愛原視点【2】
-四月八日 U学園中学校 二年D組 教室 始業式から数時間後-
ハズレ・・・担任発表の時からそう思っていた。この担任は「ハズレ」だと。
直樹の予想通り女性であることはあるのだが、どこか挙動不審で、何かに怯えているみたいで正直これが「教師」だとは思えなかった。
直樹もがっかりした様子であった。
「そ・・・それでは・・・しゅ・・・出席を取ります・・・!」
怯えた声で、ある一点を見つめながら、鶴瀬先生はそうつぶやいた。
「あ・・・・愛原・・・君」
「はい」
俺は愛想悪く、でも少し大きめに返事をした。
正直この担任と「お近づき」にはなりたくなかった。
相変わらず鶴瀬先生はある一点を見つめている
「あ・・ああかくら・・赤倉・・・くん」
「はーい」と、直樹はいかにもつまらなそうに返事をした。
そのあとも、淡々と、怯えながら出席を取っていった鶴瀬先生だが、ある生徒のところで急に声が止まった。
「っ・・・っ・・・・っ・・・・・っ・・・・・・・」
声にならないような声で、俺には泣いているようにも聞こえた。
「き・・・桐生・・・く・・ん・・・」
以前にも増してか細い声で彼女はそう言った。
「はい!先生。一年間よろしくおねがいします♪」
桐生は満面の笑顔で担任の出席に答えた。
その反対に鶴瀬先生の顔はみるみるうちにひきつっていった。
桐生 春哉という人間を、俺はよく知らなかったが、ここまで教師に対して愛想良くしていたのは初めてであった。
桐生は、何かを企んだ子供のような目で笑っていた。
その時、急に鶴瀬 由利は悲鳴をあげ教壇の上に倒れた。