beginning take 5
「何かの節で情緒不安定になると、瞳が紫色になるみたいなの。何度かこういう情緒不安定な彼女は見てるから、その度にね、紫色に。」
気持ちの昂りや、強い憤り、深い悲しみ、そして耐えられない程の恐怖…
ポーラ自信が今まで見て感じてきた色々な経験は簡単には表されない位の相当なもの…
正直想像が出来なかったんだ。
確かに俺は、母親に半ば強引に孤児院に預けられた。その時母親が残していった言葉は一生忘れないだろう…
けど、それがトラウマになったことはないし、今さら母親は恨んでないしね。そりゃガキの頃は親を恨んださ、しかし時がその恨みを忘れさせてくれたんだ。
色々な人と出会い、色々よくしてもらったし、その人となりの人生を知り、今の自分のやりたいことを見つけ、それをやらせてもらっている。だから自分は不幸な奴だと思ったことは全くないんだ。
だけど、ポーラ自身は今は幸せなのか?
それは絶対ないだろうな。何かに怯えながら生きていく、その恐怖で取り乱してしまう。
けど、ポーラを助けてあげないと…
それは自然にそう思ったんだ。この先ずっと恐怖に怯えながら生きていくのは絶対出来ないことだし、彼女には他の何かを見てもらいたいんだ。今を楽しめる何かを…
自分みたいなのでも今を楽しめてるし、彼女だってそれが出来るだろうし、それをしては行けないって事はないだろうしね。
アニカ、少しの間だけさ、俺に彼女の事任してくれない?
アニカはただ首を縦に降ってくれた。