見習い初日1
お店に友達が何人か来て、手伝ってくれた。面白そうだからと言う理由の子もいたし、待ち合わせ前に冷やかしに来たと言っていた子もいたけど、一人、実験台になってくれて占った後に興味が無くなったのか、ほとんどが帰っていった。
「占いって、商売にするには大変なのかもしれないね」怜奈ちゃんが笑った。お客さんがほとんど来てないからだ。秋さんの予約と母の馴染み以外は来ていなかった。
「怜奈ちゃん、手伝ってくれて、ありがと。デートしてきてもいいよ」
「午後からだから」と軽く言ってくれて、
「いいなあ、デート相手が次から次へと」
「だったら、神宮寺を断らなければいいでしょ」と言われてしまった。結局、神宮寺とデートするとは返事できなくて、
「友達としてならいいんだけど、なんだか、それだと悪くて」
「真珠は気軽にデートできないタイプだもんね。あの人で練習してるんじゃないの?」
「誰?」
「東条さん」と言われて、母のほうを見た。気づいていなかった。
「無理。あの人の場合はそういう対象には見られないよ」
「向こうはしっかり見てると思うけど」
「占い師として興味をもたれるって、ちょっと嫌だからね」
「そう? それも最初の取っ掛かりとしてはおかしくないでしょ。容姿から入る、条件から入るのとそれほど違いはないでしょ。同じ趣味から入ってるんだからね」
「趣味じゃないってば」
「でも、同じことに興味があるってことだもの。それだけで話が弾むからね」そう言われるとそうかもしれないけどなあ。
「でも、あの人と何もかも違いすぎるよ。価値観が全然違う。見栄っ張りで高級なものに囲まれたいタイプと私ではね。超庶民の小市民は相手にもしないって感じの人たちと付き合ってるよ。美人とかわいい子以外は女じゃないと思っている高津と同類の垣根を感じる」
「高津はほっときな。ああいうやつは死ぬまで直らないって言ってたよ。鴻上さんが」鴻上さんは高津のこともクラスの男子のことも、もっともらしく分析していた。ただし、つい、みんながうなずいてしまうぐらい説得力があった。
「鴻上さんって、いったい何を見てきて、ああいうことが言えるんだろう」
「さあね。親か兄弟の影響でしょ。ほとんどの子がそういうのに影響されているだろうからね」
「価値観の違いかあ。高級車に乗って、女の子とデートをいっぱいしたら恋愛に詳しくなれると思う?」
「無理じゃない。あしらいが上手になるかもしれないし、こう言ったら喜ぶ、こう言ったら怒られるって境界線が分かる程度で、相手に真剣じゃなくて深く付き合ってなかったら、相手も流すよ」
「え、どういう意味?」