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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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3/8

2話

「そうだ、宮古さん。この前の編集部からの紹介の女性もダメだったよ。」


「あら、またですか?」


「そ、シチュエーション頼んだだけなのに彼女面して、俺に迫ってきてさ。断ったら夜中に覆い被さってきて襲われそうになった」

綾野先輩は心底嫌そうな顔をする。


「綾野先生は色気のある人だからね。うちの主人には負けるけど、ふふ」


「あー、はいはいご馳走さま」


 宮古先輩は作家の旦那様がいて、ラブラブらしい。

うらやましい、彼氏いない歴はもう3年だ。


「今は、紹介出来るようなアシスタントの女性いないのよねえ」


「そっか、じゃあさ」


 綾野先輩はそう言いながら、ちらりとこちらを見て意地悪く笑う。


「糸谷さん、貸してくれないかな?」


「ぴゃっ、はひいい!?」

思わず変な声を出してしまう。


「ぶっ!ひどい顔」

綾野先輩は私の顔を見て腹を抱えて笑い出した。


「綾野先生、女の子の顔を指さして笑うのは頂けないわよ」

宮古先輩は綾野先生を注意してくれた。


「はは……あー、ごめんなさい」

ぺこりと私に頭を下げた。


私は少しむくれたままぷいと横を向く。


「そうねえ。編集部で相談してみるわ」


「宮古さん、よろしくおねがいします」

好青年スマイルでお願いする綾野先輩。


「あ、あの。編集者の仕事ってそういうことも?」


「綾野先生はましな方よ。もっと使い走りや、住み込みの家政婦レベルを求める人もいるのよ?」


「ええ、そうなんですか?」


「俺は優しいぞ。新人編集者の糸谷さん」

綾野先輩はめちゃくちゃ良い笑顔で”優しい”を強調してきた。


「何事も経験よねえ。桜ちゃんも綾野先生なら、大丈夫だと思うのよ」

にこやかに話す宮古先輩。


「あら、電話だわ。少し失礼しますね」

そそくさと電話をしに席を外す。

悪魔と二人きりだ。


「糸谷、編集者になりたかったの?」


 予想しなかった、というか綾野先輩に聞かれると思わなかった質問だ。


「……作家を目指してたんですけど、書けなくて」


「なんで書けないの?」


「書いてるうちに気付いたんです。私は書くより読む方が好きだなって」


綾野先輩は黙って聞いてる。


「読む方が好きなので、編集者になって誰よりも先に読みたいという下心と……」


ここで、一拍置く。


「その、作家さん達のお手伝いをしたくて。素敵なお話しを紡いで、産み出してくれる作家さん達の心の支えになれればと」


「ふうん」


「あ、あはは。傲慢ですよね」


プロの作家である綾野先輩の前で変なことを話してしまった。何様?とか言われるかな。思わず下を向く。


「……いいんじゃない?」


「え?」


「糸谷はそういう気持ちで編集者になったんでしょ。

ただ作家とお近づきになりたいとか、こういう話を書けなんて邪な考えはないんだよね」


「もちろんです!」

勢い良く肯定した。


「……声が大きいよ」

耳を塞ぎながら嫌そうに綾野先輩は言った。


「まあ、糸谷らしい理由かな」

綾野先輩は、にやりでもなく、薄笑いでもなく。

ただ微笑んでいた。


 急に高鳴る私の心臓に、私自身が驚く。

なに……これ。


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