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『先生、仕事ですか?恋ですか?』――女性が苦手なTL作家は、なぜか私にだけ距離が近い   作者: 古東 白


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18/22

17話

「前に、お二人に雰囲気が似てる人に助けられた事があったんです。性別違うんですけど。綾野先生のメイクした顔を見て、思い出したんですよね」


高校生の時、好きな作家のサイン会の会場にたどり着けずに迷子になった。

運良く、サイン会を知ってる人に連れていってもらったのだ。


「その時のお姉さんが、天使のように綺麗で、とても優しかったんです」

うっとりと思い出す。


「たくさん話をして、水族館とプラネタリウムにも行ったんですけど……」


詩織さんがそこに反応した。


「水族館とプラネタリウム?」


「天使様が連れていってくれて――」


「なに、その天使様って?」


なぜかイライラしながら綾野先生が聞いてきた。

詩織さんは興味津々だ。


「天使ね、そんなに綺麗で優しかったの?」


「はい。初対面で自然に話せたの初めてで――別れ際、この世界で、もう会えないって言われたんですけどね」


詩織さんと、綾野先生の視線が交わった。

ため息をついた綾野先生が、こう言った。


「俺だって、桜を水族館に連れていっただろ。気が合うと思わないのか?」


上から目線で、思わず目が点になる。

詩織さんが吹き出して、肩を震わせる。


「違いますよ!天使様に誘われた時は、私も行きたかったんです。でも、先生は――」


「俺だってちゃんと誘ったぞ!あれは、お前が人の話を聞かないから――」


「水族館でお揃いの、私だって一緒に選びたかったのに!」


「一緒に?」


うっかり口走った内容に、私は両手で口を覆う。

先生を見上げて。


「聞かなかった事に……」


「俺が、そうすると思うか?」


そうですよね。

恥ずかしすぎて、後ろを向いて顔を下に向けた。

すると、先生は私の正面に回り込んできた。


いつもより、優しい声が降ってくる。


「ほら。顔、上げろ……俺、お前のお願いは、ちゃんと聞く」


先生の手が、私の顎をそっと持ち上げる。

触れた指先が熱く感じた。

顔をあげると、先生の頬がチークより赤くなっている。


「先生……次は、ちゃんといいますから」


「さくら」


先生と真正面から視線が合った。


「あの~二人とも、インタビューまだ終わってないわよ」

そこに、突然宮古先輩が割り込んできた。


……私と先生、周りを見ていなかった。


「いい雰囲気のところで、ごめんなさい。あと少し、綾野先生にコメント貰わないといけないのよ」


すごーく申し訳なさそうな顔をされている。


詩織さんは、真っ赤な顔でぷるぷると震えながらこちらを凝視している。


「ああ!すみません!!先生っ、ほら、インタビューの続きですって」

居たたまれなくて、先生の背中をバシバシ叩いた。


叩かれた先生は、そのまま座り込み長い長いため息を吐いた。


インタビューにふらりと戻る先生を目で追いながら、冷えたペットボトルを頬に当てる。


「はー……あつかった」


「さーくーらーちゃん」


背後から両肩を掴まれる。


「はっ、はい!」


「ねえねえ、水族館のお土産って?サクから何もらったの?」


詩織さんに聞かれたので、カバンからお財布を取り出してキーホルダーを見せた。


「先生が選んでくれたんです、そのキーホルダー」


「あら。サクらしいチョイスね。桜ちゃんの色じゃない」


え、あ。

そういうこと、なの?


「何も言わないのがサクらしいけど、そんな細かいところまで察しろって無理よね」

詩織さんは、あの子変なところ拘るの。と柔らかく笑う。


「私も読書好きなのよ。サクはね、私の誕生日に自分の本と綺麗な栞をくれたわ。『詩織』だからって」


桜ちゃんも大目に見てあげて。と、頼まれた。


先生。

何でそんなふうに、私の心を揺さぶるんですか?


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