6話
案の定翌日は大雨で、学校へ行くのに親が送ってくれた。
ルートが違うので、あの河川敷の様子を確認することは出来なかったが、この雨を見るに何ともないとは思えない。
その事がずっと気がかりで授業など耳に入ってくるわけもなく、電車通学の学生を考慮して午前で授業を打ち切るという教師の宣言だけは聞き取れた。
皆が各々の手段で親と連絡を取る中、僕は雨の中を走り出した。
こんな雨の中を出歩くのは、バカのする事だ。
これで徒労に終われば、本当のバカだが……徒労であって欲しい。
うっ……!?
ドンッと胸に強い衝撃受け、僕は尻餅を付く。
服が派手に濡れてしまったが、今はもう気になるレベルではない。
「ご、ごめんなさ……って、あんた!」
雨音の中で聞こえた、聞きなれた声。
びしょびしょに濡れてしまったパーカーは、猫耳が萎れてまるで元気の無い猫の様だ
「なんでこんな所に……じゃない、急がないと!」
走り出そうとする少女の腕を、僕はガッと掴み制する。
少女が行こうとする先は、分かっていた。
分かっていたからこそ、僕は止めようと腕を掴んだのだ。
「離せっ!」
ガリッと少女の爪が僕の手に食い込み、赤いラインを作る。
だが今日の僕はこれで怯むわけにはいかない。
あの子が心配なら、僕が行ってくる!キミは家に帰るんだ!
こんな大きな声、他人に向けて初めて出したかもしれない。
それほどまでに大きな声が、僕の口から発されていた。
「……っ」
僕の剣幕に少女がわずかにたじろいだが、すぐにキッと僕を睨み付けなおも暴れようとする。
どうやら説得は無理らしい、ならば選択肢は一つだ。
掴んでいた腕を緩め少女を解放すると
危なくなったら逃げるんだよ?
そう言って、少女と一緒に走り出した。
返答は聞かなかったが、きっとこの子なら分かってくれているだろう。
河川敷は大分河に侵攻されていたが、まだ何とか通ることは可能なレベルであり、猫がいたとしてもおかしくない。
少女が臆することなく河川敷を降りていったので、僕も少し遅れて少女を追う。