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夕飯
まあまあ科学の発展した時代。
汽車があって電話があって、車がそこそこ走っている時代。
街から少し離れた丘の上に、ひとつ佇む緑の屋根。そこには魔法使いの先生と、魔女の卵の少女が住んでいた。
「ねえ先生、もし上手くできたらどうする?」
少女が得意げに尋ねた。
「うーん」
先生は少し考えて
「夕飯がうさぎパイになる」
それを聞くと少女は口角を上げ、クールに笑った。
「久しぶりにお肉がいいな」
よし、少女は意気込み、杖をまっすぐ構え、狙いをつけた。
杖の先には、近所に住むよく喋るうさぎが白目を剥いて礎にされていた。
少女が力を込め、杖を振りかぶった。刹那、杖から一本の光がゆらゆらと空へ伸びた。かと思うと、それは次第に勢いをなくして小さく破裂した。
「………先生」
「うん?」
「花火の魔法使いって素敵だと思わない?」
先生は小さなため息をひとつついた。