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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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21話

病室の扉を開けると、そこには――


「婆ちゃん!」


「咲人。大声出すと他の人に迷惑よ」


ズカズカと入っていった先生を、お祖母様がぴしゃりと叱った。


「あ、すみません。お騒がせして」

二人でぺこぺこと謝る。

ベッドの上から、上品な老婦人が柔らかい笑みを浮かべてこちらを見ていた。


側には詩織さんと、もう一人見知らぬ男性が立っていた。


「サク来てくれたのね」

詩織さんが立ち上がって、ホッとした表情を見せた。


「私は呼ばなくていいと言ったのに」

お祖母様は少し拗ねた顔をして、男の人が宥めている。


「まあまあ、お義祖母さん。体に障りますから」


人数が多い。

周りの視線も気になるし、いったん病室を出て病院のカフェに移動する。


カフェのテーブルに着き、改めて話を聞いた。

「桜ちゃんも来てくれたのね、ありがとう。あ、この人は――」


「詩織の婚約者の遠山恭二といいます。よろしく。未来の義妹かな?」


衝撃的な言葉に慌てる。


「私達、そんなんじゃないです!」

そんな誤解されるなんて、顔が赤くなる。

横を見ると、先生の表情が固くなってる。


「あれ、そうなの?てっきり――」


「恭二さん。ちょっと!」

詩織さんが、遠野さんの服を引っ張って静止した。

先生が、椅子をガタッと引いて立ち上がる。

テーブルがわずかに揺れた。


「俺、もう一度、婆ちゃんとこ行ってくるから。桜もここで待ってて」


「私も行きます」

先生の背中を早足でついていく。


「俺さ……あの人の、ああいうデリカシーないとこが嫌なんだよ」


私をちらりと見て。


「発言は全部スルーしとけ」


「はあ……」


……あまり仲が良いわけではなさそうだ。



今度は、静かに病室に入る。


先生の後ろでじっとしていた。


「肺炎で入院だって?婆ちゃん、年なんだから無理するなよ」


「自分の事は自分が良く知ってるわ」


「だけど」


「――咲人が来てくれたのは、嬉しいわ。ありがとうね」


にこにこと、お祖母さんが先生の手を取り、細い指でゆっくりと撫でる。

先生の喉が、小さく動いた。


先生、心配したんだよね。

そして、先生のお祖母さんは私に視線を向ける。


「ところで、後ろのお嬢さんはどなた?」


「私は――」


「――俺の大事な人。だから、婆ちゃんにも紹介したくて」


先生の表情が、ふっと変わった。

そして、手を引いてお祖母様の側に連れていった。

……恋人の振りをしてってこと?

それとも――


「糸谷桜と言います……綾野先輩の、大学時代の後輩なんです。ご挨拶が遅れて、申し訳ありません」


ペコリと頭を下げる。


「あら、大学生の時からなのね。長いお付き合いなのかしら」


うふふ、と頬に手を当て上品に笑う。

詩織さんと雰囲気がそっくりだ。


「婆ちゃん。退院したら、ちゃんと会わせるから」


「……はいはい。風邪なのに、皆が心配しすぎなのよ。桜さん。また、お会いできると嬉しいわ」


「私も、楽しみにしています」


お祖母さんの優しい笑みに引き寄せられるように、私も笑った。


「咲人は頑固なの。昔から何度も手を焼いたわ」


そう言って、私達の手元に視線を落とし、ふっと目を細めた。


「……桜さん、よろしくお願いしますね」


私は、先生に手を引かれて病室を出る。


「先生。あれで良かったですか?」


「ああ。お前にも、家族の事は話すつもりだったよ……紹介したかったし」


かろうじて聞き取れた。


「……私が先生の担当してるって、紹介したかったんですね」


先生は、こめかみを押さえた。

後ろから吹き出す声がした。


「なっ、なるほど……くくっ」


遠山さんが、壁に向かって手をついて肩を震わせている。


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