表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

1話

「ニャー」


「にゃーにゃー」


どこからか猫の声と、猫を真似た人の声がした。

河川敷の下、声のした方を覗き込んでみるが誰もいない。

ここの河川敷には大きな水道橋があり、死角はいくらでもある。

わざわざ河川敷を降りてまで声の主を探しているのは、僕が猫好きという事もあるし……


「にゃーにゃっ……」


先程の声が、僕の好みにどストライクだったのもある。


「……もしゃもしゃ」


機嫌、直してもらえたかな……?


正座した僕の膝の上で猫が丸くなり、その猫の喉をゴロゴロと触る少女という不思議な構図。

少女は懐から取り出したフーセンガムを口の中でもしゃもしゃさせている。

どうやら、完全にご機嫌ナナメらしい。


「んーっ……」


少女が小さな体を大きく逸らせて口に力を込めると、ぷくーっとピンク色の球体が膨らんだ。

そのままの体勢でしばらく少女は固まっていたが、パンッと球体が弾けると同時にこちらを向いた。

口元に付いたガムをペロペロと舐めて口に戻し、再びそれを咀嚼しながら


「……あんた、誰?」


と、先程聞いた僕好みの声で尋ねてきた。

とりあえず僕は自分の通う学校と自分の名前少女に答えると、膝を崩して尻餅を付く。

猫が抗議のようにフニャーと鳴いて飛びき、そのまま少女の隣にぴょこんと着地した。

少女は「ふぅん」とあまり興味なさ気に呟くと、僕の鼻先まで顔を近づける。

思わずドキドキしてしまう僕。


「ここで見たこと、忘れろ」


鼻先まで近づいた顔が離れると同時に少女の手が伸びてきて、完全に不意を突かれた僕の顔を少女の爪が掠める。

すんでの所で躱せたか、と思った矢先に少女の隣の猫がコンビネーションアタックと言わんばかりに飛び上がり、僕の顔に一文字を作る。


い、いててっ!?


顔の痛みに思わず手を当てると、微かに血が滲んでいた。

いくらなんでもこの仕打ちは無いのではないか、と今度はこちらから抗議しようと顔を上げると


……あれ?


少女の姿も、猫の姿も無くなっていた。

まるで狐に……いや、猫に摘ままれたような顔で僕は茫然としていたが、ぴゅーっと一陣の風が吹いた所で平静を取り戻し


……帰ろう


と誰に言うでも無く呟くと、帰路に付いた。

それが僕と少女の、いいとも悪いとも言えないファーストコンタクト。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ