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Fortune-teller  作者: marimo
1.サバト
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サバト2

 相手はそれほどはきはきしゃべるわけでもなく、なんだか自信がなさそうな人だった。悩み事は将来のこと。その方面に進んでいいかどうか。親や周りの反応が怖くて言い出せないと言っていたので、

「親に相談しないと何も始まらないよ」と言いながらタロットカードを出して、相手にシャッフルしてもらった。その間に、色々と聞いてみた。相手が望んでいる職業を聞いたら、意外にも、

「テレビに出たいです」と言ったので、さすがに驚いた。どう見ても、テレビ向きの性格をしていない。

「え、でも」と考えてから、さすがに思ったことを口にできなかったので、

「どういう形で?」と聞いた。

「えっと、何でも、でも、できれば歌手か、女優になりたくて」

「歌手か女優?」はっきりしないなあ。どちらか決めてないのか。

「どちらが希望?」

「えっと、有名になれるなら、それで」うーん、困った。時々、母や秋さんの相談相手もこういうことを言う。願い事が漠然としすぎている。夢を叶えるにしろ、本人も良くわかっていない状態だった。私もそういう職業にあこがれた時期はあった。芸能人の話やテレビ業界の話をするのが大好きな友達が何人かいたので、この人も同じかなと思った。年齢は私とそれほど離れていなさそうだ。


「今、いくつ?」

「え?」相手が緊張していて聞こえてないのかな?と思い、

「年齢は?」

「えっと、16です」

「オーディションとかは受けてるの?」友達が何人か遊び感覚でオーディションに応募していた。その話を思い出して、ふと聞いてみた。

「えっと、まだ」うーん、あまり良く知らない業界の話なので、困ってしまった。恋愛相談のシュミレーションはいくつか、秋さんに教えてもらったけど、まさか、こういうことを聞かれるとは。一番苦手な相談事だなあ。


「とにかく、占ってみましょうか」最初誰もそばにいなかったのに、いつの間にか誰か後ろにいたけれど、気にしないことにした。占うときは集中力を使うからだ。

「今の気持ち。漠然としてる。まだまだ、迷いが多い。周りの人の反応。話は聞いてくれるけど、応援してくれる人はまだいない状態。親のほうは、あ、駄目だ」と言ってしまってから、ああ、こういう言葉遣いはしてはいけないんだったと思い出した。友達にせがまれて、何度も占っている。普段の言葉遣いはお客様用ではないので、もっと丁寧にするようには注意を受けたけれど、中々直らなかった。


「親はね。あなたの希望をことごとく反対するよ」と言った途端、相手が元気がなくなった。正直に言わないほうが良かったかも。

「ああ、でも、地道に頑張れば、それなりに道は開けるかもしれない。あ、でも」と言ってから、迷ってしまった。いくつかの注意点を挙げて、出たカードの言葉を伝えた後、

「この願いがかなう可能性は20パーセント未満」と言った途端、周りが少しざわめいたので、そちらを見たら、審査をしている人が何かを書き入れているところで、そのすぐ横で、

「下手な人ね。あなたと大違いね」と言った若い女性がいて、隣にいた背の高い男性を見上げていた。見たところ恋人同士なんだろうなと思ったけれど、相手が私の顔を見た後、少し笑った。小ばかにしている雰囲気だったので、気に入らなかったけれど、

「あなたの願いを叶えるには、かなりの障害がある。どちらに進むかはあなたの気持ちしだいだよ」と付け足したら、

「そうですか」とうなだれていた。失敗したかもしれないなと後悔した。


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