プロローグ
現代恋愛ものです。
『カクヨム』にも投稿しています。
よろしくお願いします!
中性的な見た目の色素の薄いイケメンの人。
モテモテで泣かした女性は数知れずとの噂があった。
私も噂は本当だと思っていた。
――私、糸谷桜は、大学の時に文芸サークルに所属していた。
「あ、部室に忘れ物があったんだ。取りに行かなくちゃ!」
文芸サークルの部室に到着してドアをガラッと――
「うわっ!」
誰かが飛び出してきて、お互いにもつれあって転んでしまった。
転んだ拍子に鼻をぶつけて、痛みがツーンときて涙目になる。
「いたた……もう、誰……」
顔を上げて相手を見た。
ぶつかってきたのは、大学のミスコンで準ミスの美人な先輩。
よくみると胸元がはだけている。
彼女は、鼻を啜りながら小さく震えた。
それが、ピタッと止まったかと思うと――
「綾野君なんて、○✕△(ピー)になればいいのよ!」
ちょっと文に書けない言葉を叫んだ。
綾野先輩って。
あの、綾野先輩だよね。
「うわーん!!」
美人の先輩はひと声上げて、胸元を押さえ走っていってしまった。
「なんだったの?」
呆気に取られていると、部室の中から綾野先輩がこちらをじろりと見ていた。
「入るの?入らないの?」
「あ、入ります!」
不機嫌そうに言われて、思わず大きな声で答えた。
「君、声大きい、うるさい」
「はあ?」
ソファにもたれ掛かった綾野先輩のシャツは、ボタンが外れ、裾が乱れている。
「せ、先輩こそ、ここで何してたんですか!?」
綾野先輩はきょとんとした顔をして答えた。
「何って、見てわかんない?小説のネタ考えてたの」
「は?分かりませんが、ネタ?」
小説?ネタ?そういえば、別の先輩が綾野先輩の小説のジャンルを教えてくれたな。
確か――
「官能小説!!」
「うーん。そうだけど、ちょっと違うな。正確にはTLってやつ」
ちょっと待って!
小説のジャンルはおいといて、部室でイチャコラするのは、おかしいですよね?
「なに?その顔」
綾野先輩は眉間に皺を寄せ、心外だと口にした。
「ただ、ポーズをしろ。って言っただけなのに。あの女が俺のシャツを脱がそうとしたから、拒否したら怒ったんだよ。俺は悪くないね」
悪びれず悪態をつくイケメン綾野。
「あ、そうですか。失礼いたしました――」
何も見なかった、聞かなかった事にして帰ろう。
――でも、なぜか呼び止められた。
綾野先輩はソファに座ったまま、ゆっくりと足を組み換えてじっと私を見据えた。
綺麗な顔で、真剣な眼差しを向けてくる。
「そうだな……丁度いいから、お前が相手役やれ」
「遠慮します!!」
顔に見とれた私が軽率だった。中身は屑かもしれない。いや、きっとそうだ。
「あっ、おい!!」
――全力で逃げ出した、大学時代の厄介な思い出。




