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お仕事引き受けます

「これは驚いた! 一体どれほどの『万元素マテリアニウム』を使用しておるのじゃ、このゴーレムには!」


 岩を砕くときに『巨大化ギガンティック』と称して見せた、私の元々のサイズを見て、お爺さんと兄ちゃんは再びひっくり返りそうになっている。

 

「我らの目的は主の守護(ゆえ)に」

 またおいしいところをジョナサンに持っていかれたわ。

 

「いざというときは我らの体内で主をおみゃもりしゅる……」

 私ったら、また噛んじゃったわ……。

 

「これはすごい! ぜひこれは制作者の方にお会いしたいものです!」

 ありゃ、兄ちゃんも興奮しちゃっているわ。

 ちょっと刺激が強かったかしら。

 

「ねえ坊ちゃん、坊ちゃんのお爺さんをぜひとも紹介してもらえないかな!」

「わしもぜひお会いしたい!」


 これは困った。

 セラフィも二人の勢いにビビりまくっているわね。

 仕方がないわね。行くわよジョナサン。

 

「これ以上主の傷をえぐってくれるな」

 これはジョナサン。

「我らの制作者は既に亡き者でありゅがにゅえに」

 もう噛んでも構わないわ。

 とりあえず架空のお爺さんには死んでもらうことにしたの。


「なんと……」

「それは……」

 

 ここで絶妙にセラフィの嘘泣きが決まる。空恐ろしい子ね。

「モモちゃん!」

 なによジョナサン。

「あなたにはセラフィの涙が嘘泣きに見えるのですか!」


 え?


「みんな死んじゃった……」

 しゃくりあげるセラフィ。


 あれ?

 これってマジ泣き?

 

「セラフィ、つらいことを思い出させてしまい、申し訳ございません」

 ジョナサンも神妙だわ……。

 

 あ……。

 

ごめん、ごめんねセラフィ! 思い出させちゃって! ね、私達がいるから、ね、泣かないで、泣かないで…….


 余りにも無神経だったわ、私達。

 セラフィはつい先日、家族をみんな亡くしてしまったばかりだったのに。

 ごめん、ごめんねセラフィ。


 セラフィは鼻をすする。

「ごめんなさい……」

 両手で涙を拭うと、セラフィは顔をあげた。

 

 沈んだ空気。

 ごめん、謝るから……。

 誰か何とかして……。

 

 でね、こんなときにやはり頼りになるのは年の功でした。

 

「いやすまなかった。セラフィくんと言ったかな。自己紹介がまだじゃったの。わしはフェルゼンと言う。この犬はヴィルトじゃ」


 お爺さんの自己紹介に兄ちゃんも続く。


「私はブラーゼと言います。この先の街で魔術を教えているのですよ」


 よし、頑張れセラフィ!

「ボクの名前はセラフィです。よろしくお願いしましゅ」

 よくできました!

 最後に噛んだのは見逃してあげる!

 

「私達はモモちゃんとジョナサンと申します。先程のご無礼をお詫びいたします」

 また美味しいところをジョナサンに持っていかれましたよ。はい。


「ところでエージェント共よ、貴様らはセラフィくんのお伴といったが、路銀などの扱いも登録されているのか?」

『エージェント共』って、私とジョナサンのことよね。

 するとジョナサンが返事をする。

「それは世界を学ぶ項目の一つであると解釈しております」


 あ、そうか。

 これからは生活費を稼がなきゃならないものね。

 そこまで考えていなかったわ。どーしよ……。


「ならばセラフィくん、ちょっとわしの手伝いをせぬか?」

 手伝い?

 セラフィも首をかしげている。

「なあに、実はわし、商いをやっておってな。ちょうど今、材木の見分けんぶんを終えて、一旦街に馬車を取りに街へ戻るところだったのじゃ」


 へえ。で?

「もしお主のゴーレムを、このまま伐採場まで連れていき、荷物を積んでわしと一緒に街に運んでくれるのならば、正規の馬車代をお主に支払おう」


 あら、お爺さんがセラフィのことを『坊ちゃん』から『お主』と言い換えたわ。

 ちょっと大人っぽいわね。


「モモちゃん、どう思います?」

 そうねジョナサン。でも、どうせ生活費を稼ぐことになるのだから、ここは話に乗ってみましょうよ。

 ね、セラフィ。

「うん。そうだねモモちゃん、ジョナサン。フェルゼンお爺さん、お願いします!」


「よし、それじゃちょっと戻るぞ」


 すると魔法使いの兄ちゃんが口をはさんだ。

「ならば私は先に街に戻って、フェルゼン商会の番頭さんに連絡しておきますね」

 なんだあんたたち、知り合いだったのか。


「よし、決まりじゃ。セラフィよ、ゴーレムを連れてくるがいい」


 同時に踵を返すフェルゼンお爺さん。その後に忠実についていく犬ゴーレムのヴィルト。

 すっかり主導権を握られちゃったね。


「ねえモモちゃん、モモちゃんに乗ってもいい?」

 あ、それがあったね。それじゃあ最後にお爺さんと兄ちゃんを驚かせてやるとしましょうか。


 運転席のドアを開けた私に器用によじ登り、車内に座ったセラフィの姿に、三度みたびお爺さんと兄ちゃんはひっくり返りそうになったんだ。


「まさか本当に体内で守るシステムになっておるとはな……」

「もう、どれだけの万元素マテリアニウムが使用されているのか想像もできません……」


 うん。いい気分。

 それじゃセラフィ、ジョナサン、お爺さんの後を徐行してついていこうね。

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