83 エルエル、ダンジョンから帰って来る!
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≪フォークテイルタウン北・めがみはうす≫
ダンジョンから帰るとすっかり日も暮れて外は暗くなっている。
今日は雲が多く夕暮れが幻想的だったけど夜は星空が見えにくい天候だろうななんて考えていたが、私はそんな物を見る暇もないくらい今日はくたくたに疲れて家の中でうなだれていた。
「はあ―――散々な目に会いましたねアルル~……」
「本当ねエルエル~……」
あの後、必死に出口まで走り崩れていくダンジョンからなんとか全員無事で脱出した。
私達が脱出した後、ダンジョンの入り口も崩れ去り大掛かりな工事をして掘ったりしない限りまた中に入る事は難しくなってしまった。
そして私達を囮にしようとしたエミーとユウギリを絞め上げながら馬車で家まで帰って来たのだった。
「きゃーはっはっはっは♡!! まあまあ目的は達成できたんだから細かい事はいいじゃなーい♡」
「「お前が言うなあああああ!!!!!」」
「ば、バイト代は出すのでござるっ」
「あははは!!みんなで冒険して今日は楽しかったねー!!」
そして私達はめがみはうすの中で美味しそうな料理が並んでいるテーブルを囲んで座っている。
ダンジョンから帰って来たエミー達はそのままこっちの家まで上がり込んで来てみんなで一緒に夕飯をいただく事になったのだった。
目の前にはユウギリが作ってくれた美味しそうな料理達。
ゆで卵が入ったサラダやアスパラ巻きや色とりどりな付け合わせと共にメインディッシュの"ニンジンのシチュー"。
そのまま食べても美味しいがパンをこのとろとろのシチューにつけて食べる。その際スプーンで一緒に鶏肉や野菜なんか乗せちゃったりして豪華なパンを作って一気に口に運ぶ。
「「「「「「おいしい~~~~~~!!!!!!」」」」」」
うーん疲れているのもあってとても美味しい。幸せだ。
「美味しいわ!!美味しいわあああ!!ユウギリの料理!!」
「くそっ!!お前ら毎日こんなもん食ってるとか羨ましすぎます!!」
「そうでしょ~♡ ま、勇者パーティは料理も一流ってわけ~♡」
「エミー様は作って無いけどね~」
「えへへでござる……」
「うむ!!絶品じゃ!!おぬし魔王軍のシェフにしてやってもよいぞ!!」
「「……」」
感想を言い合っていると横から一緒になって大声を出してくる奴がいる。
私達は椅子に座ってテーブルを囲んでいるメンバーの一人のそいつに目を向ける。
「ん?どうしたのじゃ?あ!わらわの分のパンはあげないのじゃ!!」
「「なんでお前が一緒に食ってるんじゃあああああ!!!!」」
「のじゃっ!?」
私とアルルは"そいつ"に向かって思いっ切りツッコんだ。
めがみはうすのテーブルの椅子には私とアルルとエミー達と……
なぜか魔王軍の幹部……さっきまで私達と戦っていたダンジョンのボス……
"ミュゼッタ"が座って一緒にシチューを食べていた。
「一緒にダンジョン脱出したんだよね~」
「うーむ敵との共闘というわけでござるな……」
「勇者が魔王軍の奴と一緒に夕飯を食べるなんて聞いた事ないわよ~。
……(いや、割とそういう感じのラノベとかアニメ見た事あるな……)」
「ったく、それ食ったら帰ってくださいよ」
「アンタ魔王軍っていう仲間がいるんでしょ。こんな所来てないでそいつらに頼りなさいよ」
「だ、だって昔の仲間達はしばらく会ってないからどこにいるか分からないし帰る所も壊れて無くなっちゃったしお腹もすいたし……
お、お願いなのじゃ~少しの間で良いからここに置いて欲しいのじゃ!頼むのじゃ!この通り!
あ、そうだ!!大魔王様のサイン入りブロマイドをあげるのじゃ」
「「いらねーよっ!!」」
「こ、こんな小さくてかわいい子を寒空の下に放り投げる気なのじゃ!?
鬼!!悪魔!!魔族!!……ね?ね?良いでしょ?きゅ~ん」
ミュゼッタは上目遣いでかわいいポーズをしながらお願いしてくる。うぜえ。
「魔族はあんたでしょ」
「ったく、さっきまで子供扱いされるの嫌がってた癖に都合良い時だけ子供ぶってんじゃないわよ」
「そういえばミュゼッタって私達よりずっと年上だったんだよね~」
「種族の神秘でござる」
「はっはっは!!ま、そういうわけでしばらく世話になるぞ!!
はいっ!!決まりっ!!さあ皆の者、食事再開なのじゃ~!!」
ミュゼッタはまたすぐに調子を取り戻し笑いながら強引にここに住もうとしてくる。
「はぁ……なんでこうなるのよ……エルエルなんとかしなさいよ」
「なんで私に言うんですか~……」
ったく、しょうがねえエミー達に押し付けるか。
「おい。"これ"お前らの所で"飼え"よ」
「はあ? な、なんで私達なのよ!?」
私はミュゼッタをエミー達が住むテントの方に置いておく様に言う。
「元はと言えば全部お前のせいでしょ。ルピーも屋台で稼いだ金あるだろうし別に一人や二人増えてもいいでしょ。そっちでお世話してくださいよ」
「勇者である私が魔王軍なんかと住めるわけないでしょ!! ていうかあのテント3人用だし~♡」
「うるせーバカ!!お前らが"これ"持って帰れ!!」
「はぁ!?私達には関係ないし!!あんた達が"飼いなさい"よ!!」
「お前が"飼え"!!」
「お前が"飼え"!!」
「お、おぬしら~~~……!!」
「「え?」」
エミーと言い争っているとミュゼッタはスプーンを握りしめながら怒りに打ち震えている顔をしていた。
「さっきから"飼う"とか"これ"とかわらわをかわいいペット扱いしおって……!」
「「かわいいは言ってない」」
「おぬしら、わらわを誰だと心得る!?あの全大陸を恐怖させた大魔王様の配下ミュゼッタ様なるぞ!!
わらわを舐めたらどうなるか思い知らせてやる!!はぁああああ!!」
ミュゼッタは両手の平を向かい合わせ"魔力"を練り合わせる。するとそこから黒いモヤが現れ魔法陣が天井の方に現れる。
「うわっ!!な、なによっ!?!」
「こ、こいつまたなんか魔法使う気ですよ!!」
「ええっ!?!やめなさいよ!!」
魔法陣の中からさっきダンジョンで見たモンスター"デッドリピート"が一匹、床にべちょっと落ちてくる。
「オオオオオオオオ……」
汚い。まだ何もしてこないがこんなゾンビモンスターが家の中にいるだけで精神的なダメージが効いた。
「は、はぁはぁ……す、水晶玉が無いと一匹が限度じゃな……」
「ちょっと!こんなモンスター家の中で召喚しないでよ!」
「あーっ!私の着替え踏まないでくださいっ!!」
「武器がないでござる!テントに置いて来ちゃったでござる!」
「よーし私の火で倒しちゃうよーっ!!」
「てぃ、ティオ待ちなさい!火事になっちゃうわ!!」
私達はワーワー騒ぎながらテーブル席から立ちデッドリピートとミュゼッタから距離を取る。
「ハハハハハハ!!!どうだ!!わらわの恐ろしさが分かったかーっ!!」
ミュゼッタは椅子の上に立ちドヤ顔をしながら腰に手をあて勝ち誇っている。
いや勝ち誇っているのは良いんだが……ひとつ気になることが……。
「あのう……"そのモンスター水晶玉が無いのにどうやって操るんですか"?」
「「「「あっ」」」」
いや言っておいてなんだが流石に召喚だけして操れないなんて事は無いだろう。
自分が安全じゃないのに近くにモンスターを呼び出すなんてそんな危険なだけな召喚魔法使うわけがない。
ミュゼッタだってそこまで考えなしのアホじゃないはずだ。
「あ……考えてなかったのじゃ……ハハハ……」
「「「「「は……はぁあああああ!?!?」」」」」
アホだった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
デッドリピートは私達を発見し、そして思いっ切り襲ってかかって来た。
「「「「「「ぴゃああああああっ!!!助けてえええええええっ!!!」」」」」」
私達は家の中でモンスター達から逃げ惑う。家の中でバタバタ逃走劇を繰り返したので散らかっている家が更に散らかる。
とんでもない冒険の一日が終わったと思ったら夕食もとんでもない事になってしまった。
そして≪ミュゼッタ≫……またしてもヘンテコで賑やかな仲間が増えてしまった。
これから私達の生活はどうなっていくのやら……不安が募るばかりである。
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ラピス様へ
今回は勇者達とダンジョンへ行きました。
モンスターや罠があってやばい所でしたが
なんとかなりました。ボスも私の機転に
よって勝利することが出来ました。
私って結構冒険者に向いているのかも。
戦闘用の魔法とか覚えて見るのもいいかなと思いました。
ラピス様もたしかそういう魔法使えましたよね
今度教えてください。教えてくれたら
バニーガールの服あげます。
エルエル
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≪現在の状況≫
【エルエル】
魔法 ≪グリーン・グロウ≫ ≪ボディー・ブロー≫
【アルル】
魔法 ??? ≪アルル式ドロップキック≫
所持品 手作り釣り竿x2 魚の干物 弓矢x1
バニースーツx1 妖精用スクール水着x1
所持金 5700ルピー
(日々の食費等 -300ルピー 無駄遣い-1000ルピー
エミー達からのバイト代 +100ルピー)
聖樹 開花率…………74%
これにてダンジョン回終了です。
次回からは家をお掃除します!
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