76 エルエル、囮を押し付けられる!
「こんな怪しさ全開の部屋に先に行けとはどういう事ですかコラ!!!」
「そうよそうよ!!」
「文字通りの意味よ~♡ ダンジョンにはこういうトラップが仕掛けられてそうな怪しい部屋がつきものなの♡
そ・こ・で・♡! 先に道を行って安全を確認する囮役がいれば私達は安全に進められるじゃない♡?
あんた達はその囮役として連れて来たってわけよ~♡ きゃーはっはっはっは♡!!」
朝から急に家まで乗り込んで来て詳細も話さずダンジョンへ誘って来て怪しいとは思っていたがこういう事か。
「はぁ~……結局こういう事ね……」
「やっぱこいつらクズですね」
「ご、ござっ!?……~♪」
「おとりってなに~?食べられるの~?」
ティオは今回の事がよく分かっていない様子でのんきな顔をしているが私とアルルが顔を向けるとユウギリは焦りながら天井を見つめ口笛を吹き始めた。コイツは知ってて黙ってたな。後でエミーと一緒に締めあげてやる。
「朝の特製サンドイッチ美味しかったわよね~♡? ま・さ・か♡
田舎者のあんた達ごときがタダであんな美味しい物にありつけるとは思わないわよね~♡?」
「いやまぁ美味しかったけど……」
「じゃあさっさと部屋に入って罠が無い事を確認して来なさ~い♡!!罠があったら頑張って生き残ってね~♡」
エミーは早く行けと私の背中をぐいぐい押してくる。ふざけるな。誰が行くか。
「お前が行けっ」
「きゃーはっはっはっ……えっ?」
後ろから押してくる手を横にサッと避けよろけたエミーの身体をトンッと部屋の方へ押してやる。
エミーは体勢を崩し部屋の方へ重心が傾いて転びそうになる。
「ちょ……ちょちょちょちょおおおおおおおおおお――――――!!!!!!」
「「「「わはははははははは!!!」」」」
片足を地面について腕をバタバタさせてなんとか重心を戻して転ぶのを阻止しようとしているエミーの姿は滑稽だった。私達は大爆笑。
「そうそう!!お前が囮になればいいんですよ!!わーっははははは……えっ?」
ガシッ
エミーは倒れながら私の服を掴む。当然私もエミーの転倒の勢いに巻き込まれ部屋の方に転びそうになる。危険を察知した私はすかさず周りの物に手を伸ばし転ぶ勢いを止めようとした。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
私はアルルの身体をとっさに掴んでしまった。そして当然アルルも倒れそうになりアルルもとっさにユウギリの服を掴み、ユウギリもとっさにティオの服を掴んで――――……。
「「「「「おげええええええええええええ!!!!!!!!!」」」」」
全員部屋の中に倒れてゴロゴロと転がり込んでしまった。
「な、何すんだてめえええええええ!!!!!!」
「うるさーい!!!こっちの台詞よ!!!!!」
「ちょっと!!!どこ触ってんのよおおお!!!!!」
「うにゃ~……いたいよ~」
「ご、ござる……」
ガシャーン!!
「「「「「えっ!?」」」」」
転んでもみくちゃになってギャーギャー騒いでいると今入って来た入口の扉が勝手に閉まる。
「うわっ!?と、扉が閉まった!!」
「なに!?なに!?」
「え!?な、なんで!?ほ、本当に罠があるの!?」
「あ、開かないでござる!!」
「と、閉じ込められたわああああああ!!!」
ユウギリが扉を開こうとするが扉は完全にロックされ私達はこの怪しい部屋に閉じ込められてしまった。
入って来た方向と逆方向にも扉があるがそちらも固く閉ざされていて開く事はなかった。
「うわーどうするのよこれええええー!!!!」
「だ、だから言ったでしょ!!あ、あんた達が囮になれって~!!」
「うるせー!!お前は黙っててください!!!」
『クックック……愚かな侵入者よ……』
「「「「「えっ!?!?」」」」」
私達が騒いでいるとどこからともなく部屋に響く何者かの声がしてくる。
「な、なにこの声……!?」
「どこから聞こえてくるの……?」
「≪通信魔法≫でござるな……。遠くへ声を届ける少し高度な魔法でござる」
「何者ですか!?!お前は!!」
「アンタが私達をハメたのね!?」
私とアルルはどこから声が聞こえてくるかよく分からなかったがとりあえず天井に向かって叫んだ。
『クックック……わらわはこの大陸の支配を目論む"大魔王軍幹部の一人"
……このなぞの遺跡を守護する美しき魔族!!
≪ミュゼッタ=ハイムゼート=マノン≫と言うのじゃ!!!』
「「「「「だ、大魔王軍の幹部だってえええええ!?」」」」」
声の主は大魔王の幹部だと言う。すべてを見下し見透かした様でそして聞く者すべてを魅了しそうな妖艶な声……どうやら女の様だ。
大陸の支配だって? なるほど、コイツがエミー達が倒そうとしている悪い奴の一味って事か。
『道中わらわの作り出した雑魚モンスター達ごときを倒して良い気になっておるようじゃが……
わらわの強さはそんなものではないのじゃ……クックック……』
このミュゼッタと名乗る奴はどうやらさっきから何らかの方法で私達の様子を見ていた様だ。
「ククク……アンタがボスってわけね♡! 勇者である私がお前を倒してみせるわ~♡!きゃーはっはっはっ♡!!」
『右手に"雷の紋章"……"勇者"か……クックック久しいな……それを見るのは何年ぶりじゃのう……』
「ククク……♡」
『クックック……』
この2人知能のレベルが近いのかお互い気持ちよさそうに会話している。
『100年前の予言では大魔王様が再び目覚める頃、勇者の末裔がまたしてもここへやってくると聞いたのじゃが……まさかその通りになるとは……クックック……』
「エミーお前ってそんな凄い奴の子孫だったんですか?」
「ん……?紋章は手にあるけど……これあっちの世界から来た時に……いや、なんか変な奴に授けられただけで子孫代々受け継ぐ物とかじゃないと思うんだけど……私のママもパパも別に普通に両親だし」
『えっ』
「エミー様はすごーい人に選ばれて勇者になったんだよね~!」
「という事は……奴めが言っている事はどういう事でござるか……?」
「それっぽい事言ってカッコつけてるだけじゃない?」
「そう考えるとなんかすげえバカっぽそうに聞こえてきましたねこの声」
『う、う、うるさい!!うるさい!!うるさいのじゃあああああ!!それっぽい事言っても別にいいじゃん!!
ノリの悪いおぬしらみたいなのは嫌いなのじゃ!!許さんのじゃ!!くらえ!!!罠発動!!!』
ブシューッ!!
「わあっ!?な、なんだあっ!?」
「うわっ!!壁から水がっ!?!!」
「おえっぷ!!」
ミュゼッタは間違いを指摘されると急に気取った喋り方をやめ焦り出し叫ぶと壁に設置されている不気味なモンスターを象った銅像の口や壁の穴の中から何かの透明な液体が噴射される。
その液体は部屋中にまき散らされ当然、その中にいる私達の全身にも付着しびちゃびちゃになる。
「ぎゃー!!ど、毒でござるか!?」
「えぇっ!?嘘!?毒ーっ!?!……い、いや毒じゃない……なんともないわ……」
謎の液体をかけられみんな一瞬驚いたが身体が濡れただけでなんとも無かった事に目をぱちくりとさせる。
「えっ?じゃあこれ何―――――……へ?」
シュワシュワと音を立てて何かが溶けていく音がして体の方を見てみると……。
「「「「「きゃああああああああっ!!!服が溶けてるーっ!!!」」」」」
服が溶けていた。
『ワッハッハッハ!!それは"服だけを溶かす液体"じゃーっ!!』
「「「「「なんじゃそりゃああああああああああああ!?!?!」」」」」
私達は全裸になり身体を隠す為その場にうずくまった。
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