表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fortune-teller  作者: marimo
9.必要な場所
38/266

必要な場所5

 東条さんに連れられて一緒に歩いていた。街角で占い師が誰かを占っていた。相手は学生だろうなと思える年で、私より若いかもしれないなと思った。少しだけ離れたところで東条さんが止まった。それで、「会話してるような振りしろよ」と小声で言いながら、そばでその人たちの声を聞いていた。占い師が女の子を何度も叱っていて、「馬鹿だねえ。ちゃんと言わないと」「駄目だよ、それじゃあ」と何度も怒られているのに、女の子はうなずいていて、最後は泣き出していた。

「泣くんじゃないよ」と慰めながら、色々と説教をしたりアドバイスをしていた。


「あれって」さっきの二人からかなり離れてから東条さんに聞いた。

「占い師でも色々いるんだよ。人生相談や子供の相談相手までね。ああいう子があそこに行くのには訳があるんだよ」

「どんな訳?」

「いい親、いい家庭ばかりじゃないからな。中には親が暴力を振るう、無関心、そういう親もいるからな。成績だけで判断したり、兄弟と比べたり、親の基準に合わないと見捨てられたり。家出していたりする子はプロキオンにはあまり来ないしね」

「そう。でも、何で、あの子は叱られても怒らないんだろうね」

「逆。叱ってもらいたいんだよ。親が無関心な家かもしれない。他の誰かにかまってもらえるのがうれしいってこともあるんだろ」

「そうなの?」

「怒ってもらったり、話を聞いてもらったり、それだけでうれしいんだろうな。受け止めてもらえたと思えるんだろうし」

「え、どういう意味なの?」

「家に帰っても、親と会話がないところもいくらでもあるんだよ。携帯で連絡さえ取れたら、それでいいと言って、家に帰らない子もいるからな。お前の学校にはいないのか?」

「夜遊びがすごいらしいと言う噂は聞いてるけど、話したこともない。学校でもほとんど話さない子がいるから」

「じゃあ、その子もそういう事情があるのかもしれないな」

「そう」

「受け止めてくれる場所があればいいけど、そういう人も場所もない人だと、ああやって話を聞いてもらうんだよ」

「先生に相談するとか」

「それは無理だろうな。先生にお前、家庭の事情を話せるか?」と聞かれて首を振った。

「そうだろ。自分の名前も知らない人だから言えるってこともあるんだと思う」

「そう言われるとそうだね」

「カウンセリングとか相談所とか日本だと通うのに抵抗があるけど、占い師だと芸能人や有名人も通っていたりするだろ。それで、抵抗が少ないんだろうな」

「相談する場所として必要ってことなの?」

「自分ひとりで解決できなくても、話だけでも聞いてもらいたいものだと思うけど」

「あなたはどうして分かるの?」と聞いたら黙った。

「女性と多く付き合ったから分かるの?」

「お前より年上だからな」

「そう?」

「お前も経験を積め。視野を広げるところからやらないとな」

「分かってるよ。さすがに気軽に占えなくなったから。今は断ってる」

「占えばいいだろ。練習を積んでもらう必要があるからな」

「え、どうして?」

「人前で占ってもらうことになるから」と東条さんがにやっと笑っていた。嫌な予感がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ