定期的に伐採場で薪や木材の買い付けをしているのはバオムさんの態度で丸わかり。

 ということは、伐採場からの運搬は定期的にあるということ。

 ならばここは目先の利益にとらわれず、今後お仕事仲間になるかもしれない人たちに愛想を振りまいておいた方がいいに決まっているのよ。

 これはプロの知恵。お仕事を順調にいただくためのね。 


「それなら中古の武器はわしが引き取ろう。セラフィ、店まで運んでくれるな?」

 フェルゼン爺さんの申し出にセラフィは嬉しそうに頷いた。

「それから高位万元素結晶はこの場でわしが金貨三十枚で買い取るがどうじゃ?」

 その申し出もありがたい。

 何故ならみんなで分け易くなるから。

 ついでとばかりにフェルゼン爺さんは緑色万元素結晶も1つ金貨五枚で買い取ってくれたので、金貨は全部で75枚になりました。分けがいがあるわ。


 和気あいあいとみんなで山分けの結果、セラフィは金貨を12枚に銅貨と鉄貨が詰まった袋を分けてもらえました。

 フェルゼン爺さんも山分けには公平フェアに参加していたんだよ。こういう姿勢って好感が持てるよね。 

 バオムさんも作業員のおっさんたちも結構なお小遣いが入ったようで上機嫌だし。


「それじゃ気をつけて帰れよ!」

「はーい!」

 私の運転席に乗り込んだセラフィは、窓から身を乗り出して、見送ってくれるバオムさん達に手を振っている。


 ちなみにフェルゼン爺さんはちゃっかりと助手席に座っているし、ヴィルトも本物の犬のように爺さんの足元で伏せをしながら眠り込んでいる。

 フェルゼン爺さんの話によれば、ゴーレムは休眠状態になることにより、核となっている万元素結晶が回復するんだって。

 そっか、これからは私達も寝たふりをしなければならないね。

 

「おうおう、快適じゃのう」

 フェルゼン爺さんは助手席の乗り心地にご満悦。


 帰りは賊に襲われることもなく、順調に渓谷を超えることもできました。

 私の巨大さは街道を行く人々の注目を集めまくりだけれど、窓を開けて外に顔を出しているセラフィとフェルゼン爺さんのご機嫌な様子のお陰で、大騒ぎになることはなかったわ。


 渓谷を抜けると今度は辺り一面に畑が広がってゆく。

 収穫用の荷車もあちこちに見える。これは運搬のお仕事も色々とありそうね。

 

「ほれ、アインスシュタットの街が見えてきたぞい」

 フェルゼン爺さんが前方を指差した方向に、アンティークな街が見えてきた。

 

 私達はフェルゼン爺さんの案内で街へとはいっていったの。

 まずは住宅街かしら。

 

 街までの街道も思いのほか広かったけれど、街中を走る街路も思ったよりも広く取られている。

 幅は片側一車線くらいは十分にあるわね。

 ただ、交通ルールが確立されていないのか、荷車や馬車は好きなように走っているし、道を歩いている人も車の通行なんか気にしていない。

 でもそれもこれまで。


「危ないから退いてくれー」

 フェルゼン爺さんがそう窓から叫ぶ前に、道行く人々はまさしくモーセ状態で道を開けてくれる。

 あちこちで怒声が上がるのが聞こえる。

「なんじゃあこりゃあ!」

「でけえ!」

「怖いよー!」

 あら、泣きだす子まで出てきちゃった。これは本意ではないわね。


 ところが泣く子も一発で黙ってしまう。

 それは

「ごめんねー!」

 と窓から顔を出す幼い少年の姿によって。

 道行く子供たちの私への『恐怖』は、窓から申し訳なさそうに、でも楽しそうに顔を出しながら手を振っているセラフィの笑顔によって、『興味』へと変わっていったみたい。


 半ばパレードのように住宅街を抜けると、今度の風景は商業街。

 きれいに整備された通り沿いには、様々な商店が並んでいる。へえ、活気があるわね。

 フェルゼン爺さんの案内通り商業街の裏手に入っていくと、そこは一転して騒然とした雰囲気に変わる。こちらは商店のバックヤードにあたるみたいね。

 煙突からちらほら白い煙が上がっているところをみると、工場みたいな施設もあるのかしら。


「あれが我が商会の倉庫じゃ」

 フェルゼン爺さんが指差した方向には、柵で囲まれた広い敷地内に、漆喰のようなもので固められた大きな建物が立っていたんだ。


「さて、この辺りに降ろしてもらおうかの」

 爺さんの誘導でフェルゼン商会の敷地に入った私達は、薪の降ろし場所を指定してもらう。


 どーしよっかな。

 ダンプアップで落として行ってもいいけれど、この広さならそんなに山積みする必要もないだろうしね。


「この辺りで平らに降ろせばいいですか?」

「おう、明日には仕分けをしてお得意さん達に届けるつもりじゃからの」

 ならばこうしよっと。

 ねえセラフィ、今度はこのコマンドを唱えてくれる?


「わかったよモモちゃん」

 いい子ね。

 

 私はバックで降ろし場所にトレーラーを誘導すると、横に立つセラフィにコマンドを頼む。

 

「それじゃモモちゃんお願い!『台車解放(リリースシャーシ)』!」


 これはいつものヤラセ。

 セラフィのコマンドと同時に私はダンプトレーラーを消してしまう。

 するとあらびっくり。台車が消えた後に残るのは宙に浮いた薪。

 当然薪は自由落下して、その場に収まった。

 

「なんとまあ、豪快なことよ……」


 フェルゼン爺さんも驚くのはやめたみたいね。

 

 死体入りフレコンバッグを吊ったまま、私は『収縮コントラクト』で小さくなり、セラフィに並んだんだ。

 それじゃあ爺さん、運賃の清算ね。

 

「それではセラフィ、運搬料を清算することにしよう。通常ならば馬車一台で金貨二枚の運搬料。しかしセラフィは一度で馬車五台分の薪を運んだのじゃ。さて、セラフィはわしにいくら請求するかな?」


 意地の悪いジジイだ。

 幼い少年にそんな生々しい計算をさせるつもりか?

 

「えーとね……」

 そりゃ困っちゃうよね。

 セラフィが私に耳打ちする。

「金貨二枚でいいのかな」

 だめ。

「それじゃ金貨十枚?」

 だめ。

 

「うーんと」


「セラフィ、フェルゼンさんとセラフィが二人とも幸せになる金額を考えるのですよ」

 そうね。ジョナサンの言う通り。

 それに同業者さんもいることを忘れてはいけないわ。

 

 いつもならフェルゼンさんは運送に金貨十枚が必要だよね。これは馬車五台分の料金よね。

「うん」

 馬車一台分の料金は金貨二枚よね。

「うん」

 私達が金貨二枚で運んだとしたら、フェルゼンさんはいくら得をするかな?

「金貨八枚かな」

 そうね。そしたら、フェルゼンさんが得をした分の半分をいただきましょう。

「半分だと金貨四枚かあ、なら全部で金貨六枚ってこと?」

 その辺が妥当ね。

「そんなに高くていいのかなあ」

 いいのよ。

 だって私達が金貨二枚で仕事を引き受けてしまうと、普段馬車で金貨二枚を稼いでいる人たちの仕事を奪ってしまうでしょ。

「そっか」

 そうよ。はい、今日のお勉強は終わり。それじゃフェルゼン爺さんのところに行っておいで。

 

「フェルゼンさん、金貨六枚でいいかな?」

 セラフィの答えに、フェルゼン爺さんは目じりを下げた。

 どうやら大正解みたいね。

 

「うん、うん、セラフィはよくわかっている子じゃ。これなら協同組合にも安心して紹介できるぞい」


 協同組合?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ