分からない男10
「神宮寺?」と声をかけたけれど、振り向いてもくれなかった。家に入ったら、
「喧嘩?」母が私の様子を見ていたらしくて、聞いてきた。
「怒られた」
「かなり心配していたわよ。神宮司君、東条さんのよくない噂を聞いたらしくて、それで心配して、わざわざ来てくれたみたいよ」
「え、そうなの?」
「友達と一緒に出かけたらしいけれど、その友達が教えてくれたらしくて」
「悪いことをしたな。今日、神宮寺に誘われていたのに」
「学園祭の打ち合わせと言っていたじゃない」
「半分はね。半分は違うみたい」
「あら、なに?」
「良く分からない。あの人、どうして近づいてきたんだろうね」
「真珠に興味があるだけでしょうね。占い師としてね」
「見習いの卵になったばかりで占い師と名乗れないぐらい未熟だよ」
「多分、あなたのことを相当気にしているのかもしれないわね。そういう能力だけはあるのかも」
「え、何の能力?」
「相手の力量が分かる能力よ。彼はライバルになりそうな相手をマークしているだけでしょうね。彼の占いを直接見たんでしょ? どうだった?」
「さあ、お客は喜んでいたよ」
「接客の仕方とか、そういう部分じゃないわ」意味が分からなくて、母の顔を見た。
「まあ、いいでしょ。そのうち分かるでしょうから。ほっときなさい。宣伝のためと割り切って、それなりにつきあえばいいでしょ」
「お母さんって、すごいね、そういうところ」
「女一人で生きてると流すところは流さないと、疲れるわよ」
「お母さんに似ちゃったね、私。面倒だと、自分が悪者にされても流しちゃうところがあるって、怜奈ちゃんに怒られた」
「自分が悪者にされるってどういうことよ」母がちょっとむっとしていた。
「お母さんだって、あるでしょ。占い結果と実際の結果がこちらは当たったと思っていても、相手は当っていないと言い張ったり、納得してなかったり、振られたら私のせいにされたことが何度かあるから、それで『謝らなくてもいいのに』と、怜奈ちゃんが怒ってた」
「ああ、それね。確かにお客様相手だと、相手の気持ちが一番大事だからね、客商売だとそういう部分でこちらが泥をかぶると言うか謝るケースはあるわね。それなら、納得ね」
「お母さん、変わり身はやい」
「後まで引きずると占い師としては大変なの。あなたも切り替えるようにしなさいね」
「お姉ちゃんはお母さんに似たんだろうね」
「神寺寺君も仲直りしておきなさい。心配してくれて、勉強でもお世話になるんだしね」
「お母さん」と言ったけれど、聞いてなかった。お世話になる人だから仲直りするっと言うのがどうも苦手だ。それより友達だから仲直りしたいと思った。




