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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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番外編 あの日の天使

大事な番外編エピソードを入れ忘れていました!

追加です。( ノ;_ _)ノ

高校二年生の時、希望大学のオープンキャンパスに行き、その後は大好きな作家さんのサイン会に行く予定を立てていた。


しかし、サイン会があるビルは東西に分かれていて、どちらで行われるかうっかり調べてない。

携帯の充電はほとんどなく検索は諦めた。総合案内所の人は、小さなイベントまでは把握していなかった。

どこへ向かっていいか分からずに、本を持ってうろうろしていた時。


「ねえ、さっきから見ていたけど。その本の作者のサイン会に行きたいの?」


少しハスキーな声がして、振り向いた。

薄い茶色の長い髪。色白で、ぱっちりした目元と小さな鼻にツヤのある唇、背が高いけど細い体。

まるで、天使のような女の子に出会ったのだ。


「な、なんで分かったんですか!?」

最初は身構えたものの、かわいらしい容貌と笑顔。優しい声に思わず身を乗り出す。


「ん。教えてあげよっか?まず、その本を持ってうろうろしている。購入した人にサイン会の参加特典ついてるもんね」

その子は同じ本を持っていた。


「次。館内図をずっと眺めた後、もう一度書店のポスターを確認しにいった。そして、店員に話を聞いた」

うんうん、合ってる。


「君ね。あの店員はだめだよ、あれバイトだから。名札にアルバイトってついてるでしょ」


え。そうだったんだ、気付かなかった。


「ふふ。でも君は運がいいよ。親切の塊みたいな私と出会えたんだもの。私が、連れていってあげる」


手を差し出されて、初対面なのに思わず掴んでしまった。

なぜか分からないけど、この人は大丈夫だって思ったの。


「あ、ありがとうございます」

そういうと、天使は微笑んだ。


「そうだ、その小説どこが気に入ったの?」


「心の動きが、繊細な表現で書かれているところです。私も主人公の追体験してるような気持ちになるから。あと――」

小説の好きなところをつらつらと挙げていく。


「あはは!どれだけその小説を気に入ったか分かったよ。それと、敬語はいらないからね。咲っていうの。こっちが年上だけど気にしないで」

天使様は、だいぶ気さくなようだ。


彼女はサイン会まで連れてってくれた。

――だけど。


「ええっ!サイン会終わってる……そんな」

スタッフらしき人達が、机とかを片付けている。


「ちょっと待っててね。名前、教えて」


「さくら……糸谷桜(いとやさくら)です。さくらは、春に咲く桜。」


「え?糸谷桜って……本当?」


「うん。そうだけど」


「そっかあ。桜、桜なんだね……私のことは咲って呼んで。じゃあ、ちょっと待ってて」

スタッフに駆け寄り、二人で衝立の裏に入っていった。

少し待ってたら、天使様が戻ってきた。


「はい。桜の本、サインしてもらったよ」

受け取った本を開くと、そこには『桜さんへ』と、作者のサインが入ってた。


「咲さん、ありがとうございます!お礼させてください!」

何度も頭を下げた


「ふふ、いいよお礼なんて。この場所分かりにくかったよね。次は気を付けるよ」


「そうですね、次は気を付けます」

そういうと、苦笑いされた。


「あーまあ、いっか。桜、時間ある?あるなら、お礼だと思って少し付き合ってくれない?」


「大丈夫です。今日は夕方まで、時間はあるので」

まだ、お昼前だし夕方まで余裕がある。


咲さんは、さっきサイン会の前に寄った書店に行き、お薦めの本を紹介してくれた。

次に何を読もうか選び切れなくなり、ずいぶん時間をとられる。

ふと時間を見ると、お昼をとっくに過ぎていた。


「桜。そろそろ、お腹空いてない?」

咲さんにランチも奢ってもらって、好きな小説の話で盛り上がった。

すごく楽しい!


「ねえ、夕方まで時間あるなら、まだいきたい場所あるんだけど」


私が頷くと、そのまま手を引かれて、ビルの中にある水族館に連れていかれた。


「あの作家。水族館行きたくて、あそこでサイン会したんだって」


なるほど。そういう理由であの場所だったのね。


「でも、途中でサイン会が面倒になって帰っちゃった。それで、早く終わったんだよ。担当の人、鬼のような顔してたよ」


面白いよね。と、咲さんは可笑しいと笑っていた。

あの本の作者さんって、変わった人なのかな?


「さあ、水族館に入ろう」


都会の真ん中の水族館は、そこだけ切り取られたように別世界だった。

咲さんと二人で、青い幻想的な魚たちの空間を堪能する。


歩き回って足がパンパンになった。

ベンチに座り、足をさすっていると。

プラネタリウムの文字が目に入る。


「足、大丈夫?無理させたよね」


「そんなことない。咲さんと一緒だと楽しすぎて、気にならないよ。私は平気」


咲さんが申し訳なさそうな顔をする。

休憩するなら、プラネタリウムに入ってみたいとお願いする。

咲さんは、快く応じてくれた


プラネタリウムで二人で星空鑑賞。

まるで、夜中にこっそり外に出てきた気分だ。

咲さんと二人でどちらともなく手を握って、わくわくしながら星空を堪能した。


でも、馴染みのない街を歩き回ったせいか疲労が溜まってたみたい。

癒しの音楽と心地よい空調で、後半眠ってしまった。


咲さんに揺られて、はっと起き上がる。


「桜。ヨダレ」

口元を指差して笑われた。

慌てて拭おうとする。


「え、どこについてる!?」

「あはは、冗談だよ。可愛い顔して、よく寝てた」

咲さんは、きれいな指先でそっと私の唇に触れた。

途端に、ドキドキしてくる。

女の子相手に、こんな胸が高鳴るのってあり得ないよね。


プラネタリウムを出たその時、咲さんの携帯が震える。


「あ!ヤバいそろそろ時間だ」

携帯を見て咲さんは、うんざりした顔をする。


「ごめん。桜、もう……戻らないと」

咲さんは、少し悲しそうな顔をした。


「じゃあ、連絡先交換したいな」


咲さんは、目を泳がせる。


「桜。今日はすごく楽しかった。ありがとう――でも、もう会えないかも」


「そう、なの?」


せっかく知り合えた縁なのに。

次はないの?


「じつは私、ちょっと辛くて。この姿でいるのは最後かな」


そう言うと、くるりと回った。

髪がふわりと舞う。


「え……どういうこと?」


「ふふ、何でもない。今日は最高の日になったよ」

咲さんは、そう言ってにっこり笑った。


「そうだ、これあげる」

ごそごそと、水族館で買った物を私に渡した。

人気キャラと水族館のコラボのペン。

私が可愛いと言ってたやつだ。


「お揃いだよ。これ見て、私を思い出してね」

咲さんは、私をぎゅっと抱き締めた。


「……きっと、また会えるよ」

頬に柔らかいものが触れた気がした。

そして、じゃあね!と駆け出して行ってしまった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「あー……それ、俺だな」


咲人さんが頬を掻きながら目を逸らした。


え、でも、天使様こと咲さんは女性で――


「……姉貴の知り合いにお願いされたんだ。イメージぴったりって。女性雑誌で、つまり――」


「全然、違和感ありませんでしたよ!」


「やめてくれ、黒歴史だ」

咲人さんが、両手で顔を覆う。


「でも、何であの場所に居たんですか?」


「本のサイン会。別名義で出したとき、あの格好がうけてそのまま出たの」


それで、サイン会の場所を知っていたのね。


「まあ、お陰で生のさくらに会えたのは幸運だったよ。あの時も名前ですぐ分かった」


それで、名前を何度も確認してたのね。

てっきり間違えないようにだと思ったのに。


「私は、ずっと綾野先生のファンですよ」


「さくらはファン以上だよな?ま、俺の黒歴史の話はもういいよ」


そう言って咲人さんは、私の腰に手を回し引き寄せた。


「……もしかして、天使様に嫉妬してますか?」


「――そろそろ黙ろうか、さくら」


言葉を止めたご褒美は、咲人さんからの甘い口付けだった。


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