死んでしまってもいいのかな?
ケイはそういうと、自分のスマホを取り出して、画面に話しかけたかと
思うと、画面を木に向けた。すると、気に様々な形の動く動画が映し
だされた。
「これはプロジェクション・マッピング・・?」
「そう、君達の世界では、比較的大きい機械でやっていることだが、
この世界のスマホは、ある程度の大きさならこのようなことができる。
映画だって、これを使えばかなりの大きい画面でみれる。また、この
スマホはほとんど声だけで、操作ができる。君達の世界でいうsiriとか
いうものの、進化版というところだな。」
「すごいな~。こういうものってどんどん進歩していくんだね」
(おいおい、コイツの顔つきなんか輝いてきたぞ)
「何かほかにもないの?まだ見たいな~」
「やめた!」
そういうとケイはスマホを自分のポケットに入れた。
「おまえは、これを見たら死ぬといったから見せてやったんだ!
おれはお前が死ねば、ちょうど100人のノルマ達成!無事人間として
生まれることができるんだ。ガキのくせに大人をおちょくってんじゃ
ねえ。」
ケイは怒りがこみあげて、激しい罵声を少年に浴びせた。
その姿をみて、少年は今まで思っていたことが、変わりつつあるのを
感じた。(このまま死んでいいのかな?なんか死んだところで、人間
に生まれる可能性もないし、ずっとこの場所でフラフラしてるのも厭
だし・・・。僕は・・・・・・・・・)
「ところで、おじさん。おじさんはなんで自殺なんかしたの?そんな
に元気がいいのに」
「は?」
「だって、自殺する人は、たいてい僕じゃないけど落ち込んで、もう
生きているのがやだ!って人がするものなのに、おじさんからはそれが
感じられないんだよね。なんかよくわからないけど・・。」
「そんなこと聞いてどうするんだ?」
「いや、ただ聴きたかっただけ」
「そんなことどうでもいいだろう。というところだが、しょうがない
話してやろう。実は俺は、死ぬ前は詐欺師だったんだ。君も聞いたこと
があるだろう。振り込み詐欺とかオレオレ詐欺とか。あれの走りだ。
あの時の俺は、世の馬鹿な連中をだましてはその金を、遊びや投機に
使って結構いい御身分だったんだ。」
「おじさん、悪い人だったんだね。」
「やかましい。そんなことはいいんだ。そんな遊び呆けているところで
俺達の上の組織に収める金をすっかり忘れていた。1回、2回は大目に
見てくれたんだが、さすがに堪忍袋の緒が切れたのか、事務所に乗り
込んでくるという情報が入った。そこで俺は一計を案じた。俺は責任
を感じて自殺したことにすればいい。事務所でやるのはそのまま沈め
られる可能性もあるので、この名所でやるという設定にして、ここで
自殺をしたふりをすることにしたんだが、俺も馬鹿だった。首つりの
演技をしようと思って、部下に手伝ってもらったのだが、その部下が
下手を打ってしっかりロープがしまるようにセッティングしやがった。
こっちは手品のロープではないがしまらないようにセッティングすれ
と指示したのにだ。上の連中が俺たちを追いかけて、ここへ来たと
聞いて演技を開始した。そしたらがっちり閉まりやがる・・・。
俺このまま死ぬのか!馬鹿やろ!助けにこいよ!という思っても声も
出ない。部下は逃げて、近くにいなかった。そのまま首が閉まって
死んじまったわけだ。俺の遺体は組織の奴らが持って行って処分した
みたいだな・・。さすがに死んだときは俺も落ち込んだな・・。
もっと遊びたかったし、金も使いたかったし、悔いだらけよ・・。
その時、後ろから肩をたたくやつがいて、誰かと思ったら、ニヤニヤ
して俺にいいやがった「自殺おめでとうございます」とな。
俺は殴りかかったが、霊だけにパンチがすり抜ける。俺は死んだのか?
とその時改めて思ったな。」
「自殺おめでとうございますって・・。ひどい人だよね。」
「そう思うだろ。まあ人ではないがな。」
「それで、なんで今の仕事についたの?」
「その時、その男がこういうだよ。「君は普通の自殺者とは違って、
元気がいいね」というから、赫赫云云と今までの話をしてやった。
時間だけは腐るほどあるからな。一通り話をしたところで、その男が
言うんだ「君位勢いのある人間なら、私の仕事を一緒にやってみる?」
というから「俺はどんな仕事でもこなすぜ」と言ってやった。そして
その男が紹介してくれたのが、自殺ホールディングス。今の会社という
わけだ。そこの社長というのに面接うけて、ノルマも聞いて無事合格。
俺を誘った男は、ノルマを達成して人間として外国にうまれたらしい。
社長の話では、今度は日本以外の国に生まれたいといったみたいだな。
俺も、ノルマを達成したら日本以外と考えている。たとえば中国とか
インドとかお金がどんどん動きそうなところでこそ、俺の才能も発揮
できるというもんだ。」
「生まれ変わったら記憶は亡くなるから、そんなこと考えても意味は
ないような気がするんだけど・・。」
そう少年がいうと、ケイは首を横に振った。
「それは君は勘違いしている。正確にいうと俺もここへきてわかった」