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08.打開策

グレイスは焦り始めていた。


美術鑑賞という楽しみを見出したのはいいものの、肝心のいい人探しが全く上手くいかないのだ。

グレイスの社交性は少しづつ改善されている。しかしその速度はかなり遅かった。

このままでは万が一誰かと結婚に漕ぎつけたとしても、その時はおばあちゃんになっているだろう。

ウィリアムとシャーロットをそんなに待たせてはおけない。

自分の事でまだ手一杯で、相手を好きになれそうかどうかの見極めも出来ない。

手応えがあるわけがなかった。


自分が社交場にでていったからといって相手が見つかるなどとは到底考えてはいなかったが、

こうも現実として突き付けられるとやはり落ち込んでしまう。

‘探さなかったから見つからない’と‘探してみたのに見つからない’とでは大きく違う。


シャーロットの非凡さも改めて思い知った。

容姿が群を抜いて優れているのはもちろんなのだが、表情や仕草、話し方も魅力的なのである。

彼女は咲き誇る花だ。美しさと香りに誘われて人が寄ってくる。傍に居たいと思わせる。

この光景は前にも見たことがあった。メアリーお姉様だ。

メアリーお姉様とシャーロットの二人とグレイス。

同じ姉妹なのにこの実力の差は何なのだろう。




『グレイスの分を、二人が貰ったのかもしれないねぇ』


子供の頃、大好きな祖母が笑いながら言った言葉を思い返す。歯に衣着せない女性だった。

メアリーとシャーロットの二人と自分とは、なんで可愛さが違うのかと尋ねた時だ。

ひどい言われようだと思うよりも、そうなのかぁと妙に納得してしまったのを覚えている。

「二人にあげることができて良かったわ」と想った事を素直に伝えると、祖母は頭を撫でてくれた。

「グレイスなら大丈夫だね。きっと何かお返しをしてもらえるよ」



あの時と変わらず、素晴らしい姉と妹がいて良かったとずっと思っている。傍にいるだけでも幸せになれるのだから。


今はメアリーかシャーロットのように可愛ければ良かったなぁとも少し感じていた。他人が苦手だとしても、何も言えず固まっていたとしても、二人だったら人はよってくるのだろうから。


あぁそんな事を考えても仕方がない。と元の自分に戻る。



とにかくこのままでは埒が明かない。


やっぱり結婚なんて無理だ。

自分は独り身で構わない。グレイスは今のままで充分幸せなのだ。

でも妹はなぜか放っておいてくれない。どうすればシャーロットを納得させられるだろう。


何かいい打開策はないかと考えた。


どうやらシャーロットは私に想い合う相手がいない事をとても心配しているようだ。それならばとりあえず恋人ができればいいのではないだろうか?結婚は現実的に考えると道のりが遠過ぎる。そんな大それたことを目指している場合ではない。恋人くらいなら誰かに必死で頼めば‘ふり’をしてもらえるかもしれない。相手ができれば私にも恋愛能力があると安心してもらえるのではないか。そうしたら安心して先にお嫁に行ってくれるかもしれない。

ほとぼりが冷めたら‘ふり’をしてくれた人にお礼をして一人の生活に戻ればいいんだわ!


行き詰った結婚相手探しに疲れてきっていたグレイスは半ばやけっぱちになっていた。

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