リサーチ6
「お前もそれぐらい努力しろよ。まだまだなんだよな。しばらく掛かりそうだ」
「どういう意味?」
「俺と付き合ったら教えてやるよ」
「断る」
「即答だな。少しは考えろよ」
「好みじゃない」
「俺は好みだけどな」
「この間から何度も見かけた女性にも同じことを言ってそう」
「それなりには並べるよ。相手が喜びそうなことをね。ただし、本気になられたら困るから、抑えるけど」
「ホストになったほうがいいんじゃないの?」
「同じだろ。話を聞いてもらいたい、優しくしてもらいたいってところはね」
「え?」
「相談に乗るんだから、そういう部分で気を使えよ。お前の場合はまだまだだよな」
「うるさいの」
「あの人は教えないのか?」
「あの人って誰よ」
「お前の先生」
「え?」
「エッグシェルで働いてるんだろ」
「何で知ってるの?」
「プロキオンの占い師が教えてくれた。女子高生が働いてるって。近所で評判になってたみたいでね。それで、分かったんだよ。お前だろうなって。この間から何度も見かけたのはそれだったんだと気づいたからな」
「あそこが評判になるものなの? お客さんが少ないよ」
「だって、あそこはある意味、みんなが知ってるぞ」
「どういう意味?」
「だって……、」と言いかけて、「まあ、いいや。それより、どうだ? 割と評判はいいらしいな。占いとしてはどうか知らないけど」
「どういう意味?」
「ああいう人も占い師として必要だってことだ」
「意外。あなたは認めないんじゃないの? ああいう人は。お客さんも少ないから、自分のところは多いから、相手にもしてないように見えた。街角の占い師なんて認めなさそうに見える」
「馬鹿。意外と、ああいうところはリピーターが多いんだよ。それで何年も続けていたりするからな。あの人も同じだ。お客さんは少なくても大丈夫だろうし」
「そう? 家ぐらい綺麗にした方がお客さんが増えるだろうし」
「商売としてやってるんじゃないかもな」
「え、どういう意味なの?」
「先生に聞けよ。さすがにあの前には車が止められなくて、通りで待ってたけど、逃げ出すことはないだろうに」
「待ち伏せしてたの?」
「あの後、どうなったかを確かめたくてね」と笑ったので、
「最悪よ。あなたのせいでね。顔を合わせられない」
「俺にしておけばいいさ。今度、大学にでも遊びに来いよ。学祭の打ち合わせもあるし」
「学祭?」
「俺も実行委員会主催のイベントに参加するから」
「ふーん、いいよ、行かない」
「迎えに行ってやるから」
「来なくてもいい。塩を3度もまかれたくない」
「なんだよ、それ?」
「あなたが帰った後にまいてたからね。よほど嫌われてるよ、あなたたち親子」
「親父が泣かした女の一人かもな。親父も手が早いから」
「似たもの親子だ」
「携帯番号、後で教えろよ」
「絶対に、嫌」とにらんだ。