86 エルエル、アルルの魔法を見る!
「お、重いでござる~……」
「お掃除楽しいね~!」
「ひいい……な、なんで勇者である私がこんな事……」
エミー達に重いゴミを外に運ぶ作業を任せ(押し付け)私達は箒を持って家の中の掃き掃除を開始した。
箒で掃いてちりとりに集めゴミを集める。ごほごほ。分かってはいたが放置していた部分もたくさんあって家の中は随分とホコリが溜まっている。
床のホコリ以外にも天井の梁の上や暖炉の中のススも掃除しなくてはならない。めんどくせえ。
とりあえず目の前のホコリを取る為私とアルルは居間、ミュゼッタは玄関の方を掃き続ける。
そんな時、ふと玄関のすぐ横にある階段が目に入る。
「あっ!そうだ2階とかあったんだこの家!」
「えー今更?」
「うるせーな。この家の2階つまんないから仕方ないじゃないですか」
「まぁ、アンタはほとんど行かないからね」
めがみはうすの2階は階段を登り切るとすぐに屋根裏部屋のような小さい部屋がひとつあるだけ。その中には本棚がずらっと並んでいて小さい椅子が置いてあるだけの書斎。
私が最後に見た時は本が床に散乱していたし小難しい本は興味ないのであまり足を踏み入れないエリアだった。
アルルとフィオナ、それにボロニアはたまにその書斎に足を踏み入れてそこで読書したり1階に本を持って来て読んでたりしている。
「うわ~……1階だけかと思ってたのに2階も掃除しなきゃいけないとかめんどくせぇ~……」
「2階はやらなくてもいいわよ」
「えっ?なんでですか?」
「私やフィオナやボロニアがよく使うからちょいちょい掃除してて綺麗なのよ」
「そうなんですか?」
「そうよ」
「掃除してたなら呼べよ!!なんで私を仲間外れにするんですか!!」
アルルを捕まえてわしわししようとしたが避けられた。
「アンタどうせ「使ってない私がなんで書斎掃除しなきゃいけないですか~!」とか言ってキレるでしょ」
「まぁそれははい」
「ったく、せっかく家の中に本があるんだからアンタも少しは読書したらどうなのよ」
「楽しい小説とか無かっただろ2階。面白い本があるなら読んでみたいですけどね~」
「面白い本ならあるわよ」
「えっ本当ですか?」
「2階の書斎は歴史書が充実してて良いわよ。錬金術に関する本なんかもあって面白いのそれに……」
「書斎は一生利用しないまま終わりそうです」
そんなどうでもいい会話をしながらアルルと一緒に掃き掃除を進めた。
「ん……?」
「どうしたのエルエル?」
掃除をしていると部屋の隅の床に黒い染みが点々と落ちているのが見えた。
「インクの染みかしら?」
「なんだか見栄えが悪いですね~濡れた雑巾でこすれば落ちたりしないですかね」
雑巾自体は手に持っているが乾いている物だ。外の井戸まで行って雑巾濡らしてくるのめんどくさいなあ。
「まぁこれくらいならたぶん"私の魔法"で落とせるわ」
アルルが自分の魔法でなんとか出来ると言い始める。アルルの魔法と言えば……。
「……え?アルルの魔法って……あの蹴る技ですか?」
「それじゃないわよアホ」
アルルの魔法と言えば私もよく食らっているアルルの両足を揃えて全身で相手を蹴り飛ばす物理魔法≪ドロップ・キック≫だ。それ以外にも魔法が使えるのか。
「じゃあどんな魔法が使えるんですか?」
「見てなさい……フェアロン族が得意としている"水の魔法"を……!!」
「水の魔法!?アルルお前そんなの使えたんですか!?」
「ふっふっふ……」
アルルは腕を組んで不敵な笑みを浮かべる。本当に出来るのならすごいがそれならそれで引っかかる事が……。
たしか水が必要な時あったよな……。そうだ。
「……いや、お前そんな魔法使えるならお祭りの火事の時使えや!!
そんなもん使えるならあの時ヒイヒイ言いながら消火活動しなくても良かったじゃないですか!!
「う、うっさいわね!!だって火事とかは……いや、もういいや!!黙って見てなさいよ!!」
アルルは右手の平を床の汚れに向けて"魔力"を込めると小さい魔法陣が現れる。
「深い森から湧き出る澄み切った泉よ、我が手にその清らかな水を注ぎ与えよ!煌めく水面に映る未知の力、深遠なる秘密を包み込んで我に与える!流れる水の音に導かれ、未知なる世界へと踏み入れん!
≪水の輪!≫」
「おおっ!?」
アルルの手の平の先に出ている魔法陣から―――
ブピュッ
―――少量の水がビチャッと飛び出て床を濡らした。
「ふぅ……こんなもんかしらね」
「威力しょぼ」
「うっさいわねえ!!!!ほら!!!雑巾で拭け!!!」
私は怒られながら雑巾でアルルが出した水と一緒に汚れをこすりつけ床を綺麗にしていく。
出し惜しみしてたわけじゃないのは納得した。そりゃこの水の量と威力じゃ火事どころか焚き火も消せないや。
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