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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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18話

綾野先生のインタビュー記事が雑誌に掲載された。

読者の反応は――私の予想以上だった。


「宮古先輩。綾野先生宛の手紙増えましたね」


「まあ、予想通りね」


あ、宮古先輩は予想ついてたんだ。

編集部に届いた綾野先生への荷物を、二人で纏めていた。


「ちょっと!そこに置かれると邪魔なんだけど」

通りかかった田中先輩に鋭い声で注意された。


「あっ、すみません!今、片付けますっ」

慌ててどけようとした。

田中先輩は相変わらず当たりが強い。


「桜ちゃん、綾野先生に手紙を届けてくれるかしら」


お使いを頼まれたので、小説の進行確認も兼ねて先生のマンションに向かう。


「あ、桜ちゃん。先生のマンションに入る時は、気をつけてね」


「あ、はい。分かりました、気を付けます」


私はこの時はまだ、宮古先輩の『気をつけて』の意味を理解していなかった。


編集部が入っている建物を出ると、若い女の子二人組に声をかけられた。


「すみません。作家の綾野咲人先生の本を出している出版社ってここですか?」


「はい……そうですけど」


「じゃあ。ここにいたら、綾野先生に会えますか!」

「私たち、雑誌に出てた先生のファンになっちゃって――」


女の子達は、きゃあきゃあと、綾野先生の事で騒ぎ立てる。

どうしよう、ここで時間を取られると仕事が遅れちゃう。

うーん、無視すれば良かったのかな?

でも、せっくの……ファンだよね?

どう対応していいのか、悩んでいると。


カツカツカツ―

ヒールの音が響く。


「――糸谷さん。待たせたわね」


「田中先輩?」


「何ぼけっとしてるのよ。行くわよ」


田中先輩は、私の腕をぐいっと引っ張る。


「あ、すみません。急いでるので失礼します」

女の子達に軽く頭を下げると。


「え~綾野先生に会わせてくれないの?」

「感じわる~」

ブツブツ言いながら離れて行った。


「はあ……綾野先生のファンが増えたということは、ああいう面倒なファンも増える事もあるの。少しは考えなさい」


田中先輩は、大きな通りまで一緒に行くと、タクシーを拾ってくれた。


「次は助けないからね。運転手さん、降りる時に領収証ください。ほら、糸谷さん。さっさと行ってきなさい」


私がお礼を言うまもなく、田中先輩はタクシーのドアを閉めた。もう後ろ姿しか見えない。

私はため息をついて、運転手さんに行き先を告げる。

――田中先輩、ありがとうございます。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


タクシーで綾野先生のマンションまで行こうかと思ったけれど、念のため少し離れた場所で降ろしてもらう。

少し歩くと書店が目についた。

引き寄せられるように、ふらりと入る。


まっすぐ雑誌コーナーへ行き、綾野先生のインタビューが掲載された雑誌を手に取る。


ペラペラとめくり、先生のページ。

インタビューの記事と写真、レイアウトも先生の表情も完璧だ。

一冊購入して、脇に抱えて書店を出る。


先生のマンション近く、公園のベンチに座り読み始めた。

雑誌の中の先生は別世界の人みたいだ。

あの場に居たけれど、なんだか芸能人を眺めている気分になる。


「なんだか、遠い世界の人みたいだよね」

「誰が?」


「ぎゃ!」


「……人が変質者みたいな驚きかたをするなよ」


私の変な声で、周りの人にじろじろ見られている。


「先生、いつの間に……」


「宮古さんから連絡きて待ってたのに、遅いから外に出たんだよ。何してんの」


その言葉で先生がわざわざ迎えに来てくれたのを察した。


雑誌見てたら、先生と距離が遠くなったように錯覚したなんて言えない。


「それ、例の雑誌。買ったの?」


「はい……まあ、自分用に」


「俺の事はいつでも見れるだろ。それ、お金の無駄遣いじゃない?」


先生の言葉で現実に引き戻された。

そうだ。先生はこういう人だった。


「なに笑ってんだよ。ほら、行くぞ」


先生宛の手紙やらプレゼントを入れた荷物を引き取ってくれる。


マンションに着いて先生が郵便受けを開けたとき。

その手紙は落ちてきた。


「なんだこれ」


「差出人は、書いてないですね」


その茶色い普通の封筒の宛名には『綾野咲人様』とだけ書いてあった。

何か変な手紙だ。

先生が中を開けてみる。


『雑誌に載ったからといって、いい気になるな。お前の大事な物は奪ってやる。』


脅迫文?


「先生……これ、警察に届けた方が!」

思わずオロオロしてしまう。


先生は、じーっと手紙を眺めて、こう言った。


「あ~差出人のところに行くぞ」


「はい……はあ?」


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