表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/15

4話

「はあ、憂鬱」


先週、綾野先輩のお手伝いをする事が決定となり、今日からあの悪魔と二人だ。


「はああ……」


「ねえ、いつになったら入ってくんの?不審者感満載なんだけど」


「ひゃああ!」


 顔のいい悪魔が現れた。


「声が大きいよ――ほら、早く入って」


「わわっ」


 手を引かれ部屋に入ることになった。


「お、おじゃまします」


「うん、どうぞ。そこら辺に座ってて」

部屋を指さす。


「お茶とコーヒーどっちがいい?」


「あ、お茶で……って、私がやりますよ!」


「え、できんの?」


「失礼ですね、座っていてください!」


 キッチンに行く。見ると、コーヒーカップしかないので、それにお茶を入れる。

 綾野先輩の前に置き、反応を確認する。


「うん、良いね」


「お茶を入れるのは自信あるんです」

少し胸を張って答える。


「ふーん、なかなかやるね。それにしても――何カップ?」


「は?」


 じーっと。綾野先輩は私の胸を見ている。


「なっ、何をっ!」


「いや、胸のサイズが」


「なぜ、そんなことをっ」


「俺はTL小説家だよ?シチュエーション大事だろ」


「だからって!」


「お茶を飲んでるときに、こう言われるとどんな反応かなって」


「~~~!!」

顔が真っ赤になるのが分かった。

落ち着け落ち着け、動揺するとこの悪魔のペースだ。


「――それより先輩……先生のお手伝いって、何をすればいいんですか?」


 仕事で来ているのだから、内容を理解しなければならない。


「あー、聞いてないの?」


「宮古先輩は、全部綾野先生の指示で動いてねって」


「じゃあ、仕事内容発表。俺とロールプレイングだな」


「はあ……ロールプレイングって、どういう事ですか?」


「ロールプレイングゲームって知ってる?役になりきるんだよ。つまり、糸谷は俺の言う役になりきるのが仕事。OK?」


 綾野先輩が説明してくれたけど、いまいち良く分からない。


「ええと……よく、わかりませんが?」


「じゃあ、仕事の体験といこうか」


 綾野先輩はにこっと笑った後に、コーヒーカップを持つ私の両手を、そっと自分の両手で握りしめた。


「なっ、え?」


「さくら……お前の手は、俺の両手で隠せるくらい小さくて……」


 綾野先輩はそこで、言葉を切って私に微笑みかけた。


「……可愛いな」


「ひゃ!!!」


 イケメンの微笑みの破壊力半端ない。


「ぶふ!!!」

とたんに吹き出す悪魔。


 思わず顔をしかめた。


「ちょっと!失礼ですよ!」

顔が熱くなっているのがわかる。


「悪い、つい反応がな……」


 まだ肩を震わせる悪魔を睨み付ける。


「……可愛くて」


「何かいいましたか?」


「何も?」


 可愛いと聞こえたのは気のせいかな?


「で、今のは、恋人ロールプレイングな」


「ロールプレイングだったんですね。つまり、そういうロールプレイングが私の仕事ですか?」


「そういうこと。糸谷、俺の小説のジャンルは?」


「……女性向けTL(ティーンズラブ)官能小説、です」


「官能小説っても、いろんなシチュエーションが必要だろ?ずっとベッドで、あはんうふん、してると飽きるだろ?」


「まあ、確かに……」


「読者は少しのリアリティと濃度、糖度の高いフェイクを求めてるんだ」


「はあ、確かにリアリティ寄せすぎると、検閲的にヤバいですもんね」


「ああそうだ。リアリティもフェイクも経験がないと書けない。かといって、そんな経験を全部したら身が持たない。むしろ刺されそうだ」


 綾野先輩は熱弁をふるう。まあ、不特定多数とお付き合いしてたら、綾野先輩の美貌的に刃傷沙汰になりかねない。


「綾野先輩を巡って警察案件になりそうですね?」


「――まあ、ロールプレイングで助手も雇ったけど、恋人気取りで接してくるから鬱陶しかったり。何度己の身を案じたか」


「え、綾野先輩はてっきり経験済みかと……」

そう言いかけたら、綾野先輩はびくっと体を震わせた。


「俺は、女が苦手なんだ……」


「は、はあ!?」


「に、が、て、なんだ」


 あ、はい、もう一度強調なさりました。


「えええ?」


「……昔、数人に囲まれて襲われかけたんだよ。それで……」


「……女性が、苦手になったんですか?」


 綾野先輩はぷいっと横を向いた。


「官能小説の世界は、文章の世界はある意味綺麗で、俺の理想を詰め込んでいるんだ」


 確かに、綾野先生の描く世界はジャンルがそれとはいえ、とても綺麗に描かれている。


「なるほど、女性が苦手故、恋愛への憧れを詰め込んでいる世界なんですね」


「半分正解」


「え、残りは?」


「俺の好奇心と……欲望かな」


 そう言いながら、先生は私の指先にキスを落とす。

その途端言い知れぬ恐怖と羞恥と、震えが走った。


「よ、欲望ですか!?」


「あれ、そこに食いつくの?俺だって人並みにそういう事には興味あるし、なんなら試したいと思っているさ」


「先生なら、選べるでしょう?」


「言っただろ、女が苦手って」


「え、まさか、先生そっちの気が!」


 そういった途端、絶対零度の眼差しで睨まれた。


「は?お前バカなの?ここまで聞いて分かんないの?」


「え?なんですか?」


「俺は女が苦手だけど、嫌いとは言ってない。女っぽすぎないと、いけるかなーって。なあ、糸谷?」


 良いこと言ってるようで、私を貶めてるようだ。


「近付いたら、噛みつきますよ?」


「へえ、試してみる?」

先生がゆっくり近付いてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ