表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

現世に堕ちた死神

 「はぁー。なんでもするなんて言ってはいけないねぇー。」

 のどかな丘の上、冬を超えて新たな草木、花が芽吹く季節。日差しが気持ちいいが風はまだ寒い。

 マナン一行は大量死が起きた村に向かっている。ウリカの屋敷から直接飛べるが不審を招くので少し離れた場所に飛び、徒歩で向かっている。

「なぜ私達も同行させられているのですか?」

 ヒイラギが頭一つ背が低いマナンを睨みながら尋ねる。アセビと共に「夢」を開発している途中で呼び出されたのでとても不機嫌だ。

「まあまあヒイラギ姉さん。落ち着いて。」

 ランがヒイラギをなだめる。

「ですが私も気になります。戦闘タイプではない私達を同行させる理由をお教えいただけますか。」

「教えなくてもわかるでしょ。もし大量死の原因が人間にも感染していたらヒイラギちゃんの医術が必要。ランちゃんは家畜のスペシャリスト。牛の病気・疫病に関しても一流でしょ。原因究明には必要だと判断して連れてきたの。」

 マナンの抜け目のない説明に二人とも黙る。

 彼女はマイペースで酒好き、だらしないと思われているが時折見せる異質さはみなを圧倒させる。

「ではなぜ母様はマナン様を選んだのですか?」ランは訊ねる。

「さあね。ウリカは大量死の原因を私に除去させるんじゃない。どんな形であっても。」

 頼まれた理由をはっきりと理解できていない。だが、少なくとも面倒ごとであると確信していた。


 村に到着し、村長に大量死について訊ねた。私達は国から派遣された調査団であると話を通した。

 大量死は一週間前に起きた。飼育していた牛が二十四頭、ヤギが八匹が不審死した。

「そこの家主は感染症だと判断して、すぐさま残りの家畜をすべて殺処分しました。不審死した死体も燃やしました。ですが翌日隣の家の牛も死んでしまいました。近隣に住んでいたのはその家のみでしたのでこれ以上感染することはない安心してました。」

 話を一区切りすると、村長は俯いて黙る。彼の額から汗が滴る。

「一週間過ぎた後のことでした。感染した家から離れた場所で牛が二匹頭にました。」

「その二頭が元々病気やケガがあったということでは」

「病気やケガであってほしかったです!しかしどちらでもない。さらに恐ろしいのは他に放牧していた牛や豚、羊は異常が見られないことです。」

 ランの質問を遮って村長は声を荒げる。その顔は恐怖で現実を受け入れられていないようだった。

「お願いします。早く原因を見つけてください。これ以上被害にあっては納めるどころか食糧難に陥ってしまいます。」


 マナン達は村長宅を出て、被害にあった家に向かった。

「なんであんなに追い詰められているんだ?」

 ヒイラギが表情を変えず疑問を口にする。

「この国は納税額が高いんだよ。今から貯めないと間に合わない。納められないと責任はすべて村長にくるし。」

「なるほど、家畜や加工品を売りたいけれど衛生的安全が認められないから立ち往生なわけですね。」

 話しているうちにマナン達は目的地に到着した。

 三件目の被害にあった家だ。死体を残してもらっているため早速ランが死体と家畜を調査した。

 その間マナンは被害当時の状況を聞いた。

「死んだ二頭は他の家畜たちとの違いはありましたか?」

 聞いているのはこの家の奥さんだ。他に旦那、子供が二人いてヒイラギに診察を受けている。

「特徴がある子たちではなかったのですけど・・・あっよく山の麓の方によくいる子たちでした。」

 彼女の言う山はこの村を出て少し歩いた先にある山脈だ。

 その後旦那と子供たちと入れ替わる形で三人に話を聞き、放牧地などの調査に移ったが核心にいたることはなかった。


 次に一行は一件目と二件目の家に向かった。その道中三人は情報を整理した。

 ランが調査した結果、死因は心拍停止によるものでした。しかしそれを引き起こすような病気や怪我は一切なかったらしい。逆に他の家畜は異常は見られなかった。また四人の診察はこれといった症状はなかったようだ。

「これで一つはっきりしたのは感染症はシロということか。」

「そうだな。残りの奴らに症状がなければ可能性は薄い。」

「魔獣という線も薄いですよね。外傷が一切ありませんし。何か食べたわけでもないですし。」

 魔獣とは神器の影響を受け、独自の進化を遂げた動物のことだ。家畜など一般の動物と違うのは、特有の性質の気を持ち使いこなすところである。

「一番怪しいのはあの山だな。」

 ヒイラギは村を見守るように鎮座するそれに目を向ける。

 山肌はまだ中腹まで白く、村の人達は春を迎えてから入っていなかった。


 マナン達は三日かけて残りの被害合った家や村民の健康状態、放牧地の調査を行った。

 調査結果をまとめ、村長に報告した。

「・・・山ですか?」

 予想外の結果だったのか村長は困惑の顔を浮かべる。

「はい。まず第一に今回の事態に感染症や毒性の食べ物などの可能性は低いです。ですので死んでしまった家畜以外の家畜や人には異常は見られませんでした。そして死んだ家畜の共通点は山の麓側によく行くというものでした。ここで一つお尋ねしますが、冬を越してから誰も入山していないんですよね。」

 感染症ではないことに安堵する村長に問いかける。

「はい。雪も解け切ってないので。」

「私達はこれから山の調査を行います。ご協力をお願いします。」









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ