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最後

気付けば苦手だったフーセンガムも、かつて少女が膨らませていたよりずっと上手く膨らませられるようになり、僕の背も大分伸びた。

僕がいつものように、河川敷に仰向けになりながらフーセンガムを膨らませていると、スッと僕の視界を影が覆った。


「……」


……?


目の前に立つ女の子は、うちの学校の制服を着ていた。

見たことない顔なところを見ると、新入生だろうか?

ガムを膨らませたままでは失礼と思い、僕はガムを口に戻す。

女の子は何か言いたげにこちらを見ているが、残念ながら僕に言えることは無く。


……誰、ですか?


僕の返答に、女の子は呆気に取られた表情で固まる。

そんなに変な事を言っただろうか?と首を傾げた僕の視線、斜め下の辺りに見たことのある猫の姿。


「……せっかく会いに来てやったっていうのに……!」


僕の大好きな猫みたいな声が、目の前の女の子から発せられて、それに合わせて猫が飛び上がった。

そんな猫を僕は胸で受け止めて、河川敷の上に転がる。

久しぶりの再会に、ゴロゴロと喉を鳴らす猫を撫でながら女の子……いや、少女を見上げる。

もう少し年下と思っていたが、まさか先輩後輩ぐらいしか歳の差が無いとは。


「……遅くなってゴメン」


少ししおらしい表情の少女もまた可愛くて、そのままにしておこうかと思ったが、流石に可愛そうなので僕は笑いながら


別に?一年ちょっとぐらいさ


とだけ返した。

少女が今まで何をしていたかとか、そういうのが気にならないわけではないが、今は会えた事がただ嬉しい。


ガム、膨らませるの上手くなったんだよ


「……そっか」


食べる?ガム


「……うん、貰う」


猫耳を外した少女はなんだか恥ずかしそうで、正直僕的にはあのパーカーの方が恥ずかしいと思うのだが。

二人でガムをはむはむとして、ぷくーっと膨らませる。

猫がそんな僕らを、遠目に見て「ニャー」と鳴いた。


「……あ」



少女が口にしていたガムが、ぽろりと下に落ちる。

どうやら少女の方は大分ガムとご無沙汰の生活をしていたと見える、力加減を間違えたのだろう。

僕がポケットに手を入れようとしたが、少女はそれを無視して


「ガム、貰うね」


と言って、顔を近づけてきた。

フーセンガムの甘い味が、口に広がる。

僕のものだったフーセンガムをはもはもしながら、少女がこちらを向く。

ほんのり染まった頬が、さらに愛らしさを加速させる。


「……今年からよろしく、先輩」


うむ、任せろ後輩


僕も少女もしばらく空を見つめていたが、だんだん僕も口が寂しくなってきたので、ガムを貰う事にする。

そんな僕らを見かねてか、猫は「ニャウニャウ」と呆れたような声を出して去って行った。


これが僕と少女のなんてことはない再会。

今年からは、学校が楽しくなりそうだ。

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