浅木さんの話1
「あれ、誰だろうな? 声をかけて来ようか?」と男子が言い合っているそばを通り過ぎながら、校門に行ったら、
「真珠ちゃん」と呼ばれてそちらを見た。
「知ってる人?」友達に聞かれたけれど、
「ごめん」と言って浅木さんのそばに行った。
「元気そうね」
「なんですか?」
「ちょっと、頼みがあって」
「学園祭のことなら」と言いかけたら、
「東条君のこともね」と微笑んでいて、
「私は、彼のそばにいたくないから」
「そう? 仲は良かったでしょう?」
「いえ、全然」と言い合っていたら、男子が寄ってきた。
「おい、紹介しろよ」と言われてにらんだ。
「美人と知り合いなんて、教えておけよ」男子があっという間にそばを取り囲んで浅木さんに質問していた。学校名、名前に、携帯番号まで聞き出そうとしていて、
「呆れるなあ」と言ったけれど、男子は全然聞いてもいなくて、
「月野に御用ですか?」
「占いしかできない女ですけれど」と言い合っていて、
「占いを頼みたいと思ってね。学園祭で頼んでいたのに断られてしまって」浅木さんが教えていて、言わなくてもいいことを、それを言ったらきっと……、
「それはいけない。月野、わがままだぞ」
「そうだ、美人の頼みを断るなんて、生意気だな」
「お仕置きしてやりますから」案の定、勝手なことを男子が言い合っていて、どう見ても、美人の前でいい格好をしたいだけの発言としか思えなかった。
「出ろ」と男子が命令してきて、そのうち、何人かが集まってきて、「でーろ、でーろ」と「出ろ」コールをやりだして、うっとうしくなって、
「はいはい、分かりました」と答えたら拍手に変わっていた。お祭り好きなんだから……とにらんだけれど、勝手に盛り上がっていて、こちらの様子には気づいていなかった。