迷惑書留2
「あの……?」
「彼に言われたんだ。真珠ちゃんの気持ちに答えるべきだと。僕は彼のようにはデートは出来ないと思う。真珠ちゃんが困った時にそばにいてやれないかもしれない」
「え、あ、あの」
「真澄ちゃんに泣かれてしまってね」と突然言われて、つながりが良く分からなくて、
「えっと、あの」なんて言ったらいいんだろう?
「正月に帰らなかったから、真澄ちゃんに電話をもらった。こちらに来てもいいかとまで言われて、断った。結婚の話を断ったのも事情を説明した。結婚する気はないと」
「はあ、確かに早いとは思いますけれど。雪人さんは勉強がありますものね」
「それだけじゃなくてね。彼女と結婚すると言うことが想像できなかったから。『何年経っても、きっと、その気持ちは変わらない』と言ってしまった。妹にしか思えないと」うーん。
「それで泣かれてしまって。好きな人がいるかと聞かれて、真珠ちゃんを思い出したんだ」意外なことを言われて、
「え、あの?」
「さっきも言ったように、僕は真珠ちゃんを楽しませてあげることは難しいと思うんだ。普通の学生がしているようなデートは出来ないと思う。距離も離れるし、手紙のやり取りぐらいしかできないかもしれない。それでも、いいというのなら」と言われて、うつむいた。とてもうれしいはずなのに、なんだろう……?
しばらく黙っていたら、
「真珠ちゃん?」と呼ばれた。
「私、……雪人さんに憧れていました。でも、雪人さんとデートするとか、そう言うことまで考えてなかった。でも、なんて言っていいのか、えっと」雪人さんが笑った。私の好きな笑顔だった。そうだ、この笑顔が大好きだった。これを見ていることが好きだった。あのときから……。
「だから、えっと、手紙はうれしいです」
「じゃあ、そうしよう」と言ってくれた。
「雪人さんに合わせられるような、そう言う話題ができるようになりたい。だって、このままだと会話について行けないんです」
「え、そう?」
「雪人さんが相手だと、えっと、ほら、学校の勉強もちゃんとしてないとついて行けないと言うか、科学者の名前を出されても、分からないと困るし」雷の話になり、ベンジャミン・フランクリンの名前が会話に出てきて、私はその人は誰?……と思ってしまったけれど、つい、見栄を張り、聞き返せなかった。
「いいよ、それは気にしなくても。そういうことは関係ないし。家庭教師じゃないからね」と優しく笑ってくれて、やはり素敵な笑顔だなと見ていた。