先生の正体1
東条さんから呼び出されて、学校帰りに待ち合わせた。
「今日はなに?」と聞いた。
「奢ってやるから、機嫌を直せ」
「ここで?」と見回した。デザートショップだったからだ。それほど高いものは売ってなかった。
「いいだろ。お子ちゃま向きだ」と言われてにらんだ。
「なんだか、色々ある。自信無くなっちゃった」
「なんで?」と聞かれて、秋さんの紹介で見学させてもらっているけれど、客によって占い方について迷いがあると教えたら、
「その店のスタイルがあるから、参考程度でいいんだぞ」と言われて、
「スタイル?」と聞き返した。
「人によって、違うからな。じっくり相談に乗ったりする人もいれば、こっちから、色々と聞き出していく人もいるし、占い方法も人によって違うだろうし」
「解釈が人によって違うものだね。同じカードでも違ってくるから、その辺でどうしたらいいかを迷うし」
「それはあるかもな。相手によって、その解釈は変わってくるだろうし」
「なんだか、疲れた」
「お前、エッグシェルに看板を描いたのか?」と聞かれて、事情を説明した。看板を描いたのは別の女の子で、占いと引き換えに描いてもらったと。
「なるほどな。かわいいらしいな。俺のところでも描いてもらおうかな。キス一つと交換」
「安っ!」と思わず言ったら、
「高いだろ。俺とキスできるんだから」
「すごい自信」
「そうか?」と笑っていた。
「なんだか、色々あるんだね。人って」
「どうして?」
「見掛けじゃ分からないって意味がなんとなく分かったから」と言ったら、東条さんがじっと見ていて、
「それより、経験を積めよ」と言われてしまい、
「練習はしてるけど、母はチラッとしか見てくれてない。友達相手に練習はしてるけど、何しろ周りがうるさくてね」
「色々見学しただろ。しっかりしろよ」
「現実が見えたら、自分の未熟さを痛感しただけ」
「最初の威勢のよさはどこに言ったんだよ。俺を突き飛ばした勢いを見せろよ」
「見せられない。それより、今日の用件は?」と聞いた。この間、私が言った案が通ったそうで、
「色々と考えておくから、お前もそのうち参加しろよ。その前に練習しておけよ。小金も貯められるからいいだろ」
「旅行代が貯められるけどね」
「旅行?」と聞かれて、
「まあ、色々と」とごまかした