頼む子3
電話を切った後に、
「あいつか?」後ろから声を掛けられて振り向いたら神宮寺がいて、
「デートどうだった?」と聞いた。聞かないのもおかしいかなと思って気軽に聞いたけど、苦い顔をしていた。
「ごめん」
「強引に呼ばれてね。それで行ってみた。でも、会話が続かなかった」
「残念」
「今度で何度目か」
「そう? 神宮寺なら合わせられるでしょ」
「合わせられても、自分が楽しいかどうかは別」と言ったので、
「なるほどね」と言ったら、こっちを見ていて、
「ごめん」と謝った。
「謝るなよ。お前にそんな顔をしてほしくて申し込んだんじゃないぞ」
「分かってる。ただ、もっと気軽にデートぐらいできたら良かったなと思って」
「お前は占いしている割には堅いからな」
「お父さんにちゃんと紹介できるようになってからって、どこかで思ってるからね」
「そうか」
「お金を貯めないと」
「貯まりそうか?」
「まだまだ、営業努力が足りなくて」
「気長に頑張れよ。卒業するまでに貯めるんだろ」
「夏休みに行けたらいいけどね。多分、無理。思い立ったのが遅すぎた」ここまで本格的にお金を貯めたいと思ったのはサバトの受験前だった。その前は漠然といつか行けたらいいなと思っていた。でも、雪人さんを好きになったことをちゃんと報告したいと思って、それでバイトを始めた。学校には最初、母子家庭でお金が足りないからと説明したけれど、それだけだと姉が働いていることもあって納得してくれそうもなかったので、しょうがなく父の話も加えた。それで先生も渋々認めてくれた。バイトの許可をもらっているのは親が病気になってやむを得ず生活費の足しにするためとか、母子家庭で色々とお金が掛かるとか、進学のための学費を稼ぐためと言う人が多い。
「ゆっくり頑張ればいいさ。俺も一緒に探してやりたいけどな」
「いいよ、神宮寺は大学に行ったら、誘いが増えるだろうし」
「卒業したって、真珠とは友達だからな」と言ってくれてうれしかった。