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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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5話

*不審者が出てきます。

苦手な方はご注意ください。

 私は後退りするも、トンと壁に背が当たる。


「糸谷、ほら……」

思わずぎゅっと目を瞑る。




 すぐそこに先生がいる気配がする。なんなら荒い息遣いも――


「――はあはぁ、べろん」


「ひぃあ!!!」


「ぶふっ!くく……!」


唐突に顔を舐められて驚いて目を開けるとそこには――


「は?モップ?」


「残念!わんこでした!」


 悪魔がとても良い顔で持っていたのは、毛むくじゃらの犬でした。


「このこさ、たまに家族から預かってんの。犬平気?」


わんこは先生にとても懐いて顔をベロベロ舐めている。


「犬飼ったことはないけど、たぶん、大丈夫です」


「なら良かった。時々預かるから、こいつの世話もよろしく」


「……お世話のしかた教えてくださいよ」


「もちろん、手取り足取りな」

いい笑顔で悪魔が言う。


「あっ、やっぱり最初は自分で調べてきます」


「ふうん、残念だなあ。じゃあ今日はわんこもいるし。俺の健康のために散歩にしようか」


先生は散歩の準備を始めた。私は慌ててわんこの散歩の準備をメモに書き取る。

ふと先生が私のペンに目を止めた。


「それって、昔流行ってたやつだよね。まだ持ってたの」


「これですか?昔、一緒に遊んだ友達がくれたんです。書けなくなっても、芯を取り替えたりして、ずっと使ってるんですよ」


「そうなんだ」


「古臭いの持ってるってたまに言われますけど、あの頃の楽しい思い出を残してるのってエモくないですか?それとも変――」


「変じゃないよ!」


先生が食いぎみに言ってきたので、私は少し呆気に取られた。


「そ、そうですか。それなら、変じゃないんですね!……先生、声が大きいです」


 珍しく先生が大きな声を出したから、いつもの仕返しとばかりに先生の口許に――

「しーっ」静かにと人差し指を立てるジェスチャーをした。

すると、先生は顔を真っ赤にして後ずさった。


「な、なんなの糸谷、お前さ、不用意に近付くなよ!」


「あ、無用心でした」

先生からそそくさと離れる。


「違っ!……はぁ……まあ、糸谷は色々警戒心持っておいた方が丁度良いかもな」


くるりと背中を向け、犬の散歩の準備を再開した。


「なんなの?あの溜め息は?」


変な態度の先生に疑問は残ったけど、メモを取るのに集中した。




「先生、今日は良い天気ですね……って、メガネはともかく何でフード被ってるんですか?」


「俺、眩しいの苦手……」


「不健康ですよ。それに、暖かい陽気なのに、何だか不審者ぽいです。帽子被ればいいのでは?」


「ああ、その手があったか。じゃあ、わんこの散歩終わったら、買いに行こうな」

先生はそう言って、私にわんこのリードを渡してきた。


「え、散歩終わったら買いにですか。って、このリードは……」


「俺ベンチで休憩してるから、その辺りをわんこの散歩させてきて。ふぁ~よろしく」

先生は、欠伸をしながら人けのないベンチで横になってしまった。


「人が増えてきたら起こして。うるさいの苦手なの」


 手をひらひらと、しっしっと追い払うようにされたので、諦めてわんことその辺りをウロウロする事にした。


「うーん、私の格好浮いてるよね」


犬の散歩で、スーツとパンプスで歩いてる人なんていない。

わんこは、私の横をスタスタと歩いてくれる。


「ふふ、わんこは可愛くて賢いね」


犬の散歩は初めてだけど、息抜きにはちょうど良いのかもしれない……仕事だけど。

ベンチを見ると、先生はまだ横になっている。


「もう少し、回ろうか」

わんこにそう言って噴水の方に歩いていく。


もう冬が近いけど、今日は暑いくらいの陽気だ。

噴水で涼んでいると、声をかけられた。


「こんにちは、可愛いわんちゃんですね」


振り向くと、人の良さそうなおじさんが小さい犬を連れていた。


「あ、こんにちは。このこは知り合いのお家のこでして、犬のお散歩は初めてなんです」


「お姉さん、初めてかあ。何か困ったこととかない?おじさんが、教えてあげようか?」


 そう言って、おじさんは近寄ってきた。


「あの、小さいわんちゃんですね」


「ああ、頭を撫でてあげると、うちの子は喜ぶんだよ」


 おじさんは、私の背中に手を当てて、前に押し出すように勧めてきた。

そこで、私は屈んで撫でさせてもらった。


「大人しいわんちゃんですね」


 ふと見ると、おじさんはいつの間にか私の後ろに立っている。


「わ、ビックリした、いないのかと……」


「あはは、ごめんね。お姉さんの後ろ姿が可愛いからさ。何歳?」


――なんだか、気持ち悪い。

頭の中で、けたたましく警報が鳴っている。

慌てて立ち上がり、スカートの裾を直す。


「あ、そろそろ知り合いのところに戻らないと」


「お姉さん、足疲れたでしょ。散歩は歩きやすい靴とかの方がいいよ。おじさんが教えてあげるから、ベンチで休まない?」

にやにや笑いながら、私の腰に手を回し撫でてきた。


カアッと、頭に血が昇る。


「あ!お巡りさん!!あそこに犬を連れてる不審者がいます!!」


 どこからか、大声が聞こえた。


「はあ!?誰が――!!お姉さん、また今度ね」


 そう言って、おじさんは犬を抱えて走って慌てて逃げていく。


「う……気持ち悪い」

吐き気を抑えて、声のした方を見た。


先生がこっちに猛ダッシュで走ってきた。


「……はっ……はあっ、はー……おい、さくら、さくら?……おえ……」


 猛ダッシュはいいけど、先生は走り過ぎてえづいてる。


「……さくら!!大丈夫!?じゃないか!?気持ち悪い?」


「せんせい~~……!!」


「わっ!ちょっ、お前…………はあ、よしよし……とりあえず日陰で休もう」


 先生は泣きべそかいている私を木陰のベンチに連れていってくれた。


「うっ、うう~……」


「怖かったよな、ごめんな一人にさせて」


 先生は頭を撫でて、慰めてくれる。背中をさすってくれようとしたのは、気配で察したけど。

背中は、さっきの変態のせいで、私が嫌がると思って頭を撫でてくれてるらしい。


「泣き止んだか?」


「うう、ずみまぜん」


「ここ、犬連れた変態が出るって言うの忘れてた。俺の落ち度だ」


「いえ、私が警戒しなかったのが……」


「さくらは悪くない。落ち着いたなら、俺の家に戻ろう。ほら、立てるか?」


 先生は優しく手を差し伸べてくれた。


「さて、買い物は後日にしよう。さくら、今日はもう家に帰るか?」


「ええと、そう、ですね」


「俺の仕事の事なら大丈夫だ。嫌なら断っていいからな」


「そんなわけには!」


「でも、俺はさくらに、男女の恋愛ロールプレイングを頼もうとしてたんだ。今日はあの変態オッサンで怖い思いをしただろ……」


先生は、ふと考えるように言葉を切った。


「……それとも、俺が相手なら平気なのか?」

真剣な顔で尋ねてきた。


5話です。

読んで頂きありがとうございます!

応援よろしくお願いしますm(_ _)m

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