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04.実行する妹

ある穏やかな日の午後のことだった。


グレイスは自室で読書をしていた。

ふと喉が渇いたので、顔を上げてお茶を淹れてもらおうと侍女のリラを探した。

だがリラが見あたらない。

リラはグレイス付きの侍女だった。

彼女とは長い付き合いでグレイスのことを熟知しているので

指示をしなくてもグレイス好みのお茶を淹れてくれる。

出来ればリラに頼みたかった。でも見つからない。

仕方がないので他のメイドにやってもらう。


しばらくしてグレイスは自分には少し熱過ぎるお茶を飲みながらリラはどこに行ったのか考えていた。

リラはよく気がつくしっかり者だ。

居て欲しい時にそっと傍に来てくれる。私の助けになってくれる。

探しても見つからないとは珍しい。

何かあったのかとグレイスが心配しかけた時だった。


リラが部屋に入ってきた。


「グレイスお嬢様。シャーロットお嬢様がお呼びです」



◇◇◇



妹の部屋に着くと着飾った妹が迎えてくれた。


「あら、貴方今日も出掛けるのね」


華やかなドレス姿からすると夜会にでも行くのだろう。

また何か結婚準備の手伝いの為に呼ばれたと思っていた私は少しがっかりした。


「そうなの。さぁお姉様も支度しましょう」

「支度?私が?」

「そうよ。グレイスお姉様」

「何の?」

「夜会の支度をするのよ」


その言葉がまるで合図だったかのように周りにいた侍女達が一斉に動き出した。リラは私を部屋の奥の鏡の前へ誘導する。

訳が分からずオロオロしていると、リラが「失礼します」と私の服を勝手に脱がし始めた。


「え!?ちょ・・・ちょっと。リラ。ななな何をしているの!?」


「着替えて頂きます」と言いながらテキパキと私を下着姿にする。


「え?着替え?何で?」


気がつけばコルセットを持ったデイジーが傍で待ち構えていた。

コルセットなんて見るのも久しぶりだった。


「どどどうしてコルセットが要るの?これは一体何なの?」


思ってもみない状況にシャーロットを問いただす。


「これに着替えてもらおうと思って」


妹が指差した先にはドレスがあった。


「あんまり派手な形はお姉様の趣味じゃないと思ってシンプルにしたわ。

今夜の夜会は大袈裟なものでもないから、これくらいがちょうどいいし」


「や・・・夜会?」


先程耳にした単語は残念ながら聞き間違いではなかったようだ。


そうしてる間にも侍女達の手は私に伸びてくる。

見たことない新しい下着を着せコルセットを取りつけていく。

抵抗してみるのだが上手にかわされて儘ならない。


これが夜会の支度ということは、ひょっとして・・・つまり・・・


「私がこれから夜会に行くってことっ!?」


思わず叫んでいた。


「あら、ちゃんと言ったでしょう?

 お姉様には素敵な方を見つけて結婚して頂きます。

 それにはまず出会いよ。出会い。

 大丈夫よ、一人では行かせないから。私も一緒に出席します。

 とりあえず大人しく着替えてくださいな。それなりの格好というものがあるでしょう?」

 

妹は今までに見たことのない種類の笑顔でそう言った。

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