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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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4/8

3話

 

「まあ、糸谷はそのままの純粋な気持ちでいて、そういう方が俺は好きだよ」


「は、あ、ありがとうございます」


「うん。俺はお前のことを、今、褒めたからな」

ぷいっと横を向く綾野先輩の耳が少し赤くなっていた。


何か、こんなシチュエーション。

前にもあったような――


あっ!あの時だ。



 大学の文芸サークルで、毎月一度の各々の小説の批評会。

私の書いた初めての小説はお粗末過ぎて、先輩達からは改善の批評しか貰えなかった。

そんな中、綾野先輩が。


「これ、糸谷が書いたの?」


 低評価の嵐にボロボロになって落ち込んでいた私は、綾野先輩に聞かれて蚊の鳴くような声で答えた。


「……はぃ……」


「まだまだ言葉も拙いし、荒削りだな」


あ、やっぱりそうだよね。素人丸出しの文章とか、読めたものじゃ――


「――でも、変に飾り立てずに素直な言葉で書かれていて、俺は好きだよ。書き始めたばかりの、今しか書けない文章だよな」


「え、あ、ありがとうございます!」

勢い良くお礼を言って、頭を下げた。

涙で視界が滲む。


「俺は今お前を褒めたからな。次の話、また読ませろよ」


 下げた頭をポンポンと軽く撫でて、綾野先輩は離れていった。


その後、文学部の先輩達がこぞって綾野先輩を囲み批評を頼んでいたっけ。

ただ、女の先輩達にはしばらく睨まれたなあ。


◆ ◆ ◆


「なに、俺を見てなんでニヤニヤしてんの……その顔気持ち悪い」


「……は?」


思わず大学時代にトリップしてたようだ。

ちょっと綾野先輩の言葉に浮かれただけに、ギャップがひどい。


「電話失礼しました。あら、二人とも何かあったの?」

宮古先輩が戻ってきた。


「いいえ、何も!なかったです」


私は何も、という部分を強調した。


「ぶふっ!」

吹き出すイケメン作家。


「何か、仲良さそうねえ。なら来週から大丈夫ね」


「宮古先輩、来週って何かあるんですか?」


 宮古先輩は、含み笑いをしながら衝撃発言をした。


「綾野先生のお願いが通ったので、来週から桜ちゃんにお手伝いとして入って貰いますねえ」


「え、まじですか?」


 綾野先輩は自分で言ったのにぽかんとしてる。


「その、お手伝いって何をするんですか?」


宮古先輩はちょっと考える素振りを見せた。


「ん~、来週実際見た方が早いと思うわ」


「そうなんですか……」


何だろう、少し、嫌な予感がする。


「糸谷、取り敢えず連絡先交換しよう」


「え、はい」

携帯を出して連絡先を交換する。


「来週から来いよ、糸谷」


綾野先生は、とてもいい笑顔で『よろしく』と言ってきた。


「よろしくお願いします……」


「さて、そろそろ仕事を進めようかな。宮古さん、今日はありがとうございました」


「ふふ、来週から桜ちゃんをよろしくお願いしますね、くれぐれも怖がらせないように」


「ははは、俺は優しいですよ」


「うふふ」


なにこれ怖い、来週何があるの?




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