落ちた理由1
*あらすじを考えたのがかなり前なので、時代設定が古くなっています。
*この話は、フィクションです。名称が多数出てきますが、架空のものです。占い内容や占い方法などが出てくる場面もありますが、全て作者の想像ですので、実際のものとは異なります。
秋子さんに教えてもらった占い専門店「ルーカス」で、本を調べていた。すっかりなじみになっているため、
「何を調べてるんだ?」店のおじさんに聞かれた。おじさんは趣味が高じて、こうやって占い関係のお店を開いているけれど、元々は違う職業だったらしくて、占いは好きだけど、占い師をしていたわけじゃなく、見習いの私のことも心配してくれていた。今日、来た理由を教えたら、
「あそこは難しいだろうねえ。何人か受けた人の話は聞いたよ。受かった人は女性が多いそうだ」
「女性?」
「そう、しかも美人でかわいい子だそうだ。若い人が多いと聞いているよ」完全に自分の趣味じゃない。そう考えていたら、お店に誰か入って来た。
「あ?」と思わず声が出た。その声に気づいて、相手がこちらを見た。
「何だ、お前か」お前呼ばわりされて、むっとなり。
「コネ合格者が何か言ってる」とつい、言ってしまったら、
「コネじゃない。実力だ」
「ふーん、女性が多い職場に今年は男性が一人だけ合格って、コネでしょ」
「誤解だ。俺は実力で合格したんだよ」
「嘘ばっかり。コネで就職して、そうやって女性と知り合う機会を増やそうとして」この間とは違う女性が隣にいたので、つい、そう言ってしまった。今度もなれなれしい態度でそばに寄り添っていて、どう見ても恋人同士に見えた。いったい、何人の女と付き合ってるか分かったものじゃないな。学校にいる、評判が両極端の男子、大村君を思い出した。彼は女に手が早くて有名だった。ポイ捨てばかりしているために、私はあまり好きじゃなかった。
「逆だ」逆?「何が、逆よ」と言いたかったけれど、関わりたくなくて、
「話しかけないで」とおじさんのほうに顔を戻した。
「あそこに合格しなくて良かった。こんなやつと顔を合わせなくて済んだから」
「お前では無理」勝手に口を挟んできて、相手にしたくなくて無視していたら、
「真珠ちゃん、この人?」おじさんに聞かれて、
「東条圭吾の息子。サバトのコネ合格者」
「コネじゃない」と言い合っていたら、
「失礼な人ねえ。ほっといて行きましょうよ」そばの女性が甘えていて、
「ああ、あの有名な人か」おじさんはごく普通にしていた。
「お前、自分が落ちたからって、おれにやっかむな」
「そんな理由じゃない。あなたみたいな人が嫌いなだけ」
「表面だけ見る女だから落ちるんだよ」
「あなただって、同じでしょ」
「俺の占いしていたところは見てないだろ」
「軽く見た」多分、人だかりになっていたところだろうと検討をつけてそう言った。そこまで確信はなかった。
「見てないな。そばにいなかったはずだから」
「何で知ってるのよ?」
「商売柄、顔を覚えるのは基本」
「ふーん」
「お前が落ちた理由、教えてやろうか」
「何が分かるっていうのよ」
「お前は基本が全部なってない」
「基本って?」
「接客態度がまず駄目。言葉遣いが丁寧じゃない。ため口で話してどうするんだよ。友達じゃないんだしね。それから、相手のことが全然分かってないな。あれじゃあ、気落ちして帰ってしまう。だから、落ちた」自分でも落ち込んでいたのに、こいつに指摘されて面白くなくて、
「ふん」と横を向いた。
「相手の立場も分かってないし、望みも分かってない。しかも、世間知らずもいいところ。相手に見当違いな事を聞いて、どうするんだよ」自分でもそこは未熟だったなと反省はしていたけれど、こいつにだけは言われたくなかったので、
「あ、そう」とそっけなく横を向いていた。
「最後のもおかしいだろ。何が20パーセントだ。他の占い師は誰もそんな結果は言わないぞ。数字で表せるような内容じゃなかった」
「だって、それはそう思ったから」
「思った?」
「カードじゃなくて、彼女を見て、そう思ったの」と言ったら、相手が黙った。
「相談者を見てそう思ったんだから、いいじゃない。カード結果をどう膨らませるかは、占い師が考えることでしょう」
「経験不足のお前には言われたくないな。もっと、よく考えろよ。あれでは合格基準が90だとすると、20も行けばいいところだ。あれで、よく受ける気になったよな」
「コネの人に言われたくない」
「コネじゃないさ。しょうがないな。教えてやるよ。お前の未熟さをね」と言われて、驚いていたら、いきなり腕をつかんできて、
「行くぞ」と言ったので、
「え、わたしは?」隣にいた女性が怒り出して、
「悪いけど、また、連絡するよ。急用ができたから」優しく声をかけていた。二重人格に違いないなと思った。