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追放された治療師、回復魔法が効かない患者だけを治していたら王都に呼び戻された件 〜制度に評価されなかった“普通の治療”が、世界の限界を超えるまで〜  作者: 夜凪レン


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第40話 正しさは止められない

 変化は、静かに起きた。


 翌日の新聞に、

 討論会の記事が載る。


判断医療を巡り意見分かれる

基準運用に慎重論も


 煽りはない。

 結論もない。


 だが、

 “慎重論”という言葉が、確かに残った。


「……勝ったわけじゃないわね」


 リーナが、紙面を畳む。


「最初から、

 勝つ話じゃない」


 アークは、そう答えた。


 流派は、止まらなかった。


 治療拠点は増え、

 支援金も集まる。


 判断医療は、

 社会的な選択肢として定着し始める。


 それでも、

 何かが変わっていた。


 医療局の内部で、

 小さな書式変更が行われる。


判断理由(任意記述)


 たった一行。

 義務でもない。

 罰則もない。


 それでも、

 その欄を埋める者が現れ始めた。


「……迷いましたが」

「こう判断しました」


 そんな一文が、

 記録に残る。


 数にはならない。

 評価もされない。


 だが、

 消えない。


 ある日、

 アークの元に、

 一通の手紙が届いた。


基準に従いました

でも、

あなたの言葉が残っていました


だから、

少しだけ立ち止まりました


 差出人は、ない。


 それでいい。


「……止められなかったわね」


 リーナが言う。


「ああ」


「それでも」


「歪みは、減った」


 アークは、窓の外を見る。


 正しさは、止められない。

 善意も、止まらない。


 止めようとすれば、

 誰かを潰す。


 だから、

 減らす。


 速度を落とす。

 逃げ場を作る。


 責任が、消えないように。


 医療は、

 世界を救わない。


 ただ、

 世界が壊れきるのを、

 少しだけ遅らせる。


 それで、十分だ。


 王都の灯りが、

 今日もともる。


 判断医療は、

 これからも歪むだろう。


 だが、

 歪んだまま暴走する世界に、

 疑問という杭が打ち込まれた。


 アークは、

 その杭のそばに立つ。


 称賛されない場所。

 敵にも、味方にもならない場所。


 正しさは、止められない。


 だから、

 責任だけは、手放さない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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