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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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その後とエピローグ

今回で完結になります!

お付き合い下さり、ありがとうございました。

「さくら。もう一回だけ」

少し甘えを含んだ声でお願いしてくる綾野先生。


「もう、何度もしましたけど……」


先生のお願いだけど、そろそろ違う場面に切り替えたい。


告白して、されて恋人同士になってから一年。

まだ先生の担当を外されていない。


今日は、先生のマンションの部屋で、新作の構成を手伝っている。

さっきから小説の台詞がなかなか決まらず、同じ場面の繰り返しだ。


「私はこの場面の台詞は良いと思いますけど」


「別の言い回しないかなって『こっちに来いよ』」


はあっとため息をついて、先生の台詞の相手をする。


「『強引なのは嫌いなの。もっと甘く、優しく言葉を紡ぐなら、考えてあげてもいいわ』」


そう言うと、先生は座っている私を後ろから抱き締める。

そして、耳元で囁く。


「次、『俺はいつでも、お前にだけ真摯に愛の言葉を囁いてるつもりだけど。それじゃ、足りないのか?』」


「『行動でも私への愛を示してくれないと嫌よ』」


「この先だよな。定番だといちゃこらにもつれ込むんだけど、さくらはどう思う?」


「別に定番でもいいんじゃないですか?読者はある程度、そこを求めてると思います……」


先生は頬に軽くキスをしてきた。


「定番で読まれるのも、なんだかなあって気もするけど。内面描写を細かくいれるか」


話しながら頬に何度もキスを落とす先生の唇を、思わず手で押さえた。

するとペロリと指を舐められる。


「ひゃ!」


「さくら、で。次のシーンどうすればいいんだっけ?」

先生は含み笑いをしている。


「……仕事とプライベートの時間は分けてくださいよ、咲人さん」


「もう退勤時間だ――今からプライベートの時間でいいよな、さくら」


まだ冬だというのに、私たちの間の空気は甘く柔らかい。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


仕事も順調だ。

宮古先輩は、もう少しでお子さん二人目の産休に入るので引き継ぎでバタバタしている。


「桜ちゃん、ミス減って仕事が丁寧になったわね」

「本当ですか?ありがとうございます」


穏やかに笑う宮古先輩。

ふっくらとしたお腹を愛しそうに撫でている。


田中先輩は、相変わらず私に厳しいけれども、注意されることも少なくなってきた。

担当している長井先生の執筆も順調で、お二人は今婚約中だ。


ただ、ひとつ。


作家のインタビューが、思いの外人気があり長井先生もインタビューを受けてた。

ファンが増えてやる気も出たかと思いきや、浮気をしようとして修羅場だったらしい。

長井先生は誤解だって言ってるけど、田中先輩は少しピリピリしている。


私には後輩が出来た。

先輩として、宮古先輩と田中先輩の指導を振り返り、後輩指導をしている。

なかなか大変で、お二人への尊敬が尽きない。


退勤後、私は咲人さんとカフェで待ち合わせしている。


「さくら。悪い、待った?」


モデル並みのルックスだ。眩しい。

あ、モデル経験者だったよね。


「いえ、そんなに待ちませんでした。先に注文したので、咲人さんもどうぞ」


化粧直しに席を離れる。

戻ってくると、咲人さんは女性二人に声をかけられている。


「お待たせしました。お知り合いですか?」

咲人さんは少しむすっとしたまま、口を開いた。


「さあ?それよりさくら、早く席に座りなよ」

咲人さんは、わざわざ席を立って椅子を引いてくれた。

私が座ると嬉しそうに話しかけてきた。

無視されてる女性二人は、顔を赤くして離れていった。

近くの席からじっと見られている。


「……モテますね」

「嫉妬?俺はさくら一筋だよ」

綺麗に微笑まれてドキドキする。


「そういえば、詩織さん達は……」


「お待たせ。お二人さん」


遠山さんが、スーツをビシッと着て現れる。

話すとちょっと胡散臭いと思っていた遠山さん。

スーツを着こなしているのを見ると、スマートな大人の男性で素敵だ。


周りをチラリと見ると、先程の女性二人の視線も奪っている。

そして、私と見比べてひそひそされている。


「桜ちゃん、見惚れた?でも俺には詩織が――」

「さくらは俺だけ」


咲人さんが遮った。

遠山さんの後ろから明るい声がする。


「桜ちゃん。お待たせ」


「詩織さん、ご結婚おめでとうございます!」


「ふふ。ありがとう!これ、渡そうと思ってね」


白地に、淡いピンクの花があしらわれている封筒を渡された。


「サクのエスコートで出席してくれるかしら」


「結婚式の招待状ですか?私が、出席してもいいんですか」


「ふふ、駄目な理由なんてあるわけないわ」


咲人さんも遠山さんも頷いている。

招待して貰えるのはすごく嬉しい。


「俺がとびきり綺麗にコーディネートしてやるよ」


「おいおい。俺の詩織が主役だからな」


「さすがに、詩織さんが主役なのは分かってますよ。それに元々詩織さんの足元には――」


及びません、と言いかけると。


「さくらは自分を下げるの禁止。もっと、俺の隣にいるって自信を持っていこうか」


指を絡めて手をぎゅっと握られる。

そしてあろうことか、公衆の面前で唇の横にキスを落とされた。


遠山さんはひゅぅと口笛を吹き、やるねぇ。と感心している。

詩織さんはにこにこしているだけ。

私は、居たたまれなくて顔を下に向けて表情を隠した。

周りのお客さんの視線が刺さる。


チラリと見ると、咲人さんは満足そうな表情をしていた。

綾野家と付き合っていくには、羞恥心とも長い付き合いになるのかもしれない。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


詩織さんと遠山さんの結婚式は、神前式で行われた。

二人は皆に祝福されて幸せな表情だ。


式の前には花嫁控え室で、咲人さんのご両親とご挨拶をした。

お父様より、お母様の方が似ている。

クオーターで、外国の血が混ざっているそう。

お二方には、噂の桜ちゃんね、と言われてむず痒い。

どんな噂されてるかちょっと怖い。


そして、私は何故か親族席に座らされている。

「咲人さん。なぜ、私はここに?」


「当然だよね?」

本気でそう思っている顔だ。

理由になってない。

式は滞りなく進み、幸せな気持ちをたくさん分けてもらった。


「詩織さんと遠山さん、いいお式でしたね」


私の横で咲人さんが頷いた。


「咲人さん。新婦のご家族なんだからわざわざ送ってくれなくても」


「それは――さくらが、俺から逃げないようにだよ」


「ええ?逃げませんよ、きちんと好きって伝えてますよね」


咲人さんは、胡乱げな目でこちらを見た。


「さくらは誤解しやすいし、その誤解で逃げるからな」


前例があるし。と、その通りで言い返せない。


「だから――改めて、きちんと言いたい」


真剣な眼差しの咲人さんに、こちらも姿勢を正した。


「俺は、お前をこれからも一番大事にする。だから――ずっと側にいて欲しい」


「ふふ、今さらですか?私、これからも……綾野先生の人生を、全部監修するつもりですよ」


「……返却は出来ないからな」


「私は、仕事に責任は持ちますよ」


「俺は仕事か?」


咲人さんが不貞腐れたような声色で聞いてくる。


「当然、自分の気持ちにはもっと責任を持ちます。ね、咲人さん」


「さくら、その言葉を忘れるなよ」


まだ少し冷たい夜風に吹かれながら、額に熱がそっと灯る。

桜の花はもうすぐ満開になる。


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