毛皮を着た理由4
「その人とベンジャミン・フランクリンは会話に出る?」
「いや」
「そう」会話の内容は同じ大学生でも違いがありそうだな。
「なんだよ?」
「なんでもない」
「気になるけれど」
「雪人さんと話していたら、あなたと会話の内容が違いすぎて」
「ついていけないんだろ」
「いや、そういうこともない……けれど」
「ごまかすなよ。それは想像はつくな」
「え、なんで?」
「理系男子は話をややこしく説明する。簡略することができないんだ。相手のレベルにあわせて話すのは苦手なんだろうな。だから、お前と話していても興味を持つところが違うってこと」
「え、なんで?」
「高校の時の科学部のやつがそうだった。『論理的に考えると、要するに』が口癖だった。何を言ってるのか回りくどくて、結局、話を最後まで聞いてもらえなかった」
「えっと、雪人さんはそうでもなかった。聞けば教えてくれる。でも」
「でも、なんだよ」
「えっと、知らないと言いづらいの」
「見栄か?」
「それはあるかもしれない」
「見栄は張らずにかわいく、『教えてください』と言えば教えてくれる。そう言う人に見えるけれど」
「そうだね、それは分かってる。でも、その差を埋めたいと言うか」
「無理だ。あの人は反対にテレビや新聞の話題には疎い。専門分野や知っていることに関しては教えられる。そこを埋めるのは難しいかもよ」
「え?」
「ほらな。真珠は分かっているようで見えてない。身近な男たちばかりと話していたら、そうなるから、もっと経験を積め」
「いや、積まなくてもいいでしょう」
「興味がないとか言うなよ。お前は占い師になるつもりなら、というか趣味で占いをやっていくにしても、どちらにしても、人に興味がなければ、占いは出来なくなる。人を嫌いにだけはなってはいけないからな」
「え? そうなの?」
「お客は選べない」
「橋添先生は選んでいた」
「あの人は半分趣味みたいなものだから、評判が悪くなっても気にしないんだろう。おかしな客は別として、普通の客に見えても癖のある人はいくらでもいる。怒らせるわけにはいかないので、そこは分かってないと。だから、雪人さんに合わせなくてもいいから、相手がどういう物に興味があるか、どういうことを考えているかぐらいは把握しておけよ。そういう経験を積めと言っている」
「そう、そういうことね」それはあるかもなあ。