70 エルエル、花火を見る!
●
≪フォークテイルタウン北・めがみはうす前≫
「はぁ~結局優勝は逃しちゃいましたね~」
「げ、元気出してください~」
「まぁいいじゃない楽しかったんだから」
「へへっ、そうだな。なんだかんだで楽しかったぜ」
屋台も完売し周りも店を畳み始めている所もあったので私達も周りの人達に挨拶してから撤収して、めがみはうす玄関前の階段に座りこみ一息ついていた。
周りにろくな照明もなく家の中も電気がつけていなかったが、町の中央の方に見えるお祭りの大きい明かりで照らされて祭りの喧騒を遠くから感じるのに丁度いい環境だった。
「やっぱ、金魚じゃないと駄目だったんだな~」
「ていうか結局金魚ってなんなんですか?もっと小さい魚って言ってたけど……」
「あぁ、赤色で小さくてかわいい魚なんだぜ。今度ばあちゃんが飼ってるの見せてやるよ」
「リンネットごめんなさい私達がその魚探せなかったせいで優勝逃して……」
「そうですよ。ボロニアも謝ってくださいね」
「え、え、え~~!?ご、ごめんなさい~~っ!!」
「なんでそうなるのよ」
アルルに肩をパンチされた。
「い、いや!良いんだ!多分この辺にいない魚だって知らなかったオレが悪かったんだ!そ、それに……本当は優勝とかじゃなくて友達欲しかっただけだし……」
あ……そういうことか。また最後の方が小声になって聞き取りにくかったが今回は聞こえた。
変な登場をしてきた奴だと思ってたけどそういう理由があったんだな。
「おいリンネット」
「えっ!?な、なんだ?」
「お祭り終わってもまたいつでも遊びに来てくださいよ。私達はいつでも遊び相手欲しいですから」
「あ……ああ!!」
さっきの声は聞こえなかったフリをしてリンネットをまた遊びに来る様に誘った。
もう友達だろって直接言うのはちょっと恥ずかしいからこんな言い方をした。そして、笑顔のリンネットに少しだけ笑い返した。
「ふふふ……そうねいつでも遊びに来なさいよ!ね?エルエル!」
「え、エルエルさん素敵です!」
「な、なんだよお前らその顔……」
アルルとボロニアはニコニコしながら肩をぽんぽんと叩いてくる。ちえっ。お前の時にも同じ様な事言っただろボロニア。
「あっ!いたいたーっ!!おーい!!」
「お姉ちゃん達ー!」
「エルエル殿アルル殿ー!!」
フィオナとティオとユウギリが手を振りながら向こうからエミー達が歩いてくる。みんな何かを両手に抱えてるのが見えるが暗くてよく見えないな。
「なんだお前らも屋台や仕事終わらせて来たんですか?」
「それでそこで勇者さん達に会ったのです!」
「あれ……?あれ!?どうしたの!?!」
「え?どうしたんですか?」
「何かあったの?」
エミーは私達の方に駆け寄り不思議そうな顔をして耳に手を当てる。
「あんた達から『勇者様優勝おめでとうございます!』の声が聞こえてこないんだけど~♡?」
「「うざっ!!!!」」
アルルとハモった。
「お、おめでとうございます~!!」
「な、なんか凄い奴だなコイツ……」
「きゃーはっはっは♡!! 無様な敗者に勝ち誇るのは気持ちいいわね~♡!!」
「ったく、アンタ達自慢しに来ただけ?」
「ちっ、はいはい今回は私達の負けですよ」
「きゃーはっは♡!! まぁ、それもあるけど~……
あんた達どうせ自分の屋台の事しか頭になくてろくにお店回ってないんでしょ♡?」
「まぁそうですけど……」
「あー確かに色んなもっとお店回りたかったわねー」
「ふん、効率悪い連中はこれだから困るわ~♡……っと!」
ドサッ!!
エミー達は両手に抱えてた何かを私達の横に置く。
「これは……?」
「あっ!た、食べ物よ!!食べ物!!」
「こっちには飲み物もあるぜ!!」
「ど、どうしたんですかこれ~!?」
そこには屋台で売ってた食べ物や飲み物……お祭りを回れば買えたであろう物がたくさんあった。
「まだやってるお店で買って来たりして来たんだよ~!!」
「優勝記念にと町の人達から無料でもらったのもあるでござる!」
「私達少年団からは飲み物のサービスなのです!!」
「えっ……い、いいのかこれ!?」
「あ、ありがとうございます~~!!」
「し、しかしなんでまた……」
「だって"宴"には飲み食いは必要でしょ♡」
「「「「"宴"……?」」」」
「そう♡!! "勇者様優勝おめでとうございますの宴" をするためのね~♡!!!」
「「「「お、美味しい~~~~~~!!!」」」」
「この焼いたイカ美味しすぎます!!!!」
「このトウモロコシも美味しいわ!!もぐもぐもぐもぐ……」
「こ、こ、この飲み物シュワシュワしてます~!」
「くぅ~!祭りと行ったらやっぱ食わなきゃだよな!!」
エミー達のテントからテーブルや椅子をみんなで持って来る。足りない分はめがみはうすの中にある椅子(外で使う用ではないが)を持ちだして来た。
そしてみんなで席についてテーブルの上にはエミー達が持って来た食べ物や飲み物でいっぱいになる。
エミー達が作っていた勇者焼きそばの残りも持ってきてくれたみたいだ。すごく嬉しい。
私達はそれを囲んで座り祭りの喧騒を遠くに聞きながらみんなでちょっとした宴を開く事にした。
エミー達が持って来た屋台の食べ物……初めて町に来た時に食べた串焼き肉を思い出すジューシーさ、このジャンク感最高。
「エルエルお姉ちゃん美味しいのです?」
「美味しいです!お祭り最高ですね~!!」
「うん!最高でござる!!」
「えへへ~アルル美味しいね~?」
「そうね~~幸せね~~~もぐもぐもぐもぐ」
「ゆ、勇者さんありがとうございます!こんな頂いて……」
「あぁ、こんなに食べ物貰っちゃっていいんだぜ?」
「きゃーはっはっは♡!! 良いのよ良いのよみんなが楽しんでくれれば~♡?
で?で?で?こんな場を用意してくれた上にコンテスト優勝した―――――???」
「「「「「"エミー様はすごいでーす"!!!!!」」」」」
「き、気持ちいい……♡」
私とアルル以外は声を揃えてエミーを褒め称える。まぁ心の底から褒めてると言うよりさっきから何度もエミーに振られてやらされてる内にもうみんなで盛り上がるための掛け声みたいになっているんだが。
「はぁ~……珍しく親切かと思ったらこんな事言わせる為に設けた場とは……」
「アホですねコイツ」
「あれ?あれあれあれ?なんか田舎者の方からは声が聞こえなかったみたいだけど~~♡???」
「あーもう……」
「「"エミー様すごーい"!!!!!」」
「きゃーはっはっはっは♡!!!」
ま、食べ物持って来てくれた事は嬉しいし今回は素直に褒めといてやるかな。
と、その時―――。
パーン!
「うわあああああっ!!なんですか!?!?!」
「わっ!!!爆弾よ!!爆弾!!!」
何か大きな音と共に空が一瞬明るくなったのにビビって私とアルルはテーブルの下に隠れようとする。
「ぷっ!きゃーはっはっは♡!!なにやってんのよあんたら♡!!」
「あはは!アルルとエルエルおもしろ~い」
「ござぷふーw!」
「お姉ちゃん達!空を見てほしいのです!」
「「えっ」」
私とアルルはおそるおそるさっき音がした方向を見上げる。
パーン!
パーン!
「「わぁぁ……!!」」
見上げた夏の夜空には明るく綺麗な花が咲いた。それも何度も何度も。
その美しさに私達はつい笑顔になってしまった。
「わ、わぁ~花火です~!!」
「おおっ!大きいなあっ!!」
「あれ花火なんですか!?」
「花火って手に持つ小さい奴じゃないの?」
「あれは打ち上げ花火って言う大きい花火なのです!」
「花火をバーンって大きくしてどどーんって打ち上げるんだよ~!!」
「この町も打ち上げ花火の文化があるんでござるな……風流でござる……」
「夏って感じね~♡」
「ほぇ~……」
「綺麗ですね……」
みんな食べる手を止め何度も打ちあがるその花火を見上げその美しさに見惚れていた。
友達と何かを食べながら一緒の物を見る。なんだかとても幸せな時間を過ごしている気がする。
蒸し暑さも残る中少し涼しい風が吹き夏の終わりを感じて物寂しい気持ちにもなった。今回は失敗が多かったけど行事に参加出来て良かったなとも思う。
私達は花火の光と音に包まれながら楽しかった蒼橙祭の終わりを迎えた。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
面白かった方、続きが気になる方、応援してくださる方は
下の☆☆☆☆☆から評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです!




