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限界  作者: りらいず
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堂満視点【1】

-四月八日 U学園中学校 始業式-


 午前八時・・・そろそろ始業式の前の職員会議が始まる時間だ。しかし、二年D組の担任であるはずの由利(ゆり)はまだ来ない。

 「由利のことだから、まさか遅刻・・・なわけないですよねぇ」私はこんな冗談を交えて二年B組の担任。塚木(つかき)先生と話をしていた。

 「おや・・・そうか、新任の鶴瀬 由利先生と堂満先生は同じ大学出身でしたな」とくに由利を心配するわけでもなく塚木先生はそう答えた。

「はい、私が一年上なんです。よく『麻衣さん!一緒にお昼食べに行きましょうよ!』なんて誘われたものです」独り言のようでそうでないような返事を私はした。

「へぇ・・・」大学時代の話に興味が無いのか、塚木先生はそこで会話を中座した。

 「でも初日で遅刻なんて、教師としての意志がまだ足りないんじゃなくて?」塚木先生の代わりにA組の担任。古井(ふるい)先生が話に参加してきた。「いつもは真面目な子なんですけどねぇ」と私は一応由利を庇うことにした。「『いつも』がそうでもねぇ・・・」と古井先生はぶつぶつ言いながら自分の席に戻っていった。私は昔からこういうねちねち人をいたぶるようなタイプのオバサン教師が嫌いだったので、私もそっけなく「そうですね・・・」と返した。

 「え~・・教師一同!桜が咲く季節となりましたが・・・」と、そこに校長先生が教師達に話しかけた。職員会議開始の合図だ。

「え~ともかくですね。今日は始業式です・・・生徒達の・・・・・」

「お・・・遅れてスミマセン!」校長の話を遮るように、由利が職員室のドアを開けたのはその時だった。

 「え・・・な・・・何をやっておるのだね!」突然の話の中断に慌てて教頭は声を荒げた。

「すすす・・・スミマセン・・・路に迷ってるおばあさんを助けていたら・・・」

 なんて馬鹿げた言い訳だろう。由利が答えた言葉に私・・・いや教師全員がそう思っただろう。

しかし校長は「そうかそうか。大変だったねぇ」とあっさり遅刻理由を受け止めた。

これも教師全員が想定内であった。この校長は純粋というか、人(主に生徒)を信じて止まないというか・・・とにかくそんな校長であった

 由利も由利で「あはは・・・すんません」と心のない謝罪をしながら教師の席の間をくぐって私の隣りの席に座った。校長が私達が大学時代の友達と聞いて「なら席は隣の方がいいね」と気を利かせてくれたのだった。

「なんで遅刻したの!」校長が話を再開したとき私は由利に尋ねた。

  なんて言ったと思うだろうか?

「えへへ・・・寝坊」

 なんとまあ・・・あきれた後輩だ。私は少し由利に失望したが、寝坊なんて良くあること。現に私だって遅刻をしたことが無いわけではない。これから気をつければいいものだ。

由利は校長が話をしているにも関わらず、ある一枚のプリントをじっと見つめていた。由利が担当する二年D組の出席簿だ。その顔はどこかにやけていた。


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