心の底から湧きあがるもの
そういうと、ケイは少年の目をみつめて、淡々と語り始めた。
「さっきも言った通り、死んだところで全てが終わるわけではない。
魂は生き続けているんだ、永遠にな。わかりやすくいうと、君は
寝ることはあるのか?」
「当たり前だよ。毎日寝てるよ。」
「それと同じだ。死ぬことは寝るようなもんだ。またあたらしい生命と
して、起きる。寿命が尽きれば生命は寝る。それを何十億年もいや、
もっともっと昔から俺たちは繰り返してきたんだ。」
「なんか、おじさん。哲学者みたいだね。それか宗教の人みたい。
とても詐欺師とは思えないよ。」
「一言多いんだよ。おまえは。もちろん前回どのように生きたかなんて
次に生まれた時には記憶にないのが現実だ。一部例外もいるみたいだが
。しかしその時に行った行為というのは記録として残っているわけだ。
悪いことをした人間は、俺もそうなんだが・・。その報いを何らかの
形で受けなくてはいけない。これは厳しい。いい行いをした人間はまた
それなりの報酬はある。君達の世界でいう「神」に「僕はここに
生まれたい」という要望をいうことができるらしい。へんにマゾな奴
は厳しい状況に生まれさせて欲しいというらしい。ほんとに物好きな
奴等だ。俺なんかは悪いことばかりしてたから、どこに生まれるかなど
予想がつかない。ただ動物やましてや植物や微生物に生まれるくらい
なら良しとしないとな。」
「自殺した人間はどうなるの?人間に生まれてこれるの?」
「聞きたいか?」
「えっ?」
「それを本当に聞きたいのかと言ってるんだ。」
「なんで?」
「お前は今少しズルイことを考えている。俺からこの話を聞いて、もし
自殺してロクなところに生まれてこないと思ったら、お前は自殺を
ためらうはずだ。お前はさっきの話を聞いたら死ぬと言ったから教えて
やったんだ。おまえの考えていることなど、簡単に見抜けるぞ。
俺は詐欺師。この世界では、バリバリの営業マンだしな。」
沈黙が流れた。この男の話を聞いて、答えを出そうなんて甘い考えが
通用する相手じゃない。僕は死ぬしかないのか?だが、そう考えれば
考えるほど、ある思いが心の底から溢れてくるのを彼は抑えきれなく
なりつつあった。それは今までにない灼熱のように熱い思いだった。
「僕はやっぱりいきて生きたい!」
心の中に芽生えたこの言葉が大きくなっていくのを彼は感じた。
そして、どうすればいいのか彼は思索してみた。