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自殺名所の営業マン(霊)??  作者: 井戸端 礼
2/10

君は死にたいんだろう?

その男は少年に聞かれて答えた。

「私は、自殺ホールディングで営業マンをしているケイというもの。

君が自殺をしたがっているようだから、ギャラリーをしていたんだが、

どうも煮え切らないようなので、こうして出てきた次第ということさ」

ケイは微笑みながら話してきた。

「僕だって、その気だったさ・・・。本当は今日一緒に死のうと言って

た人が来なくて、待ってたんだけどさ・・。」

そう少年が言うと一言ケイがいった。

「彼なら来ない」

自信を持って話すのものだから少年は驚いた。

「どういうこと?なんで言い切れるんだよ。」

「それは・・・。」

というと一呼吸をおいてから彼は言った。

「そもそも君がチャットした相手というのは、何を隠そうこの俺だから

さ。」

「????」少年は意味が理解できないらしい。

「驚いたようだな。今の時代は便利だよな。SNSというものがあって

そこから、いろんな奴とコミュニケーションが取れる。俺としては

昔より営業がしやすくなったってもんだ。」

「幽霊がチャットなんてできるの?」

「簡単さ。あちらの世界にも、スマホが存在してて、しかもこちらの

世界より性能が進んでいるんだ。我々の世界のスマホからすれば、

君たちの世界のスマホは10年は遅れている。」

「嘘でしょ?幽霊がそんなもの持っているなんて聞いたことない。」

「当たり前だろ?知ってるほうが怖いわ。営業で自殺サイトを見ていた

ら、君の文章を見つけてな。これはいいカモだと思ってここまで誘導

したということだ。君のいじめられた内容は全てチェック済み。まあ

よくあるパターンだ。このままあの世へ一直線!てなわけだから。

さあ、見ててやるから早く首吊ってくれ。こっちの世界はいいぞ~。」

そう言われると、少年は何故かすぐに死ぬのが嫌になってきた。

「わかったよ。せっかくだから、その自殺の営業マンってなんなのか

教えてよ。興味があるから。それから実行するよ。」

「何言ってんだ、君は?どうせ死ぬんだから、聞いたって無駄だろう。

俺は、他にもアポを取っていてその準備をしなきゃいけないんだ。

そんな時間はない。」

「そんなこと言わないで教えてよ~。減るもんじゃないでしょ。」

「減りはしないが、時間の無駄だっていってんるんだけど・・。

しょうがない。少しだけ教えてやるから、そこの木にでもよしかかって

聞いてなさい。」

「は~い」といって、自殺する予定の木を背もたれのようにして、彼の

話を聞くことにした。

「それでは、簡単に話すから、聞き流してくれ。まず質問するけど、

自殺の名所って聞いたことあるだろ?例えばT○坊とかT●団地など」

「うん、聞いたことある。ここも有名だよね。」

「そう、そういうところには、必ず私のような自殺を促す営業霊が、

何十人といて、全国で営業をかけているというわけだ。ここはちなみ

に自殺ホールディングA樹林支社だ。俺はこの支社では、トップクラス

のセールス霊といったところだな。ただ最近は、ここはともかく、他の

名所は大変らしいな。いくらそこまでいっても自殺を邪魔するオジサン

がいたり、鉄柵などで自殺できないようにしたりして大変だと聞いてる

。基本営業はその場所でやるのが大原則だから、廃業した営業霊も、

少なくない。」

「廃業?廃業したらどうなるの?」

「申請手続きして、転生するんだ。」

「転生って生まれ変わることだよね?その方がいいのに、なんで営業

なんてしなきゃいけないの?」

「そこが、ちゃんと仕掛けがある。転生といっても人間には生まれ変わ

れない。自殺者は一度死ぬと人間に生まれ変わるにはかなり高い、

ハードルを越えなくてはいけないんだ。廃業した人間は、よくて、昆虫

や、小動物。状況によっては微生物になる。というかその可能性の方が

高い。」

「なんで?」

「君に理解できるかわからんが、この星には「生命」が満ち溢れていて

今生きている動物の何十倍、何百倍の命がこの地球を覆っているんだ。

当然、競争率は激しい。昆虫や野生動物も今は減ってきているから、

そこに入るのも非常に激しい戦いとなるわけだ。増してや人間なんて

増えているとはいえ、たかだか60億位だろう?なりたくたってなれない

。ある意味宝くじに当たったようなもんだ。」

「人間になるってそんなに難しいの?」

「中学生の君には難しい話かもしれんが、生命というのはそもそも、

自分で殺したり、傷つけたりするもんじゃない。死んだら終わりなんて

ことはないんだ。俺も死んでわかったんだがな。続きがあるんだよ。

生命はその人間なり、動物なり天命を全うするという暗黙のルールが

ある。それは生まれて来る時に、君たちの世界でいう神と約束している

んだが、俺も死んでから思い出した。やばい、このままじゃ俺、次は

人間になれないと思っていた時に、この会社のことを知って、この

会社のノルマを達成すれば人間に生まれてくることができると聞いて、

今は営業に励んであと一人というところまできたわけだ。」

というとケイは少年の顔をニヤニヤしながら見つめた。

「ほら、話したことだし、早く死になさい。朝になったら、その気持

が薄くなるから。約束しただろうが・・。」

彼の口調が変わった。すこし脅しが入っているような・・。

「うん、そうだね。話聞いたし、もうやろうかな?」と思った時、

「そういえば、さっきそっちの世界のスマホって、10年は進んでいる

と言っていたけど、どんな感じなの?僕、情報機器とか好きなんだよ」

「はあ~。」呆れたようにいうケイ。

「今更そんなものみてどうするんだ?どうせ死ぬんだから、その時に

いくらでも見れるだろうが。」

「お願い!それを見たら今度こそ、実行するから・・」

彼は真剣に懇願してくるので、しょうがないかとばかりにケイは、


「じゃあ、冥土の土産に見せてやるとするか・・・。」

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