そんなの関係ない
あの後、俺は休むこともできず眠れなくなっていた。
眠たいけれどなかなか眠りに着けない。
そんな中俺はあることが気になっていた。
俺が死んだあの後あれはニュースなどで取り上げられているのだろうか。
俺はスマホで自分の記憶を頼りに調べていた。
すると不可解なことにいくら探しても出てこないのだ。
普通出てくるはずなんだが、俺はただデータなどに残されていないだけだと思いそれ以上の詮索をやめた。
そしてそのあとは何もなく、俺はさっきまでのことを忘れるように眠りについた。
そしてその朝、俺らは買い物をしに行こうという風な話になって今ショッピングモールにいる。
なんとなく周りを見回していると、その一人が俺の目に留まった。
車椅子に乗っていて、一人の女性に押してもらっているその男性を。
その二人は終始にこにこしていて、見ていてほっこりした。
ん?まてよ、おかしい、そんなワケがない。俺は瞠目した。
その女性がその人に言った言葉がおかしいんだ、今、
「遼真くん、って言ったか?」
ちが、違う。そ、そんなワケが無い。
だってそれは、俺の前世の名前なのだから。
少し遠くて顔も見えなかった。
そして俺が近づいてその去り際にそう言ったのだ。
俺はすぐに追いかけた。
そして見つけてばれないように近づく。
俺は理解が追い付かなかった。
だって、だって、
そして俺は誰にも聞こえない声量で呟く。
「なんで前世の俺と亜里沙がここにいるんだよ、」
俺はそのあと少し心を落ち着かせ、はぐれてしまった三人の元へ向かった。
その三人に俺は一人になりたいといって屋上に向かっていた。
そこには誰もいなく俺は落ち着いて思考した........
そして。
「大河君、屋上に呼び出してどうかしたの?」
亜里沙は心配しつつもそう優しく聞いてくる。
「さっきも急にどっかに行って大丈夫なの?」
その言葉にに俺は、
「亜里沙、俺達この世界に必要かな。」
それに亜里沙はノータイムで叫ぶように言った。
「少なくとも必要じゃないワケないじゃん!!」
怒っていた。そんなバカなことを言う俺に。
俺は亜里沙の言葉なんか気にもせず、
「さっき、前世のおれを見たんだ。そして亜里沙もそこにいた。」
だから、と俺はそう付け加えて、
「俺は考えたんだ。ここは俺たちが死んだ後の世界なんかじゃない。」
その事実に亜里沙は驚きの顔を見せた。
「ここは、、、俺らが死なないで幸せに暮らす世界だ。だからこそ俺たちは主人公なんかじゃない。」
転生したという報道も探したがそんなものは一つとしてなかった。
だからこそ俺らしか転生していない。
でもあの二人の前じゃ俺らはただの偽物の主人公だ。
「だから、俺らみたいな紛い物は必要ないんじゃないか?」
俺は手で顔を覆い、
「俺たちは、この世界に要らないんだ。」
「俺はあの二人の笑顔を見て気づいたんだよ、俺らがここで笑っていいワケが無い。」
「だって俺が二人、亜里沙が二人いていいワケが無い。だから!!」
と俺がそこまで言って亜里沙は冷静にそう言った。
「別にそんなの関係ないじゃん。だって私達亜里沙と大河、でしょ?違う?」
その言葉に俺は涙した。
「あっちが主人公でも関係ないよ。だって私たちの中では私たちが主人公でしょ?」
そこで彼女はにこっと笑った。
俺はやっと気づいた。本当は同じなのかもしれない。
でも、俺は今の亜里沙がさっき見た同一人物とは違う唯一無二だと胸を張って言える。
そして俺は感情を抑えきれなくなり、
「亜里沙、ありがとう。」
そう言って俺は亜里沙を力いっぱい抱きしめた。
俺は過去も今も未来も、亜里沙に対する気持ちは変わらない。
だから、だから、
「一生一緒にいてくれないか?亜里沙。」
その言葉に亜里沙は太陽のような明るい笑顔で、
「ええ、喜んで!!」
そう返すのだった。